あの人に聞きたい！彦摩呂さん（タレント・グルメリポーター）

相手の心を開くには、まず自分が相手に心を開く 僕はグルメリポーターとしていろんなお店に伺いますが、初対面のご主人や女将さんは、照明やカメラに囲まれとても緊張されています。そういうときは警戒心を解いて、相手が心を開いてくれるよう心がけます。 それには、まず自分が相手に心を開くこと。「私は危険じゃありませんよ。あなたのことが大好きですよ」という気持ちで接すると、おのずとその気持ちが相手に伝わって話しやすい空気がつくられます。仕事だけでなくプライベートでも同じですよね。それが“聞き芸”の基本なんです。 言葉は耳から入りますが、その人がもっている空気感や思いは心を通じて伝わります。言葉に込められた心は、相手の心にちゃんと届く。これまで何万人もの人たちに出会ってきて、それを実感しています。だから、人と接するときの自分の気持ちを大事にするようにしています。 ただし、相手の心にあまりズカズカ入り込んでも嫌がられます。相手が「これは嫌だ」と思っていることに気づいたらそこには踏み込まない、安心して対話が進む“よい距離感”をつかむことが大切ですね。 自分ファーストではなく、相手ファースト 芸能界はある意味、自分を前面に押し出そうとする、“自分ファース卜”の世界。でも僕がグルメリポートをするとき、いちばん喜んでもらいたいのは、そのお店の人で、次はお客さん。つまり“相手ファースト”なんです。 だから「テレビなんて絶対に嫌だ！」と言っていた頑固おやじも最後には笑かして帰ります（笑）。頑固な人というのは、怖いから虚勢を張っていたりする。その鎧を解いてあげると、満面の笑みに変わります。 人間ってみんなその人なりの命のチャンネルをもっている。それがわかると、すごくおもしろいんです。 “相手ファースト”を心がけていると、相手の命のチャンネルを見つけやすくもなります。たとえばお店に飾ってある魚拓や写真を一瞬にしてパーッと眺め、その人の趣味や家族構成をつかんで、「ご主人、釣りやりますの？」「お子さん5人もいるん？」など会話の糸口にします。 話をするときの材料をたくさんもっていると、相手がだんだんとしゃべりやすくなってくる。そしてなるべく短時間でその人のいちばんよいところを見つけ、そこをフィーチャーします。すると満面の笑みになってくれる。そういう意味では、人もグルメも共通するものがあると思います。 人との出会いに一歩踏み出す人に！ コロナ禍で人と会う機会が減り、「人と会うのがおっくうになった」という声をよく聞きます。今はSNS などで有り余るほどの情報が得られ、実際に会わなくても相手のことをわかった気になってしまう。でも心は会ってみないとわからないもの。いろいろな情報はさておき、実際に会ったときのフィーリングを超えるものはありません。多くの人との出会いの中で実感してきたことです。 だから、人と接する喜びを感じ、自分から“人との出会い”に一歩踏み出す人であってほしいんです。絵画展に行く、おいしいケーキ屋さんに行くなど、相手との楽しい共通点をたくさんつくって同じ方向を見ると、踏み出しやすいんじゃないかな。 自分に自信をもつと出会いも豊かに 自分に自信がないと世界が狭まっていくというか、だれかに入ってきてほしいんだけど怖くて距離をとってしまうことってありますよね。自信がないのは何が原因かというと、未経験、つまり経験してないから怖い。それを克服するには経験する、なんでもチャレンジすることです。たとえ失敗してもいいじゃないですか。失敗は“金”なので。苦手を克服するというのは、成功か失敗かという結果ではなく、経験それ自体にあるんです。 たとえば、僕はゴーカートでもボコボコぶつけてしまうくらいだからセンスがないと、車の運転を敬遠してました。ドラマで必要になってあわてて免許を取ったんですが、ふたを開けてみるとメチャメチャ運転うまいんですよ。そういうこともある。 自信がつくと、自分の世界が広がり、出会いも豊かになります。皆さんもさまざまな挑戦をしながら、素敵な人間関係を築いてみませんか。 ＊＊＊＊＊＊＊＊ タレント・グルメリポーター彦摩呂（ひこまろ）1966年、大阪府生まれ。アイドルグループ「幕末塾」として活躍後、映画、バラエティ、情報番組のリポーターなど幅広い分野で活躍。特に、コミカルなキャラクターを生かしたグルメリポーターとして定評があり、「海の宝石箱や～」など独特の比喩表現と親しみやすい笑顔で人気を博す。

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