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《世界の女性大使たち》リーナ・アンナーブ/ヨルダン駐日大使

中東のヨルダンは、多様性を尊重し、平和を分かち合う大きな心をもつ国です。そんなヨルダンの駐日大使を務めるリーナ・アンナーブさんに、同国の魅力や、難民問題の解決への想い、そして長く難民支援を続ける創価学会についてお話を伺いました。

※月刊『パンプキン』2023年7月号に掲載されたインタビューを一部、抜粋して公開します。
(取材・文=鳥飼新市/撮影=雨宮 薫)

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豊かな景観の国土を貫く
ヨルダン・トレイル

体験型の旅行スタイル「アドベンチャー・ツーリズム」が世界的に関心を集めるなか、今話題のトレッキングコースがある。「ヨルダン・トレイル」だ。

ヨルダンを南北に縦断する全長675kmに及ぶコースである。

「ヨルダンの変化に富んだ地形は、多様な地理的地域と生態系を有するエコゾーンに広がっています。ヨルダン・トレイルは、気候や動植物、そして地理的に異なる地域など、素晴らしい自然の多様性をごくわずかな土地で体験できる、絶好の機会なのです。この多様性は、見るもの、聞くもの、味わうもの、嗅ぐものを通して、五感を目覚めさせます。まさに、五感を刺激する没入型の体験です」

リーナ・アンナーブ大使は目を輝かせて話す。ヨルダン・トレイルは情熱的なアウトドア愛好家たちによって、50年以上前から発展を遂げてきた。しかしヨルダン・トレイルが盛んに宣伝され、制度化されたのは、大使が観光・考古大臣を務めていたときだった。

中東の西アジア地域に位置するヨルダンは、北海道とほぼ同じ広さの国土に約1115万人が住む国である。その歴史は古く、すでに50万年前に人びとが暮らしていた跡が残っている。

国情は安定していて、有名な死海をはじめ、紀元前のペトラ遺跡やローマ帝国時代の遺構など、観光資源も多い。国土の約8割は砂漠だが、森林生態系、草原、都市生態系、景観、山岳生態系など、さまざまな生態系が豊かに存在している。

ヨルダン・トレイルは、約70の村々を巡り、地元民たちが運営するロッジでロウソクの明かりだけで夜を過ごしたり、ラクダに乗って砂丘の旅を楽しめるサービスなどがある。

「ヨルダン・トレイルは単に観光需要に応えるだけのプロジェクトではなく、若者や女性、さらには地域社会が経済的に自立するチャンスになる社会経済的なプロジェクトだととらえて取り組みました。
中東といえば“安全なのか?”という心配をされる人が多いと思います。ヨルダン・トレイルをアピールすることは、ヨルダンの安全性をアピールすることになると考えています。日本が“おもてなし”の国であるように、ヨルダンもホスピタリティにあふれる国なんです」

2019年には駐日大使に就任した。
「とてもワクワクしました。両国の歴史的な関係を踏まえ、長年にわたる友好関係をさらに発展させるために貢献することが必要だと考えました。今回の就任は、祖国ヨルダンに貢献するための特権であり、素晴らしい機会です」

明年は国交樹立から70年、互いに大使館を設置して50年にあたるという。
(中略)

(ヨルダンの世界遺産・ペトラ遺跡 ※イメージ)


常に平和を第一義に掲げる
池田先生に強く共感して

創価学会は長く難民支援を続けている。2021年からはオランダのNGO「国境なき音楽家」と共に、ヨルダンで「音楽が私たちをつなぐ」というプロジェクトを進めている。このプロジェクトには、数多くの難民の子どもたちも参加してきた。

「これは極めて重要なプロジェクトだと考えています。音楽は“魂にとっての薬”だと、私は信じているのです。暗いトンネルの先にある光、希望を教えてくれる。それは、すごいエンパワーメント(励まし)になったにちがいありません」

大使は創価大学で講演を行ったり、民音音楽博物館を訪れたり、SGIの関連団体とも交流を重ねている。そのなかで、いつも池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長のリーダーシップに強い感銘を受けてきたと語る。

「池田先生はさまざまな団体、組織を創立されました。どこを訪問しても、そこで働く人びとがプロとして高いスキルをもっておられることに驚きます。これこそ間違いなく池田先生の見事なリーダーシップの証しだと思うのです」

そして、次のように続ける。

「なにより私が池田先生に共鳴するのは、教育・文化・平和の運動を推し進めるなかで、常に平和を第一義として掲げておられることです。戦争のない状態が平和なのではなく、戦争こそが異常な状態なのだということを強調されていることに強く共感するのです。さらに素晴らしいと思うのは、宗教間対話を推進され、異なる信仰も尊敬し、調和を進めようとされていることです」

日本の魅力を聞くと、「いいところしかないです」と、表情を和らげた。

「日本人の謙虚さ、堅実さ、完璧を求める姿勢、責任感、尊敬の念など、あらゆる面で日本人が体現していることを目の当たりにすると、身が引き締まる思いがしますし、感動します。日本に住んで4年経ってもなお、この素晴らしい国をきちんと理解するには、まだまだ道のりは長いと感じます。日本に魅了され、興味をもったことが日本語習得の原動力です。流ちょうというにはほど遠い私の拙い日本語でも、さまざまなバックグラウンドをもつ多くの日本人の友と深いつながりを築くのに役立っていることをうれしく思います」

そう言って、何度も深くうなずくのだ。



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ヨルダン駐日大使
リーナ・アンナーブ(Lina Annab)
公職に就く以前は、北米、欧州、中東、北アフリカなどにおいて、シティバンク、ジョンソン・エンド・ジョンソン、国際通貨基金などでさまざまな役職を歴任し、ホテルも所有する大手不動産企業の最高経営責任者を務めた。2016年6月から18年11月にかけてヨルダン観光・考古大臣。19年6月、駐日ヨルダン大使に就任。