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「偏差値」より「変さ値」——鎌田實が語る“自分らしさ”という武器

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「偏差値」より大切なのは、人とは違う“自分らしさ”——鎌田實さんはそれを「変さ値」と名づけました。空気を読みすぎず、変わっていることを恐れない。その姿勢は予測不能な時代において、変化を恐れずに自分を柔軟に変えられる力でもあります。さらに、女性たちの「変さ値」が高まれば社会の空気が変わり、男性の「変さ値」も引き上げられる。ガラスの天井に挑む10人の言葉から、自己決定の人生を取り戻すヒントを探ります。

書籍『女の"変さ値"』より〈はじめに〉を紹介します。 

はじめに


僕は、小さい頃から「へん」を大切にして生きてきました。とにかく人と違うことをやってみる。自分らしい選択をする。その積み重ねが今の僕を作っていると思います。

「変さ値」とは、人とは違う自分らしさやユーモアです。ほかの人と比べて自分は変なのではないか、劣っているのではないか、不器用な人間だと思われているのではないか――そんな気持ちになることもあるかもしれません。けれど、人と違う部分、変である部分こそが、実はあなたらしさであり、ほかの誰も持っていない「自分だけの武器」なのです。


20年ほど前から、ボランティアで毎年中学校や高校に行き、「教科書にない1回だけの命の授業」をしてきました。そのたびに、必ず「偏差値」よりも「変さ値」が大事だと話してきました。それは、僕が自分自身にもいつも言い聞かせてきた言葉でもあります。「空気に流されるな。空気を読みすぎるな。空気をよどますな。空気をかき回せ。変わっていることを恐れるな」


やがて、若者だけではなく、働き盛りの人やシニアの人たちにも、「もっと自分を出してみたらどうだろう」と「変さ値」を提案するようになりました。


新しい言葉が生まれると、それを読んだり、聞いたりした人が「いいな」と思って使いはじめ、いつの間にか接触感染のように広がります。新しい言葉が広がっていけば、一人一人の生き方が変わるだけでなく、どこか閉塞感の漂うこの国の空気そのものも、少しずつ変えていけるのではないかと感じるようになりました。


そんな中で、自分らしくあろうと挑戦している女性たちの存在に気づきました。彼女たちのような「変さ値」の高い女性たちの姿を発信し、それを受け取った日本の女性一人一人の「変さ値」が高まっていけば、それはやがて、この社会全体に新しい刺激を与え、男性たちの「変さ値」をも引き上げていくのではないか。そうすれば、日本はもっと面白くなる――。そんな思いから、この本を書くことにしました。


これからは、先行きの読めない予測不能の時代に入っていくと思います。「変さ値」の"変"は、「変化」の"変"でもあります。「変さ値」が高い人は、変化することを恐れない勇気を持っているのです。古い価値観にしがみつかず、自分自身を柔軟に変えようとする強さがある人。今までの考え方だけでは太刀打ちできないような出来事が次々と起きる時代にあって、そうした姿勢こそが、これからを生き抜く力になるのだと思います。


もうひとつ大切なことがあります。


それは、他人の「変さ値」にも、敬意を払うことです。なぜあの人は、あんな考え方をするのだろう。なぜ、あんな行動を取るのだろう。そう思ってしまう場面もきっとあるはずです。しかし、自分の「変さ」を大切にできる人は、きっと他人の「変さ」も大切にできるのです。人間なので、合う・合わないはもちろんあります。だけれど、違いを認め合えるところにしか、本当の元気は生まれないと思うのです。


そんなことを考えながら、僕は「『ガラスの天井』を破る女性たち」というテーマの連載で、社会で活躍する「とんがった女性たち」に話を聞いてきました。分野も立場も異なる彼女たちは、それぞれに日本や世界の第一線で、自分の可能性を切り開いてきた人たちです。


「ガラスの天井」という言葉は、能力や実力はあっても、なぜかその先の活躍が阻まれてしまう──そんな女性たちの現実を表しています。見上げれば空は見えているのに、いざ進もうとすると透明な「ガラスの天井」にぶつかってしまうのです。


けれど、今回登場してくれる10人の女性たちは、とても心が強い人たちでした。天井に正面からぶつかってきた人もいれば、するりとすり抜けてきた人、天井そのものを「ないもの」として生きてきた人もいました。


「ガラスの天井」を突き破るのは、肩書きでも、地位でも、名声でもありません。十人十色の女性たちは、自らの「変さ値」を武器に、天井の向こう側へと自分の人生を押し広げてきたのです。


ここでお伝えしたいのは、この本は女性のためだけの本ではないということです。これからの人生、どう生きるかを考えるなら、性別や世代を超えて彼女たちの話に耳を傾けてほしいと思うのです。きっと大切なヒントが見つかるはずです。


自分の「変さ値」はどうだろう。この本を読み進めながら、ぜひ頭の片隅で考えてみてください。みんなと違うことで不安を抱いてきた人ほど、実は「自分はいけている」と思っていいのではないでしょうか。反対に、空気を読むのが上手で、同調圧力のなかで自分を抑えてきた人にこそ、これを機に「もっと自分を主張してもいいんだ」と感じてほしいと思っています。


幸せに生きるために必要なものとして、「健康」「良い人間関係」「自己決定」の三つがよく挙げられます。この中で、日本人がいちばん苦手としているのが「自己決定」かもしれません。世間の空気に支配されるのではなく、自分が人生の支配者になること。それこそが、まさに「変さ値」の高い生き方なのです。


お行儀よく、偏差値の高い優等生を目指すのではなく、まずは少しずつでいいので、勇気を持って自分のなかに「変さ」を作り出してみてください。あなたが発見した自分の「変さ値」が、これからの人生をきっと面白くしてくれると僕は期待しています。

――本文ここまで――

※当記事は、書籍『女の"変さ値"』から抜粋したものです。

「偏差値」では測れない、あなたの魅力!

――人とは違う部分、"変" である部分こそが、実はあなたらしさであり、

他の誰も持っていない「自分だけの武器」なのです。

  • 書籍『女の"変さ値"』書影

    『女の"変さ値"』鎌田實 著、定価:1760円、発行年月:2026年3月、判型/造本:四六並製/240ページ

【目次】

◆阿川佐和子(エッセイスト、作家)

…天井はスルッとすり抜けるのが〝サワコ流〟


◆上野千鶴子(社会学者)

…弱者が弱者のままで尊重される社会を求めてきた


◆加藤登紀子(シンガーソングライター)

…天井は吹き飛ばされても見上げれば綺麗な青空があったんです


◆中満 泉(国連事務次長・軍縮担当上級代表)

…遠い日本からでも、「平和」のためにできることがある


◆織田友理子(認定NPO法人ウィーログ代表理事、NPO法人PADM代表)

…優しさが連鎖する社会は自分の可能性を信じることから始まる


◆山根基世(アナウンサー)

…女性リーダーの存在が組織を生き生きさせる


◆藤田千代子(ぺシャワール会PMS支援室室長)

…中村哲先生の遺志は、今もアフガンに息づいています


◆森下洋子(松山バレエ団理事長・団長、プリマバレリーナ)

…原爆の地で生まれたからこそ何があってもめげない


◆村木厚子(元厚生労働事務次官)

…〝悩む〟なら開き直って生産的に悩んだほうがいい


◆【特別対談】 黒柳徹子(女優、ユニセフ親善大使)×鎌田 實

…「好きなことだけを楽しむ」それが健康の秘訣かしら

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