【潮５月号の読みどころ】民衆こそ王者――池田大作とその時代

中途半端では学会の本質はわからぬ 久松美年子(みねこ)は熊本の上益城郡で生まれた。太平洋戦争が終わった翌年である。小さいころ、チアノーゼを何度も起こした。心臓病だった。医師は「この子は２０歳まで生きるのが限度だから、好きなことをさせてあげてください」と言った。「長く生きられない不安」を抱え、少女時代を過ごした。（中略） 美年子の人生の道が定まったのは１９歳の夏だった。あとひと月で「それ以上は生きられない」と思っていた２０歳を迎えるその時、女子部の夏季講習会で池田の話を聞いた。 一時間にわたる指導は、「新池御書」のよく知られた一節の講義から始まり、指導者論、若い女性の生き方、実践論まで、多岐にわたった。〈（信心を始めたが）中ほどは信心もよわく〉――５年たち、７年たち、１０年、１５年たつと、だんだん信心が弱くなって求道心が弱まる。〈自慢して悪見をなす〉――自慢とは増上慢のことです。仏法も、学会もわかったつもりで、すべてのことを自分勝手に判断し、同志の姿を批判したり、ついには信心を破壊し、和合僧を破壊していく。 〈始めより終わりまで、いよいよ信心をいたすべし〉――３年や５年で、それも「不惜身命」の信心ではなく、半分疑いながら、半分批判しながら、やっとついてきたような信心で、どうして日蓮仏法の奥底がわかるか。創価学会の本質がわかるか。（中略）美年子は「私は、この時に合わせて生まれたのだ」という感動に包まれ、眠れないほどの衝撃を受けたという。（P.130～133） たった一人になった時に本当の偉大な人がわかる 未来部のリーダーたちは数年にわたり、各地の未来会の結成に同席した。池田の指導に接し、その優しさと同時に、厳しさも目の当たりにしてきた。中部方面の中心地である愛知でも、九州方面の中心地である福岡でも、池田は一つの信条を繰り返した。それは、「一人立てる時に強きものは 真正の勇者なり」――２０代の日記にも写し、小説『人間革命』でも引用した、ドイツの詩人シラーの言葉。この一言に象徴される信条だった。（中略）中部未来会の結成式――「ある時は共産主義の時代になるかもしれない。ある時は創価学会が大弾圧を受ける時があるかも知れない。ある時はみんな辞めて、臆病になって、他の宗教や思想に行ったり、むしろ学会を批判する人がたくさん出るかもしれない。そういう時代も私は考えています。どんな大弾圧を受けても信仰し抜くのが創価学会なのです」（中略）「もう一度言っておきます。みんながいなくなっても、どんないやな現象ばかり続いても、決して御本尊を疑わない。一生涯、私は疑わない。こういう人になれるかどうかが、未来会ということなのです」（中略）「私は知っています。たった一人になった時に本当の偉大な人がわかる。『一人立てる時に強きものは真の勇者なり』です。その時に世間に迎合してしまって、臆病になり、卑怯な人間になるか、ならないか。そこだけが私の根本のポイントです。あとはもう何も言わない。あとはそれを心の奥底に、バネに巻いて、３０年先、５０年先に思い起こしてくれる人は、たとえ（社会的に）偉くなれなくても、その人は御本尊様から見れば永遠に、最高に偉い人です」（P.136～137）

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