「令和の政治改革」は公明党がリードする!
2024/10/102024年9月28日公明党新代表に石井啓一氏が選出されました。
月刊『潮』11月号では早くも石井代表が登場します。
これからの公明党、そして代表としての決意を語ってくださいました。
(月刊『潮』2024年11月号より転載)
清潔な政治の実現のために
このたび、公明党代表の重責を担うこととなりました。公明党は本年11月17日に結党60年を迎えます。節目のこのときに、全議員・全党職員が「大衆とともに」との立党の精神を改めて深く学び直し、永遠の指針として自らの血肉にしていかなければなりません。一同、新たな気持ちでスタートを切ってまいります。
公明党は結党以来"清潔な政治"の実現に取り組んできました。だからこそ、自民党派閥の政治資金問題に端を発した今般の政治改革については、これまでも、そしてこれからも一貫して議論をリードしていきます。
昨年の問題発覚を受けて、本年1月18日にはどの政党にも先駆けて、いち早く政治改革ビジョンを発表し、政治資金規正法の改正などについて具体的な提案をしました。その後、自民党との協議や与野党での協議を経て、先の通常国会で成立した改正政治資金規正法には、私どもがビジョンで示した提案をすべて含めることができました。とりわけ、自民党との協議では暗礁に乗り上げそうになった局面もありましたが、最後まで一歩も退くことなく粘り強い交渉を続けました。
通常国会には時間的な制約があるため、改正法で設置が決まった政治資金を厳しくチェックする第三者機関など、詳細な制度設計が今後の検討課題になっている施策もあります。まずは、改正法が施行される2026年1月1日までに設置ができるよう、具体的な検討や各政党との協議を進めてまいります。むしろ改正法の成立はゴールではなく、「令和の政治改革」はまさにスタートしたばかりなのだと、強く決意しているところです。
罰則の強化と透明性の向上
改正政治資金規正法において、公明党は「罰則の強化」と「透明性の向上」の二つを柱に改革を進めました。ここでは、そのなかでも特に注力した三点を紹介します。
まずは「罰則の強化」として導入した、いわゆる「連座制」です。従来の政規法では、政治資金収支報告書の虚偽記載や不記載は、会計責任者が処罰されることになっていました。ゆえにこれまでの政治家は、「自分は知らない。すべて会計責任者に任せていた」という弁明が成り立ったのです。
しかし、そうした典型的な"トカゲの尻尾切り"に有権者が納得するはずがありません。そこで公明党は、収支報告の提出の際に政治団体代表者による確認書の添付を義務付けることを提案しました。一般的に国会議員の政党支部や資金管理団体は、政治家本人が代表者を、その秘書が会計責任者を務めています。
収支報告書が法律に基づいて適切に作成されているかを、政治家本人が確認し書面として提出する。仮に虚偽記載や不記載が発覚し、確認書がいいかげんなものであった場合、政治家本人も処罰されるという建付けです。政規法では、罰金刑に処されると公民権が停止されます。公民権停止となれば議員の身分を失い、その後も3年ないし5年は選挙に立候補することもできません。いわば、政治生命を絶たれるに等しい厳しい処罰を科すことで、不正に対する抑止力を強化しようと考えたのです。公明党が提案した、このいわゆる「連座制」は、成立した改正政規法に含まれました。
続いて「透明性の向上」のための、政治パーティー券購入者の公開基準の変更です。従来の政規法では、購入額が20万円超の場合に購入者が公開されていました。私どもはこの金額が不透明さの要因となっていると判断し、これを5万円超まで引き下げることを提案しました。5万円という金額は、個人による寄付の公開基準に倣っています。
自民党は金額を引き下げることには同意したものの、具体的な金額は10万円超を主張しました。マスメディアの報道でも頻繁に取り上げられたように、自公それぞれの主張は最後まで平行線を辿ります。自民党自身の問題に端を発していることなども考慮し、我々としても厳しく対応することにしたのです。最終的には党首会談までもつれこみ、我が党が主張した5万円超で決着することができました。
この公開基準については、有識者などから「1円以上はすべて公開するべきだ」との声があることも承知しています。私どもとしては、法律の整合性も考慮し、今回はひとまず個人による寄付の公開基準額に合わせることにしました。また、是非は別として「公開されるのであればパーティー券は購入できない」と考える方がおられること、その一方で政治活動のための資金集めをしなければならない政党があるということも鑑み、総合的に判断した次第です。「透明性の向上」の方針からすれば、将来的には「1円以上」にするという選択肢もあり得ると思います。
検討課題として残る第三者機関の設置
