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SNSに関わる、リテラシーを磨こう

インターネットについて知識をもったうえで、正しく活用する力――すなわち、ネットリテラシーを磨くことが、SNSを安心して楽しむための助けとなります。
今回は、スマホ&PCの使い方を学べる大人向けのオンラインスクール「パソコムプラザ」代表をつとめる増田由紀さんにお話しを伺いました。

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SNSの特性・アルゴリズムで
“自分の興味がある”ことが集まりやすい

 同じSNSを利用していても、使う人によって、画面に表示される情報が違うことをご存じでしょうか。

 SNSでは、自分の好きなものを検索したり、関心がある情報を閲覧したりすると、徐々に自分の興味がある情報が上位に表示されやすくなる特性があります。それは心地よい空間を生み出す一方で、好みに合わない情報がフィルターでろ過され、興味がある情報の泡に包まれる「フィルターバブル」現象を招くといわれます。

 また、SNSで価値観の似た者同士での交流が繰り返されると、特定の意見が増幅される「エコーチェンバー」現象が起こり、偏った考えに陥る危険があるともいわれます。

 しかし、そうした特性を知ったうえで、バランスよく、さまざまな情報や意見にも触れる意識をもてばよいだけで、SNS自体を恐れる必要はありません。時間や空間の制限を飛び越えて、現実の社会で巡り会えない人や情報に出合えるSNSを存分に楽しんでみましょう。

人間関係と一緒で、身の置きどころは、
自分で決められる

 バランスを欠いたSNSの用い方は避けるべきですが、それは現実社会での人づきあいと一緒。たとえばAグループの人とばかりつきあい、自分と意見の合わないBグループの人を批判したり、敵対したりすれば、トラブルの元となるのは当然です。

 SNSを“ひとつの社会”と思えば、相手のことを考えながらやりとりするようになります。相手に不快感を与えないようにマナーも意識するようになるはずです。

 SNSでの出会いをきっかけにした犯罪のニュースを見ると、SNSだけが危険なように思いがちですが、昼間に人通りの多い道を歩けば安全で、夜中に治安の悪い裏道を歩けば危ないことに巻き込まれる可能性が高いように、SNSでも危険な情報にあえて立ち寄らなければよいだけなのです。

 表示された情報に不穏な空気を感じたときはどうすればいいでしょうか?  インスタグラムでは、自分が好んで見ているものと関連するものが優先的に表示される仕組みになっています。食器好きな方が器の写真を何枚も見ていると、美しい器の写真が次々と表示されるようになります。旅行の絶景ポイントを多く見ていれば、美しい景色が数多く表示されます。情報を選べば、危険な裏道に辿り着くことはないでしょう。


SNS
は包丁の扱いと同じ。
使う人の振る舞いに左右される

 SNSというのは、包丁とよく似ています。読者の皆さんは、普段、包丁を何のために使いますか。おいしい料理を作るため、人を喜ばせるためではないでしょうか。けれども、その刃先を人に向けた時点で犯罪になります。では、刃先を手で握ったらどうなるでしょうか? 自分が傷つきます。つまり、SNS自体が危ないのではなく、包丁の扱いと同じで、使う人の振る舞い次第だということです。

 LINEなどで知らない相手からDM(ダイレクトメール)が届くと、自分だけがだれかに狙われているのではと慌てる方がいます。しかし、DMを開いただけで被害に遭うことはまずありません。

 DMに表示されたURLなどをタップして偽サイトにアクセスし、自ら個人情報などを入力することが問題で、それが詐欺被害につながるのです。自宅のポストにDMが届いたときと同じように、必要なければ捨てればいいだけです。こうしたSNSの知識は知っておくだけで安心感をもって利用できるはずです。


記事をそのまま信じるのではなく、
信頼できるメディアで確認を

 SNSにはフェイスブックやLINEのように実名や本人とわかる形で情報を発信するものと、Xやインスタグラムのようにニックネームでも投稿できるものがあります。匿名性が高い環境では、無責任な情報も発信しやすい風潮があります。

 そうした情報の中には、「○○大学の△△教授の話によると」などと、出所が明らかな情報であるような書き方をしている場合もあります。正しい情報のように見えても、まずは、報道機関などの信頼できるメディアで確認する、その大学のホームページや教授本人のXを見るなどして、情報の真偽を判断することが大切です。

 これはSNSに限ったことではありません。1973年には愛知県で信用金庫が倒産するという誤った噂が広まり、取り付け騒ぎが発生した事件がありました。噂をそのまま信じて、預金を下ろしに走るか、きちんと真偽を確認するか――パニックに陥らないための対策はSNSのデマも、口づての噂とさほど変わりありません。


もし友人が間違った情報を
発信してきたら?

 2016年の熊本地震の際には、路上に立つライオンのデマ画像と共に“動物園からライオンが逃げた”との投稿がツイッター(当時)上で拡散し、問題になりました。また、新型コロナウイルス感染症の流行初期には“お湯が予防になる”といった根拠のない感染症予防法が出回ったことも。虚偽の情報は、特に災害時や緊急時などに出回りやすい傾向があります。

 もし友人から間違った情報が送られてきたらどうしますか? 友人がフィルターバブルのような状態に陥り、誤った情報を信じて疑わない様子なら、ただ否定してもあまり効果はありません。そのようなときは、「あなたの言ってたことってこのことかしら? こんな情報もありましたよ」とその問題についての報道記事などを紹介し、違う視点にも目を向ける手助けをするとよいかもしれません。

 また普段から信頼できる人間関係をつくることで、お互いにより意見を受け入れやすくなります。学んだSNSの知識を家族や友人と常に共有しておけば、いざという時にも安心です。


知っておきたい、
トラブルにならない使い方

 Facebookに、孫の写真を投稿して、娘から叱られたという方がいたそう。子どもの写真は誘拐などの犯罪に利用される可能性もあるからです。自分以外の人が写った写真は、身内であっても、同意を得てから投稿するか、後ろ姿の写真など、顔がわからないよう工夫するとよいでしょう。また、自宅の写真で住所が特定されることも。室内でも、窓から景色が見える写真は載せないなどの配慮が必要です。
 
 Instagram
などの匿名性が高いSNSでも普段から知る友人とやりとりする場合があります。友人の投稿にコメントする際には「○○ちゃん、すごいね」など、うっかり実名で呼ばないように気をつけて。

「今、家族旅行に来ています」と投稿するのは“自宅は留守です”という情報を空き巣に与えるのと同然です。旅の思い出は帰宅後に報告してはいかがでしょうか。


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増田由紀(ますだ・ゆき)
スマホ&PCの使い方を学べる大人向けのオンラインスクール「パソコムプラザ」代表。現役講師として講座の企画から教材作成、テキスト執筆などを行う。『いちばんやさしい60代からのiPhone』(日経BP社)など、著書多数。
https://masudayuki.com/