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「食と農の公明党」が取り組むコメの安全保障

米価が昨年比2倍に高騰する中、公明党は「食と農」の旗を掲げ、谷合正明・高橋光男両議員が備蓄米放出や買い戻し緩和を主導。水田フル活用と主食用米40万㌧増産で食料安全保障を強化し、消費者と農家を橋渡しするネットワーク政党の真価を示す。
(月刊『潮』2025年7月号より転載)

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米の値段が2倍超 消費者を襲う米価高

 現在、お米の店頭価格は昨年比で2倍を超え、高止まりが続いています。主な要因は、一昨年の猛暑による米の供給力低下と、昨年秋に起きた米の買い占めです。スーパーなどの店頭から米が一時的に消える事態となりましたが、新米の出荷で欠品を解消できました。

 しかし、卸売・小売業者の間では「来年以降の米の確保が難しい」との懸念が高まりました。米確保への不安から、卸売・小売業者が集荷業者を介さず直接米を確保する動きや、生産者が在庫を抱える傾向が強まり、いっそう集荷業者が米を集められない状況が生じたのです。

 そして、集荷業者の集荷量は、前年に比べ、昨年12月時点で21万㌧、3月末の全国調査では31万㌧が不足。一方、直接販売ルートでの取引価格は高騰し、米価上昇の主因となっていると農林水産省は分析しています。

備蓄米放出の決め手 公明党議員の「私案」

 この危機に対応するため、政府は備蓄米の放出を決定。3月10日(第1弾)と26~28日(第2弾)で21万㌧、4月に10万㌧(第3弾)を放出し、7月まで放出を継続します。この決断のきっかけは、公明党の高橋光男参議院議員(当時農林水産大臣政務官)の働きかけです。

 昨年8月の米の品不足を受け、こうした事態を繰り返さないために、高橋議員は9月に農林水産省内で「高橋私案」を提案。たとえ凶作でなかったとしても、流通上の需給が逼迫した際、政府が備蓄米を集荷業者に売り渡して市場を安定させ、同等の量の米は後で集荷業者から買い戻して備蓄米に戻す仕組みです。この「備蓄米の貸し出し」により、円滑な流通を促し、備蓄の水準も保ちます。法律では、冷夏や自然災害に備そなえて備蓄米を確保することが定められており、食糧危機への備えも求められています。「高橋私案」はこのバランスを考慮した提案です。

 政務官退任後の12月の国会審議でも具体的な導入を強く求めました。農林水産省は、本年2月14日に備蓄米放出を正式決定。高橋議員の粘り強い対応がなければ、この新しい仕組みは実現しなかったかもしれません。5月19日の予算委員会で石破茂首相は、政府の決定は「高橋議員の質問がきっかけ」と答弁したほどです。現在も運用見直しを重ねつつ、備蓄米活用の基本スキームは維持されています。

 しかし、4月末の農林水産省の発表では、放出した21万㌧の備蓄米のうち、小売段階に届いたのはわずか1.9%でした。公明党は、買い戻し条件の緩和や流通の円滑化を政府に要請。これを受けて、5月16日、農林水産省は、買い戻し期限を原則1年以内から5年以内に延長することなど、米の流通安定化対策パッケージを公表しました。また毎週のスーパーの販売価格公表に、備蓄米使用のブレンド米の価格も追加することにしました。消費者目線の情報発信を求める公明党の要請を反映したものです。

 5月21日、石破首相は江藤拓前農相の辞任を受け、小泉進次郎氏を農相に任命しました。首相は、お米5㌔の店頭価格を3000円台に下げると目標を明確にし、備蓄米の売り渡し価格を下げるために、競争入札から随意契約への見直しの検討を指示しました。23日、公明党は小泉農相に具体策を緊急要請。26日に農相が新たな対策を公表、備蓄米を6月上旬にも2000円程度で店頭販売するとしました。私たちも全力で取り組みます。

主食用の米を増産 日本の食料安全保障

「安全保障」には防衛の安全保障もあれば、医療の安全保障もあれば、経済の安全保障もあります。国会では近年「食料安全保障」について盛んに議論されています。

 今の日本の食料自給率は38%しかありません。ここで言う食料には飼料も含まれます。我が国では畜産農家が使う飼料は輸入に頼っている上に、化学肥料の原料はほぼ全量を輸入に依存している状態です。

 特定の国に一つの産品の輸入を依存すると、いざというときに日本は食料危機に陥ります。日本へ食料を輸出してくれる国で、感染症が発生したり戦争や紛争が起きたりすると、日本へ食料を輸出できなくなることがあるのです。輸出国では、国内の危機に対応するために、日本に対する輸出量を制限して自国で消費する分にまわします。そして、日本が食料危機に陥ってしまうのです。やはり食料の輸入に依存しすぎることなく、日本国内で食料の供給力をしっかり確保しなければなりません。

 日本には田んぼの面積が231.9万㌶、畑の面積が195.2万㌶あります。住宅を造るように、短期間で耕地面積を急拡大することはできません。今ある農地を耕作放棄地にしない。とりわけ水田をフル活用し、主食用の米を安定供給する体勢を整えることが重要です。

 そもそも米農家には、主食用の米を作る農家もいれば、酒米用の米、おせんべいなど加工用の米、飼料用の米、米粉用の米、輸出用の米を作る農家もいます。人口減少、高齢化、食の多様化により、主食用米の需要が毎年10万㌧減っていく中で、国は2018年に生産調整(減反政策)を廃止し、輸入品に頼っている牛や豚の飼料を国産の米に替えるなど、主食用以外の用途を拡大する取り組みを戦略的に進めてきました。

