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なぜ、いま中道なのか。佐藤優氏が読み解く「中道主義」 

公明党の斉藤鉄夫代表と立憲民主党の野田佳彦代表は15日、衆院選に向けて両党の衆院議員が参加する新党を結成することで合意。翌16日、新党の党名を「中道改革連合」、略称を「中道」とすることを発表した。「中道改革連合」とは何なのか。元・外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が、"中道勢力の結集"を読み解く。


中道主義=人間主義に基づく政界再編


本稿が掲載される『潮』3月号が読者の手に届く頃には、すでに衆議院議員選挙の終盤と思うので、先行して「潮プラス」で公開することとした。この原稿を執筆している1月15日時点で公明党に関連する大きな政治的な動きがあったので、筆者の見方を記したい。


〈立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が(1月)15日午後、国会内で会談し、新党を結成することに合意した。両党の衆院議員が今後、それぞれ離党し、新党に参加する手続きをとる。参院議員と地方議員は当面、立憲、公明に残る。新党の党名は「中道改革」とする方向で調整している〉(1月15日「朝日新聞」デジタル版)。


高市早苗首相が、「読売新聞」だけへの情報提供によって(報道は、1月9日夜の「読売新聞」電子版)、1月23日の通常国会会期冒頭解散の流れを作ろうと画策した結果が、公明党を軸とする新党形成につながったのだ。


衆議院議員選挙は政権選択選挙だ。公明党の狙いは、立憲民主党と新党を形成するというよりも、中道勢力を結集して将来的に政権を獲得していくことと筆者は見ている。だから公明党は国民民主党や自民党の一部にも中道改革新党への結集を呼びかけているのだ。


今回の公明党の決断を選挙対策と見ている記者や評論家は、事柄の本質がわかっていない。公明党は、自公連立解消直後から練っていた構想を前倒ししたというのが筆者の見方だ。このタイミングで公明党が小選挙区からの撤退を決め、衆議院では党名を消してでも、自らが正しいと信じる価値観の政治勢力を残すことにした。今回の新党結成で重要になるのが中道主義=人間主義という価値観に基づく政界再編だ。

池田大作氏が掲げた「中道」の理念

公明党は、池田大作創価学会第三代会長によって創立された政党だ。池田氏が逝去された際の追悼文(2023年11月20日)で、公明党は中道主義の政治について言及している。


〈公明党の創立者である池田大作・創価学会名誉会長が逝去された。衷心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、党の全議員、全職員が創立者に示していただいた指針をあらためて胸に刻み、日本の国民はもとより世界の民衆の幸福と平和のために、一致団結して闘い抜くことを誓いたい。


「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」――。この公明党の不変の立党精神は、創立者が1962年9月13日、党の前身である公明政治連盟の第1回全国大会で語られたあいさつが淵源となっている。


当時の政界は不毛なイデオロギー対立に明け暮れ、庶民大衆の生活は政治に置き去りにされていた。政治を庶民の手に取り戻すために、公明党は64年に結成された。その原点を深く銘記し、大衆の願いや希望、即ち「衆望」に応える政治を断じて実現していかねばならない。


創立者は、公明党が衆院選に初挑戦した67年1月、党のビジョンを明らかにされた。「中道政治で平和と繁栄の新社会」の建設をモットーとして、第一に「清潔な民主政治の確立」を掲げ、内政面では「大衆福祉で豊かな生活」、外交面では「戦争のない平和な世界」をめざすとした内容だ。


この未来像を現実の政治の世界で具体化していくことは、公明党の使命である。その自覚を持って、人間主義=中道主義の政治にまい進したい〉(公明党HP)


中道改革政党を結成することは、池田氏の政治理念の延長線上にある。公明党の価値観からすれば、「清潔な民主政治の確立」、「大衆福祉で豊かな生活」、「戦争のない平和な世界」の実現に近づくならば、公明党という名称にこだわらなくてもいい。人間主義=中道主義の価値観が維持され、発展することがもっとも重要だということになる。


「26年間、一緒にやっていたから、うちの選挙区は大丈夫」と思っている自民党の国会議員がいるとすれば、それは認識が甘いと言わざるを得ない。公明党とその支持母体の創価学会にとって、今回の決断は、組織存亡を賭けた命がけのものだ。本件の持つインパクトが自らの政治生命に直結することを、そう遠くないタイミングで自民党の国会議員も認識すると思う。


公明党の選挙は、支持母体である創価学会を中心とした組織選挙だ。選挙の準備には、最低でも3カ月はかかる。2月8日に総選挙が行われるのだから、組織の指令が現場にまで徹底しない可能性がある。そこで、マスメディアを通じても、公明党支持者にメッセージを送ることが重要になる。言論戦、情報戦においても、公明党は戦略的かつ迅速に動いている。


こういうときだからこそ、池田氏のテキストを読み解き、そこから選挙に勝利するための教訓を見出していくことが重要になる。それでは、池田氏の日記の読み解きを続けよう。

「口のうまい」人間に騙されるな


(一九五〇年)六月三日(土) 小雨

反省と前進。苦悩と光明。雑念と清浄。

これ、青年の持ち悩むところなり。青年の批判、正義感、進歩への情熱は、満ちみちていなくてはならぬ。


口のうまい、壮年の言語が何だ。左右されてはならぬ。若人の革新の息吹に依ってのみ、老いたる社会の眼を覚ますことが出来るのだ。


青年は、卑怯な、意気地のない、老人の如き姿と化してはならぬ。それこそ、早く、ずるい妥協の、淋しき人生となってしまう。

青年よ、快活であれ。青年よ、理想に、厳粛に進め。


六時三十分より、青年部会あり。意義ある、総合打ち合わせ会が出来た。


先生、見ていて下さい。きっとやります。



六月四日(日) 雨

人生の目的、善悪の基準。これは、吾等人類にとって、重大な課題である。

これを、明確に、断言して、教えてくれる人がいたら、大偉人といえよう。


大仏法を、実践、勉強し、自ら、確証と信念を持つことだ。これ大事の中の大事だ。


吾人、今日の生活に間違いなかりしか。いや、青年が、いちいち、躊躇する必要はないか――。


青年は、前に進めばよいのだ。正義感と、情熱を、信念を、持ちつづけて。

革命児には、先覚者には、苦難はつきものだ。青年には、苦悩がつきものだ。

ただ、それらを打開して進むことが、革命だ。



六月五日(月) 晴

仕事繁多、自分になれない仕事故か。

毎日が、激戦! 若人は戦う、

全生命力を、賭して。

それが、尊く、それが美しい。

疲労の中に、起ち上がる瞳、

そこに、希望が湧く、未来が生まれる。

そこにこそ、天の大聖曲が聞こえる。

戦うのだ、正義の為に。

闘うのだ、大善の前に。


今、大衆の目は閉じている。

だが、大衆の目は、必ず開くだろう。

否、開かせねばならない。


小生の室にて、座談会開催。

少人数なり。淋しいけれども、そこに、修行有り〉

(『大白蓮華』2024年10月号「若き日の日記」〈選集〉)


池田氏は「口のうまい、壮年の言語が何だ。左右されてはならぬ」と記している。現在の日本にも、近隣諸国との対立を煽り、規律を無視した財政政策を行い、断言調の物言いを得意とする口のうまい政治家がいる。このような人たちの言うことに無批判に従っていると、国民が不幸になる。こういう政治家はナショナリズムを煽ることは出来るが、それを沈静化することは苦手だ。ポピュリズムを弄ぶ政治家の危険性を池田氏は認識していた。

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