【潮９月号の読みどころ】民衆こそ王者――池田大作とその時代

君が決意にわれ泣かむ 4月24日に会長を辞任した後、池田は全国各地から、そして海外からも殺到する手紙への返信を綴り続けた。 「……悲憤の声が、手紙や電話で寄せられた。その数は、直後だけでも、およそ8200から8300になる。この時に、同志の皆様が寄せてくださったお手紙は、すべて大切に保管してある。今、読み返してみても、涙なしでは読めないほどの憤激の手紙である。ありがたい、誠実と真心の光る手紙である」（2008年の池田のスピーチ）（中略）立川文化会館で子どもたちと会った8月5日の前後も、海外で活躍するメンバーに、「不撓桜」（フィリピン）、「香風」（ドイツ）、「大心」（スウェーデン）、「我身宮殿」（オーストリアなど）、「功徳安穏」（ドイツ）、中東で働く友に「使命 福運 無事」と記した色紙などを贈っている。「平和と 信仰と 福徳の人生のためにと」（コートジボワール）、「使命、喜楽、無事」（ガーナ）、「無事、福運、根性」（カメルーン）、「努力、福運、使命」（スイス）、「良識、信念、和楽」（イギリス）など、書籍への献辞も数多い。池田は「私は体が弱かった。だから、生きている間に、なすべきことはすべてやり遂げておこうと戦った。／明日を頼まず、明日なき人のごとく、全身全霊で今日を戦った。ゆえに学会にはスピードがあり、大発展したのです」と語った（1993年7月に新聞連載した「アレキサンダー大王とアソカ大王」）。（P.117-120） 「子ども扱いされなかった」 葛飾の子どもたちが立川文化会館についた時、すでに総会は始まっていた。上當充國（じょうとう・みつくに）は小学5年生だった。池田から「君たちはどこの合唱団？」と聞かれ、「葛飾です」と答えた。「そうか。遠いところからご苦労さま。写真を一緒に撮ろう」。充國は、池田が一人ひとりに声をかけたことを覚えている。「私は頭をなでられて『次は、君たちの番だよ』と言われたんですが、葛飾で合唱団に入っていたので、会合はもう始まっているし、『あ、僕たちが歌う順番は次なんだ』と思ったんですよ。でも、あれは〝私がつくった広宣流布の道に続け〟という意味ですよね。だいぶ経ってから気づきました」と苦笑いを浮かべる。「とにかく、小学生だった私たちに一人ずつ、それぞれ違う言葉を言われた。そのことがすごく心に残っています」。（P.120） 師が弟子を仰ぎ見て 合唱祭で、はじめは演目に入っていたものの、外されかけた歌があった。タイトルは「今日も元気で」。婦人部が歌う予定だった。歌詞の中に「先生」という一言が出てくる。この歌を宗門は嫌っていた。〝宗門を刺激しないように〟――それが外す理由だった。他にも愛唱歌はあった。信仰者の眼で見なければ、単なる合唱の演目の話である。しかし、彼女たちにとっては〈ただ〝歌が一曲、歌えなくなった〟という問題ではなかった。自分たちの誇りが、いや、生き方そのものが、否定された思いがしてならなかったのである〉（小説『新・人間革命』第27巻「正義」の章）。仏法を弘めようとする師匠と、同じ志の弟子を、切り離す。この動きに気づき、抗するか、なびくか。結果的に、合唱祭の当日は「今日も元気で」を歌えるようになった。各部の合唱や演技が終わり、〝子どもたちの代表から池田会長に花束贈呈があります〟――司会の声が響いた。〈花束を抱えた一人の少女が、池田先生のほうに歩み寄っていきました。……私は、合唱祭の運営責任者として、固唾を呑んで見つめていました。満面に笑みをたたえ、少女を迎える先生――次の瞬間、目を見張りました。先生が少女を、真っ白な布が敷かれているテーブルの上に、ひょいと持ち上げられたのです。少女にしてみれば、先生を仰ぎながら、花束を贈呈するつもりだったはず。それがいきなり、まるで先生を見下ろすような形になったのです〉（高木晃の手記、「大白蓮華」2012年5月号）（P.127）月刊『潮』9月号の詳細／ご購入はコチラから。

【潮９月号の読みどころ】民衆こそ王者――池田大作とその時代

連載ドキュメンタリー企画 民衆こそ王者――池田大作とその時代 道を開く人篇（1）

連載ドキュメンタリー企画　
民衆こそ王者――池田大作とその時代　道を開く人篇（1）