 今回の米騒動を来年も繰り返さないために、主食用米の供給力を強化しないといけません。4月末時点の米農家の作付意向調査から、令和7年産の主食用米は昨年に比べ40万㌧もの増産見込みです。主食用米の増産は、公明党参院選重点政策第1弾で訴えていたことです。将来にわたって、国内農家が主食用米の国内需要を満たす生産力を確保できるかが問われます。水田をフル活用し、供給力を確保していくべきです。

 輸入に頼ればいいではないかという意見もありますが、耕作放棄地が一気に増えれば農村の衰退は避けられません。水田政策は、産業政策であり地域政策でもあります。農を国の基として、今回のような事態に日本中が翻弄されないよう、食料安全保障の取り組みを進めていくべきです。

 平和と福祉の政党である公明党は、従来「人間の安全保障」を重要視してきました。フードバンクや子ども食堂への支援を含め、公明党は生活者の生命と安全・安心を守る食料安全保障に力を尽くしてまいります。

「食と農の公明党」農林水産業キャラバン

 今年1月13日を皮切りに、公明党は「農林水産業キャラバン」をスタートしました。農林水産業の事業者と膝を突き合わせて対話し、公明党議員が現場からニーズを直接聞き取る取り組みです。

 2月15日に埼玉県川越市で開かれたキャラバンでは、若手の中堅農家に集まっていただいて意見交換しました。埼玉県も他の地域と同様、農家の高齢化が課題です。60〜70代の人が一気に引退し始めれば、耕作放棄地が急増してしまいます。20代の新規就農者を3年、5年と支援すると同時に、今がんばっている40代の中堅農家にしっかり光を当てていくことが大事だと痛感しました。

 埼玉県上里町でキャベツやタマネギ、ハクサイを栽培する生産者にお会いしたところ、衛星画像を使って生育状況を把握し、パソコンを使って農地の情報や作業記録を管理する「スマート農業」に取り組んでいるそうです。こうすることで作業量を効率化し、生産性を上げられます。

 小さな耕地を大区画に拡大する仕事は、40代の一農家だけではできません。大区画用の大型機械を導入すれば、莫大なコストがかかります。生産性を高め、なおかつ「稼げる農業」を夢あるものにしていくため、国が農家を支援するべきです。「食と農の公明党」という旗を打ち立て、私が先頭に立って取り組んでおります。

 3月22日には、新潟県長岡市でも農林水産業キャラバンを開きました。ここに出席した公明党の安沢峰子・新潟県議会議員は、小国町(現・長岡市)の米農家の出身です。安沢県議は農林水産省北陸農政局で27年間働いた経験があり、備蓄の仕事にも携わっていたと聞いて驚きました。

 農家だけでなく自治体職員も参加したキャラバンでは、現場でしかわからない話に目からウロコが落ちたものです。

 収穫した米は玄米に籾がついた状態であり、これがそのまま主食米として出荷されるわけではありません。収穫した米をザーッと網の目で振り落とし、網に残った米だけを精米して主食用に出荷します。網の目の下にこぼれ落ちた粒の小さな米は、主食米ではなく加工用にまわすのです。

 国が主食用米の生産量を把握するために使う網の目と、農家が主食用米と見なす網の目はサイズが異なります。農家はより厳選した米を販売するため、国の指標より網の目を少し大きくしています。ですから国の統計が示す米の生産量と、農家が実感する生産量に乖離が生じています。統計の取り方に問題提起をいただきました。

 ここまで詳しい話は、東京都心だけで仕事をしていてはなかなか聞くことができません。安沢県議は「網目の違いは昔から指摘されていましたよね」と即座に応じ、話がおおいに弾みました。キャラバンへの来場者から「公明党って何でも言える雰囲気なんですね」と喜ばれたのです。

 全国に3000人いる公明党の地方議員の中には、農家を営みながら政治活動をしている人もいます。安沢県議のように農業の現場をよく知っている地方議員とネットワークをさらに強化し、「食と農の公明党」として政策を還元していこうと決意しました。

消費者と生産者 橋渡しする公明党

 農家の皆さんとお話ししながら、資材高騰と経費高騰のあおりが農業を直撃している実態を知りました。消費者は「米の値段が高すぎる」と悲鳴を上げているわけですが、農家にとってみれば、生産コストに比べてこれまでの米価が安すぎた現実があるのです。

 製造業や小売業は、資材高騰と経費高騰にともなって小売価格を上げてきました。消費者に応分の負担をしてもらってきたのです。適切な価格転嫁を進めなければ、米農家がコスト割れを起こして営農を持続できません。もちろん、今の店頭価格は高すぎますし、消費者の米離れの要因になります。しかし、長い目で見て適切な価格転嫁は必要です。

 営農者の報酬が極端に少ない価格形成は健全ではありません。

「このお米にこれだけの経費がかかっているんです。この価格は妥当ですよ」とコストを見える化して単価を示す。そうした丁寧な説明を行い、消費者に理解を促し、価格転嫁を進めるべきです。

 かつて「公明党は都市型政党だ」と言われた時期もありましたが、今では「チーム3000」の地方議員が全国に広がるネットワーク政党に発展しました。公明党は消費者からも生産者からも声を聞けます。消費者と生産者を橋渡しし、生産者が持続可能な農業に取り組めるよう潤滑油になることが公明党の役割です。「食と農の公明党」が先頭に立って、日本の農業を全力でバックアップしてまいります。(備蓄米運用に関するデータは5月26日時点のものです)

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公明党参議院議員
谷合正明(たにあい・まさあき)
1973年埼玉県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農林経済)。公明党・農林水産業活性化調査会会長。2000年より国際医療NGOのAMDA(アムダ)に勤務し、難民キャンプなどで医療支援活動に従事する。農林水産副大臣などを歴任。