同じく「透明性の向上」のために提案したのが、冒頭にも触れた政治資金を厳しくチェックする第三者機関の設置です。
議論の発端は政策活動費でした。政策活動費とは政党から議員に支出される政治資金で、使途が公開されていません。自民党だけでなく立憲民主党や国民民主党、日本維新の会などの政党も支出をしていたことが分かっています。公明党は政策活動費を含めて、使途が不明な支出を行ったことは一度もありません。
我が党としては、この政策活動費を含む政治資金のすべてを厳しくチェックする第三者機関を設置することが、「透明性の向上」に欠かせないと考えました。しかし、提出された自民党案には当初、第三者機関については一切触れられていませんでした。
協議の末、法文の附則に「第三者機関の検討」という文言は盛り込まれたものの、「検討」ではいけません。さらに交渉を続け、最終的には公明党が主張したとおりに「第三者機関の設置」という文言に置き換えることができました。
ただし、前述したとおり、この機関の詳細な制度設計については、検討課題のまま残されています。具体的にどのような権能を持たせるのか。国会に設置したほうがよいのか、それとも公正取引委員会のような独立した行政機関にしたほうがよいのか。また、どのくらいのスタッフが必要なのか。2026年1月の施行に間に合うよう、検討しなければならないことはたくさんあります。
公明党としては、改正法成立のあと、先の通常国会が閉会する前に、党内に「改正政治資金規正法実施推進プロジェクトチーム」を設置し、有識者と意見交換をしながら検討を始めました。近いうちに中間取りまとめを発表できるものと思います。
過去に政規法が改正された際には、検討事項として謳われたまま、結局うやむやになってしまったことがあります。今般の改正法では、絶対にそのようなことがあってはなりません。最後まで気を抜くことなく、実効性のある改革を進めてまいります。
強力な推進と強い歯止め
自公連立政権が誕生したのは1999年のこと。2009年に下野してからの数年間も含めると四半世紀の時間が経ちます。この間、公明党として貫いてきたのは、日本政治における"バランス"としての役割です。常に全体観に立ち、その時々の政局に流されることなく、強力に政策を前に進めるべき事柄と、強く歯止めをかける事柄とを、是々非々で判断してきました。
強力に政策を前に進めた事例としては、2019年の消費税率の引き上げの際に導入した軽減税率があります。消費税を8%から10%に引き上げる際、問題になったのは「消費税の逆進性」です。
「消費税の逆進性」とは、低所得者のほうが所得に対する消費税の割合が大きくなる傾向を指す言葉です。その主たる要因は、支出に対する食料品の割合の大きさといわれています。
軽減税率については、消費税を導入している国のほとんどが採用しています。そこで、公明党としては、一つは逆進性の緩和のため、もう一つは国民の皆さんの痛税感の緩和のために、軽減税率の導入を訴えました。自民党や財務省は大反対でしたが、ここでも粘りに粘ってなんとか導入を決めることができたのです。
導入の際には、さまざまな煩雑な手続きがあったことなどから、野党からは批判の声を頂戴しました。しかし、国民の皆さまからは当初から高い評価をいただいており、とりわけ近年の物価高のなかにおいては「あのときに軽減税率が導入されてよかった」との声が、各所から聞こえてきます。
他方、公明党が強く歯止めをかけた事例は、2015年に成立した平和安全法制です。当初は全面的に集団的自衛権を認めるという議論があったものの、公明党は憲法9条にある専守防衛の範囲に収めることを主張し、そのとおりの形にすることができました。野党は「戦争法案」との呼称で反対し、法律が成立すれば他国との戦争に巻き込まれるとの喧伝がなされました。しかし、平和安全法制によって日米間における同盟の信頼が高まり、むしろ抑止力は確実に強化されています。
強力な推進と強い歯止め――。これはイデオロギー政党ではなく、どこまでも大衆に根差した政党である公明党ならではの強みだと自負しています。
守り抜いてきた立党の精神
公明党の60年の歴史を振り返ると、時代や社会の変化に合わせて変えてきた部分と、いかなる時代にも変えることなく守り抜いてきた部分があると思います。
守り抜いてきたのは、何より党創立者である池田大作先生が示してくださった「大衆とともに」との立党の精神です。公明党の前身である公明政治連盟が1962年に開催した「第一回全国大会」において、創立者は政治家のあるべき姿として次の三点を示されました。すなわち①団結第一、②大衆直結、③たゆまざる自己研鑽(勉強)――です。この三つに示された公明議員の精神は、今後も絶対に変えてはいけません。
