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「侍ジャパン」を社会学的に観戦する(筒井清輝氏)

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WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本代表が3大会ぶりの栄冠をつかんだ。その躍進の姿に、日本社会が学ぶべきヒントが詰まっていた。
スタンフォード大学社会学部教授・筒井清輝氏が社会学的な視点から「侍ジャパン」を見る。
(『潮』2023年6月号より転載、全2回の1回目)

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野球の常識を覆した
二刀流の大谷選手

 今回、侍ジャパンが大活躍したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の試合を現地のマイアミで取材しました。サンフランシスコ・ベイエリアの情報誌『ベイスポ』さんのご好意で実現したことですが、日本が準決勝に出場できない可能性もあり、マイアミまで行くとは決めたものの少し心配でした。ところが日本チームは想像以上の活躍をし、歴史に残る2試合になり、現地まで観戦に行った甲斐がありました。

 決勝戦も素晴らしかったのですが、個人的にはメキシコ戦のほうが緊張感を持って見守りました。7回ツーアウトまで点が入らず、このままで勝てるだろうかと本当に冷や冷やしました。それだけに、吉田正尚選手が同点ホームランを打ったときは、球場全体がすごく盛り上がりました。村上宗隆選手のサヨナラ打も、彼のそれまでの苦悩を吹き飛ばす当たりでした。

 その前日のアメリカ対キューバの準決勝から見ていたのですが、この試合中、政治的な意図で乱入した人がいたり、観客席でも政治的なメッセージを掲げる人がいたりして、マイアミという場所の持つキューバとの複雑な政治的関係を、改めて痛感しました。

 一方、日本とメキシコの国同士の関係は良好です。そのため日本対メキシコ戦は、和気あいあいとした雰囲気でした。負けた後もメキシコの人たちは「必ずアメリカを倒してくれよ」と日本チームを応援してくれていました。