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【てい談】住む人の生きる力と情熱が、町を発展させていく

独自の商工業が息づく埼玉県草加市。
草加商工会議所会頭の野崎友義氏、初代「草加せんべい大使」などを務めたマリンバ奏者・フリーアナウンサーの竹花真弓氏、公明党幹事長・石井啓一によるてい談。
(『潮』2024年1月号より転載。)

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『おくのほそ道』の名勝地「草加松原」

石井 今回は「地域の力を引きだすためにできること」をテーマに、私が住んでいる埼玉県草加市で地域活性化をリードしてこられたお二方と語らいたいと思います。

竹花 埼玉県草加市といえば、まずは2014年3月に国指定名勝に指定された「草加松原」が有名です。綾瀬川沿いに約1.5kmにわたって松が植えられており、それは美しい眺めです。

石井 現在の草加市役所周辺の地域は、江戸時代に「草加宿」(そうかしゅく)という宿場町として栄えました。草加宿は俳人・松尾芭蕉の『おくのほそ道』にも登場します。

竹花 私が中高生だったころは、綾瀬川が氾濫するとあのあたりが水浸しになる光景も見られました。国道4号線(旧・日光街道)から獨協大学前〈草加松原〉駅(旧・松原団地駅)の方向へ歩いていくと、だんだん水深が深くなっていくんです。ゴムボートに乗って駅に向かったこともありました。今では治水対策が施され、草加松原は県内外の方々から愛される名勝の地になりました。

野崎 草加松原遊歩道には634本の松が植えられていますが、これは東京スカイツリーの高さにあやかったものなんです。東京スカイツリーがオープンする前、当時の市長から草加商工会議所に提案がありましてね。数えてみたら、634本には数がいくらか足りなかったんです。当会の造園業者さんに「活きのいい松を頼むよ!」とお願いして植樹式を開き、現在の松並木が完成しました。

石井 草加市と周辺の八潮市・三郷市などは、綾瀬川をはじめ川がたくさんあります。川の水面と周辺の空間が織り成す癒やしの景観は素晴らしいなと住んでいていつも思います。とりわけ草加松原ほど立派な松並木は、全国広しといえどなかなかありません。
 中川の高水敷には八潮市の「中川やしおフラワーパーク」があります。約1万3000m2の敷地に一年中たくさんの花が咲き香り、人々に愛されてきました。
 水害の話が出ましたが、川が多いということは、同時に水害のリスクが高いということでもあります。先人たちが治水対策を進めてこられた結果、現在ではしっかりと整備されてはいますが、近年は従来の想定を超える豪雨災害が毎年のように発生しています。綾瀬川も中川も江戸川も国が管理している一級河川です。この地域をますます発展させるためにも、もう一段水害対策、治水対策を強化し、災害に強い街づくりを進めていかねばならないと感じています。

 草加は埼玉県内の工業人口、工業の出荷額でもトップクラスです

地域主導での駅名変更の取り組み

野崎 草加市内には東武鉄道伊勢崎線(東武スカイツリーライン)の駅が4つあります(谷塚駅、草加駅、獨協大学前〈草加松原〉駅、新田駅)。2017年4月、「松原団地駅」が「獨協大学前〈草加松原〉駅」と改称されました。

石井 草加松原団地といえば、「東洋最大規模」といわれたマンモス団地です。1960年代から入居が始まり、2000年代に入ってから建て替えが進みました。

野崎 草加松原団地が「コンフォール松原」という住宅地に生まれ変わりました。それなのに古い駅名が残っていたのは違和感があったため、松原団地駅名変更協議会を発足し、私は同会会長として行政はもちろん東武鉄道や獨協大学、UR(都市再生機構)や地域住民のご意見を幅広くうかがいながら、3年ほどかけて慎重に駅名を検討し、変更へと至ったのです。
 当時は市内の至る所で新しい駅名について議論が交わされました。文教都市のイメージから「獨協大学前」という方向性があったものの、市民の皆さんからはやはり「草加松原」ははずせないというお声がたくさん寄せられました。そこで草加松原は副駅名として入れることになったのです。

