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高齢者こそ、「肉」や「ラーメン」を楽しむべし!(和田秀樹氏)

歳を重ねれば重ねるほど、栄養不足の害が大きくなってくる!?
長らく老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても有名な精神科医・和田秀樹さんによる、シニアのための「生き生き」講座を公開。
(『潮』2023年7月号より転載)
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日本を救うのは元気な高齢者

 日本政府はいま、少子化対策に力を入れている。もちろんそれも必要な政策かもしれないが、いま生まれた子供が労働力になり、現役の消費者になるのには20年以上の歳月を要する。20年先の未来の社会が実際にどうなっているかは誰にも予測できない。

 現にAI(人工知能)の発達は、当初の予想より大幅に早く進んでいる。20年後の2040年代には車はすべて自動運転になり、ロボットが宅配事業を担っている可能性も十分にある。ロボットなら人間が一人では運べない重量の荷物を軽々と持ち運べるだろう。知的労働でも、医師が行う画像診断などはAIの仕事になっている可能性がある。

 20年後にいまと同じ仕事が残っているかは分からない。少子化対策がうまくいったとしても、生まれてくる子供たちに働き口を保障することは誰にもできない。むしろベーシックインカム(最低所得保障)で彼らを支えなければいけない可能性だってある。

 そう考えると、いまの日本を救うための最大の課題は、既に存在している高齢者たちに、いかに元気になってもらえるかではないか。元気な高齢者が増えれば、目の前の労働力だってカバーできるし、消費も増えるし、年金や社会保障にもよい影響がある。

 日本社会には、潜在力のある高齢者が約3620万人も存在しているのだ(65歳以上人口、総務省調べ)。その8割以上が介護も支援も要らない自立高齢者である。

 新型コロナ対策でよくなかったのは、高齢者を自宅に閉じ込め過ぎてしまったことだろう。また、これまでも批判を覚悟で主張してきたが、高齢者の免許返納にもマイナスの側面がある。免許を返納すると6年後の要介護率が約2.2倍になるとの調査結果がある。

 他方、75歳以上の高齢者の運転による死亡事故は、2022年には379件発生していた。痛ましい交通事故を防ぐ取り組みは必要だが、一方で将来の要介護者を何百万人も生み出す可能性もある。高齢者を自宅に閉じ込め過ぎないという視点はもっておくべきだ。

〝引き算〟ではなく〝足し算〟の健康法

 近頃の高齢者の健康状態を考慮して、ぜひとも流行らせたいのは、「足し算健康法」「足し算医療」という考え方である。