一方で、時代や社会の変化に応じて変えてきたのは政策です。公明党が結党された60年前と現在とで、日本社会の様相は大きく変化しています。最も大きいのは、少子高齢化による人口減少の加速でしょう。しかし、そうした変化のなかでも、国民の命と暮らしを守るという政治の最大の使命は変わることはありません。
日本の高齢者数がピークを迎えるのは、2040年を過ぎたあたりだといわれています。少子高齢化がいま以上に進めば、介護・福祉・医療の人材も不足します。また、高齢者が増えれば年金や医療費なども増大する。そうした課題を乗り越えるための手立ては、いまのうちから打っておかなければなりません。そこで公明党は現在、中長期的にこの国の社会保障を堅持していくための「2040ビジョン」を策定するべく議論を進めています。
公明党がリードする防災・減災対策
なかでも力を入れなければならないのは、子育て世帯の支援です。今年上半期の出生数は約35万人。1年に換算すると約70万人ですから、かつての想定よりも10年ほど早いペースで少子化が進んでしまっています。子育て以前に、若い人たちが安心して結婚し、望んだ人数の子どもを産める環境整備も喫緊の課題です。
加えて、中長期的な試算をすると、今後は高齢者のみならず中高年の単身世帯も増えることが予測されています。これまでの社会保障は「夫婦+子ども二人」というモデルを標準として組み立てられてきていますので、現在の世帯構成に合った仕組みに変えていく必要があります。高齢者の単身世帯については、賃貸物件の契約がしやすくなる環境整備や、葬儀・埋葬や財産整理などのいわゆる終活を後押しする施策が必要です。
政治課題は他にも山積しています。例えば、気候変動によって自然災害が頻発している昨今、防災・減災対策は喫緊の課題です。
公明党は2018年の党大会において、「防災・減災・復興を、政治・社会の主流に」との方針を発表し、それ以来、この国の防災・減災対策をリードしてきました。政府は同年から「防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策」を7兆円規模で実施し、2020年からは「防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策」を15兆円規模で実施している最中です。
これらの政府の対策は、いずれも閣議決定で策定されました。閣議決定はそのときどきの政府の判断によるものですので、政権が変われば継続されない可能性があります。そこで公明党は昨年の国会でこの問題を取り上げ、法改正を行うことで政府に中期の国土強靭化に関する実施計画の策定を義務付けました。
今年の夏は、線状降水帯の発生などによるゲリラ豪雨が日本各地で頻発しました。また、南海トラフ地震臨時情報が発表されるなど、巨大地震の発生に不安を覚えた人も多いはずです。豪雨による水害や土砂災害は、もはやどこで起きてもおかしくありません。今後30年以内に、南海トラフ地震は70〜80%の確率で、首都直下地震は70%の確率で発生するといわれています。今後は事前の備えがとても重要になります。公明党としても、引き続き国民の命と暮らしを守る防災・減災対策を進めてまいります。
真面目に働く人が報われる社会を
明年は戦後80年の節目を迎えます。結党以来、平和の党を謳ってきた公明党は現在、「平和創出ビジョン」の策定を行っており、来春には発表する予定です。
かつてに比べて、日本周辺の安全保障環境はとても厳しい状況になっています。先に平和安全法制の話を挙げましたが、その時々によって環境の変化に対応しながら国民の命と暮らしを守る安全保障・防衛政策を進めなければなりません。
平和を維持していくためには、まずは何よりも外交努力が重要です。政府に周辺諸国との積極的な対話を促していくとともに、公明党としてもこれまで以上に政党外交に力を入れていきたいと考えています。憲法に規定される専守防衛、そして非核三原則。我が党はこれらの方針を断固として堅持していきます。
国民の命と暮らしを守るためには、経済政策も欠かせません。物価を上回る賃金の上昇を継続し、経済の好循環を生み出してまいります。私の父親は、注文紳士服店を営んでいました。真面目に働く人が報われる社会をつくりたい。かつて、働く父親の背中を見てそう決意しました。一人の政治家としてその原点をいま一度、心に刻みこみ、日本と世界の未来のために、これからもさまざまな課題に全力で取り組んでまいる決意です。
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公明党代表/衆議院議員
石井啓一(いしい・けいいち)
1958年東京都生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業。建設省(現・国土交通省)を経て衆議院議員。現在、10期目。公明党政務調査会長、国土交通大臣、公明党幹事長などを歴任。