石井 獨協大学前駅周辺は、地域のなかでも近年、目覚ましい発展を遂げています。地域のブランドイメージを、市民主導で変えていった素晴らしい取り組みです。

 

草加せんべいを世界に発信

石井 草加といえば、おせんべいが全国的に有名です。2007年、竹花さんは初代「草加せんべい大使」に任命されました。

竹花 今や世界中の人たちがソイソース(醤油)の味つけに慣れ親しんでいます。ライスクラッカー(せんべい)を世界にアピールするため、かつてハワイでマリンバのコンサートを開いて草加せんべいのイメージソング「まるいしあわせ」も披露しました。ステージ衣装は草加の地場産業である浴衣地で作ったムームーです。「まるいしあわせ」はCDにもなっているんですよ。

石井 (CDを手に取りつつ)「てんとう虫のサンバ」で有名なチェリッシュが歌っているんですか!

竹花 そうなんです! ハワイでこの曲を披露しつつ、日本からもっていった醤油味やゴマ味、のり味の草加せんべいをハワイの人たちに味わってもらいました。
 私は音楽療法士として、草加市内の小中学校の子どもたちを対象に音楽療法にも取り組んでいるのですが、そこでもこの「まるいしあわせ」を歌っているんです。こうした地場産業を通して子どもたちが故郷に誇りをもち、心を豊かにしていってもらいたいと願っています。

野崎 浴衣の話に付言しますと、草加市には綾瀬川が流れているため、染色のあとさらしたり、糊を落とすときに使う水源が豊富です。そのおかげで伝統的に浴衣作りの仕事が栄えてきました。草加市や草加商工会議所の職員は、夏場に浴衣の生地を使ったクールビズシャツをみんなで着ています。

 地域力の強さが草加市や八潮市、三郷市の発展の原動力になっているのだと思います

独自の商工業が盛んな地域

石井 草加というと住宅地のイメージをもたれている方もいると思いますが、実際は商工業が非常に盛んな地域ですよね。埼玉県の工業団地は草加の「草加柿木(かきのき)地区産業団地」が先駆けであったこともあり、草加や八潮は今なお工業の集積地です。

野崎 草加は埼玉県内の工業人口、工業の出荷額でもトップクラスです。今後、八潮とさらに連携を強めればもっと上位にいけるでしょう。私たちもそうした産業を支援するために「行動する商工会議所」をスローガンに、精力的に活動していこうと思っています。

石井 独自の製品を作っているしっかりとした中小企業が多いですよね。

竹花 八潮では国内トップシェアを誇るビューラー(まつげをカールさせる化粧道具)のメーカーがあったり、工場見学ができる消しゴムメーカーもありますね。

野崎 草加市では昔から皮革産業も盛んです。革製品のなめしは、綺麗な水が豊富でなければできません。水源の綾瀬川のおかげで、草加では伝統的になめしの技術が進歩してきました。現在ではその技術を、どうやって後世に継承していくかが課題です。そこで草加商工会議所は、後継者の若手革職人に技術の伝統を伝える「そうかわ塾(草加皮革職人塾)」を2019年にスタートしました。

石井 先日「草加商工会議所まつり」に参加したところ、若い革職人がたくさんの種類の製品を作っていて驚きました。素材加工からなめし革作り、最終的な製品化まで草加市内ですべての工程をこなせるそうですね。こうした伝統工芸の仕事に、若い人たちがどんどん参画しているのは素晴らしいことです。

野崎 北海道で駆除されたエゾシカの皮を使い、アーティストの篠原ともえさんが「そうか革職人会」の職人と協力して「ザ・レザー・スクラップ・キモノ」(革の端切れの着物)という作品を作り上げました。2022年5月、同作品は世界的な広告賞「ニューヨークADC賞」の2部門で銀賞と銅賞を受賞したのです。
 草加市として優れた工業製品や技術、食品を「草加モノづくりブランド」と認定して発信する取り組みを続けています。新しい発想の下、これからもお互いに切磋琢磨し合いながら優れた製品を世に送り出していきたいと思います。

 

