【特別企画】歴史を知ることそれは未来への「鏡」
負の歴史を未来への遺産へ――「戦争ミュージアム」が語る記憶(P.32~)
梯 久美子(ノンフィクション作家)
◆梯久美子さんは、ノンフィクション作家としてデビュー作『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』をはじめ、戦争に関する作品を多く発表してきた。硫黄島の戦いの指揮を執り、戦死した栗林中将について調べていくなかで、大本営が栗林中将の訣別電報の内容を改竄して発表していたことを発見する。遺族の自宅で訣別電報の現物を直接手に取って見たとき、「もの」を通して、直に触れられる歴史のディテールがあると気づいたという。
◆梯さんの最新刊『戦争ミュージアム 記憶の回路をつなぐ』では、「ものが語る戦史」という観点で、全国各地の戦争をテーマにした資料館などを取材した。そのなかでも、梯さんにとって忘れ難いという施設の1つに、瀬戸内海の「大久野島毒ガス資料館」がある。女子学生や学童も働いていた毒ガス工場はまるで要塞のような堅牢な造りである一方、展示されている防毒マスクなどのあまりの貧弱さの対比に、人間を軽んじる戦争の狂気を思い知らされたと語る。
◆記事では、特攻兵器を展示する山口県の「周南市回天記念館」なども取り上げている。過去の悲惨な戦争と、現在を生きる自分とが、全国各地の戦争遺跡や資料館にある「もの」や「場所」を通してつながっていく。梯さんは、若者の戦争に対する関心は高まっており、過去の歴史を後世に残す気運はますます高まっていくだろうと述べる。最後に、過去を知ることは後ろ向きなことではなく、二度と戦争を起こさせないため、未来に向けた前向きな営みであると強調した。
【特集】風雲急を告げる日本政治
公明党の勝利こそ「大衆のための政治」を実現する最善の道だ(P.56~)
佐藤 優(作家/元外務省主任分析官)
◆自民党の裏ガネ問題に端を発した政治資金規正法改正をめぐる攻防戦は、政界浄化のために60年間戦ってきた公明党の大勝利であると佐藤優氏は語る。パーティー券購入者の氏名や住所の公開基準額の引き下げで、公明党は自民党より厳しい「5万円超」を主張。さらに政策活動費の使い道を監視する第三者機関設置案も提言し、どちらも自民党に呑ませた。ほかにもコロナ禍において公明党の山口代表が「全国民へ所得制限なしで10万円支給すべし」と、当時の安倍首相へ直談判したことなどについて触れ、大事な局面で妥協せず、大衆の思いを形にする誠実さが公明党にはあると分析する。
◆佐藤氏によると、公明党が勝ち取った「5万円超」という基準に対し、一部には「政治資金パーティー自体を禁止すべきだ」との声もあがるが、パーティー券という収入源をいきなりゼロにすれば、自民党だけではなく立憲民主党や国民民主党など、野党の議員も行き詰まり、カネ持ちか組織力がある人間しか政治ができなくなってしまうと警鐘を鳴らす。現状を完全に否定せず、人間の心の問題と真摯に向き合い抜く公明党のおかげで、民衆による民衆のための政治が守られたと佐藤氏は語る。
◆最後に、佐藤氏は創価学会員にとって、公明党の支援は信仰と切り離された政治運動ではなく、朝晩の勤行・唱題や学会活動、友好対話運動と完全に地続きであると指摘し、「行き過ぎた政教分離」を是正して、学会員はさらに堂々と支援活動に取り組むべきだと述べる。佐藤氏は、戸田城聖第2代会長が示したように、政界を浄化して大衆のための政治を実現するには、人間の心を変え、人間社会の文化を変えなければいけないのであり、公明党の使命はいや増して重いと期待を語った。
【シリーズ】シニアのための「生き生き」講座
「財産を残さない」「介護はアテにしない」が長寿時代を生きるコツ(P.80~)
和田秀樹(精神科医)
◆長寿化が当たり前の時代に突入したいま、シニア世代にとっての親子関係のあり方をどうすべきか。和田秀樹氏は「子どもに財産を継がせない代わりに、介護の担い手として子どもをアテにしない」というシニア像が望ましいと語る。遺産相続をめぐり、家族関係が険悪になることは多い。親の側も子どもを介護の担い手としてアテにすることで、子どもの考えを配慮してしまい、自分の意思も財産も尊重されない。そして、幸せなセカンドライフは遠ざかる。
◆親の意思が尊重されなくなる背景には、成年後見制度にまつわる諸問題や、日本特有の親子間のいびつな距離感にあると和田氏は指摘。一方で、子どもが親の介護を担うなかで、心身ともに疲弊してしまい、離職や介護自殺も多数起きている。たとえ財産を相続しても、取り返しがつかないほどの負担になってしまうのだ。だからこそ、これからのシニアは、自分の財産を介護費用も含めて‶自分のため″に使い切るべきだと和田氏は強調する。
◆「人生100年時代」と言われるいま、定年後、子離れ後から始まる「第2の人生」は長い。和田氏は、シニア世代の親は「親には親の人生がある」と自分が本当にやりたかったことに専心すべきだと言い切る。また、人生後半を「第2の人生」ではなく「本当の人生」と呼ぶように提唱。老いてから「本当の人生」を生きた伊能忠敬や永井荷風などの偉人たちのように、世間体にも子どもの思惑にも振り回されず、自分の生きたい人生を満喫してほしいとエールを送った。
【特集】古の光彩、心のふるさと島根県
【対談】島根には、大人になって気づく魅力がいっぱい!(P.112~)
江上敬子(お笑いコンビ、ニッチェ)VS近藤くみこ(お笑いコンビ、ニッチェ)
◆テレビでも人気のお笑いコンビ・ニッチェの江上敬子さんと近藤くみこさんに、島根の魅力についてたっぷりと語っていただいた。島根県出身の江上さんイチ押しの観光スポット、そして三重県生まれの近藤さんが語る‶島根の味″は必読だ。何より、島根からの上京話やコンビ誕生の思い出話で繰り広げられる“ボケ”と“ツッコミ”の掛け合いに、クスッと笑ってしまうかも!?
石見銀山はかつて世界に広がる日本の「窓」だった(P.120~)
澤田瞳子(作家)
◆直木賞作家の澤田瞳子さんは長編小説『輝山』で、石見銀山で生きた無名の庶民たちを描いた。石見銀山の歩みから見えてくる先人たちの叡智、さらには「山の陰」ではなく世界的な広がりをもった島根の姿……。石見銀山の掘子たちの死生観に迫るだけでなく、澤田さんの史眼は見落とされてきた島根の実像を鋭く捉える。一読すれば、ロマンある島根旅に出たくなること間違いなし!
出雲の地で感じる太古から鳴り響く‶振動″(P.128~)
佐野史郎(俳優)
◆2025年10月放送開始の朝ドラで、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・セツを主人公にした「ばけばけ」の制作が決定された。島根県育ちの俳優・佐野史郎さんは、そんな小泉八雲の朗読会をご自身のライフワークに定めているという。出雲の不思議な魅力に取りつかれた小泉八雲や、親交のあった「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげるさんとの思い出、さらには島根が生んだミュージシャンなど、太古から現代へと続く文化芸術を語り尽くす。