中小企業の活力を後押ししていく

石井 日本はいよいよ本格的な人口減少時代に突入しました。政府も自治体も本腰を入れて少子化対策と子育て支援に取り組んでいるところですが、その成果が目に見える形で出てくるまでの間、社会に活力を吹きこんでいかなければなりません。
 現場を回っていると、中小企業の皆さんは口を揃えて「人手が足りない」とおっしゃいます。そうした人材の確保の問題はもちろん、さらには事業承継も全国的に深刻な課題です。

竹花 私がPRに努めている草加せんべいの分野でも、後継者不足の悲鳴をよく耳にします。家族みんなで続けてきた生業が後継者不足で途切れてしまうのは、あまりにも寂しいです。

石井 埼玉県議会公明党議員団は、さいたま商工会議所の中に「事業承継特別相談窓口」を作りました。身内に後継者がいない場合は、M&A(企業の合併や買収)のような形での承継もこれから増えていくと思います。ブランドと技術力をどう後世に引き継いでいくかが重要な課題です。
 中小企業の活力の維持のために、政治は一層後押しをしていかなければなりません。贈与税や相続税の納税を猶予・免除する「事業承継税制」の優遇制度は数年後に申請期限が迫ってきていますが、コロナ禍のせいで多くの中小企業がそのための承継計画を提出する余裕がなかった実態もあります。期限の延長については、公明党としてもこれから政府にしっかり働きかけていきたいと思います。

野崎 事業承継税制の問題は、中小企業にとって大きな問題です。ぜひとも公明党には議論を牽引していってもらいたいと思います。

 地域づくりは人づくりから始まるのだと思います

地域づくりは人づくり

竹花 私が大切にしている本に、地域の説話を収録した『草加宿物語』があります。かつてそれを地元の名士である著者の松本孝先生から手渡されたとき、次世代を担うバトンを託された思いがしたんです。私はこの地の文化と歴史を守っていく役割があると思っているんですが、それを教えていただいたのは人生の先輩たちです。今度は私がそれを次世代につなげていかなければならない。そうした意味からも地域づくりは人づくりから始まるのだと思います。

石井 今回、野崎会頭や竹花さんとお話をさせていただいて、時代を担う若い人たちに託していこうというエネルギーを強く感じました。そうした地域力の強さが草加市や八潮市、三郷市の発展の原動力になっているのだと思います。

野崎 草加は地域のまつりやイベントも非常に多いんですよ。

竹花 町の発展というのは、単なる賑わいというよりは、生きる力や情熱だと思うんです。八潮もつくばエクスプレスのおかげで人口がどんどん増えています。三郷も大型商業施設ができて活気がでています。この地域の今後を思うと本当にワクワクします。石井さんにはぜひ地域の発展をリードしてもらいたいと思います。

野崎 今、草加市内を走る車は「春日部ナンバー」や「越谷ナンバー」などですが、私は「草加ナンバー」をぜひ実現したいと思っているんです。単独市区町村だと、登録車両が10万台以上なければご当地ナンバーを作れないので、草加市はまだ足りない。石井さんにもぜひ実現に向けてお力添えをいただければと思います。

石井 草加ナンバーはいいですね!交通対策では、渋滞緩和のために外環自動車道の草加・八潮地域から北の越谷方面に延びる東埼玉道路の自動車専用道路としての事業化を、国土交通大臣時代に道筋を付け、推進してきました。これからも地域の課題解決のため全力で働いてまいります。


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草加商工会議所会頭
野崎友義(のざき・ともよし)
エスシーエス株式会社代表取締役社長や会長を歴任。2001年より草加商工会議所副会頭。10年より現職。一般社団法人埼玉県商工会議所連合会副会長なども務める。22年、旭日小綬章受章。


マリンバ奏者、フリーアナウンサー
竹花真弓(たけはな・まゆみ)
上野学園大学卒業。2000年に「竹花真弓とマリンバ・ヴァーツ」を結成。同年、草加市歌「想い出はいつも」マリンバ編を収録。草加市役所電話待ち受け音BGMなどとして使用中。07年、初代「草加せんべい大使」に委嘱される。草加市観光協会副会長。


公明党幹事長/衆議院議員
石井啓一(いしい・けいいち)
1958年東京都生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業。建設省(現・国土交通省)を経て衆議院議員。現在、10期目。公明党政務調査会長、国土交通大臣などを歴任。