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一人ひとりと"対話"するような気持ちで歌います!

"うたのお兄さん"として、これまでたくさんの子どもたちと触れ合ってきた横山だいすけさんが、音楽を通して自身の人生をつづる初の大人向けソロコンサートを開催する。新たなチャレンジに込めた想いとは?
(月刊『パンプキン』2025年4月号より転載。撮影=後藤さくら スタイリング=吉岡ちさと ヘア&メイク=安藤千浪 取材・文=増沢京子)

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初のソロコンサート「My Songs Concert」

 元気いっぱいの笑顔によく通る美声。横山だいすけさんが爽やかなブルーのジャケットで現れると、周囲の空気が一変。清々しく温かな雰囲気に包まれ、自然に心が開いて、元気と勇気がわいてくる。常に言葉でなく空気を感じ取る子どもたちと、"みんなに会いたくてしょうがない!"という楽しい気持ちで接し続けてきた横山さんならではの力だ。NHK「おかあさんといっしょ」の"うたのお兄さん"に就任したのは17年前。当時3歳の子はもう20歳になる。

8年前、"うたのお兄さん"を卒業し、俳優としてドラマや映画に出たり、タレントとしてバラエティ番組にゲスト出演したりする一方、「世界(名)迷作劇場」などで全国を回り、現在も子どもたちとの触れ合いを欠かさない。そんな横山さんが今回新たにチャレンジしたのが、初のソロコンサート「横山だいすけ My Songs Concert 夢見る明日へ!」だ。

「"ちょっと大人向けのコンサート"と銘打ったのは、これまでやってきたファミリーコンサートは"だいすけお兄さん"が演じたり歌ったりするものでしたが、今回は大人の皆さんを中心に、横山だいすけ自身が"音楽と共に歩んだ人生"を歌で構成し、音楽がいかに僕の人生を彩り豊かにしてくれたかを語り、音楽を通して笑顔や元気や勇気を届けたかったからです。

 僕の人生のターニングポイントには、必ず歌や音楽がありました。トークと共に、そんな歌を入れていきます。"あっ、私もこの歌聞いてたな""この曲、好きだな"と感じてもらえるものがたくさんあると思います。それとは別に、今回の演目にはこれまで皆さんの前では歌ってこなかったクラシックやミュージカルなどいろんなジャンルの歌も入っているので、ぜひ楽しんでください」

音楽と共に歩んだ人生を歌で構成

 人生を振り返るとあまりにもたくさんの音楽と共に生きてきて、入れたい曲が次々浮かび、曲選びには苦労したという。「自分が歌いたい楽曲だけでなく、皆さんに元気になってもらうにはどういう曲を入れたらいいか。それを最初から最後までひとつのストーリーとして完成させるのが大変でした」

「星に願いを」をオープニングに、歌とのストーリーが展開していく。小学校で初めて合唱団に入り、合唱で好きだった歌、音楽大学に入ってクラシックに出会い、劇団四季に入ってミュージカルを知り、"うたのお兄さん"になって童謡を学び、卒業してポップスや演歌などいろんなジャンルの歌に挑戦……。2時間のコンサートに18~19曲が網羅されている。

「こういう音楽をやってきたから、こんな"うたのお兄さん"になって、さらに進化を続けている……。横山だいすけの心の真ん中にあるものはなんなのか? 僕が思う音楽とは? に行き着きます。僕の人生にふれて、皆さんの人生も振り返ってもらいたいと思っています。知っている歌を聞くと、"あのとき聞いたな"と当時の思い出が蘇るでしょ。

 大切なことは、音楽にふれたことで笑顔になれる、また明日からがんばろうと思えること。そんな一歩踏み出す背中を音楽で押せたらいいなという願いを込めて、"夢見る明日へ!"という副題をつけました。僕は高校生のころから"うたのお兄さん"になるのが夢でした。それを叶え、今でもいろんなことにチャレンジし続けられるのは、夢をもったからです。夢をもつとそこに向かってがんばれる。僕の生きざまにふれてもらうことで、"私もがんばってみようかな"とちょっと前向きになれるコンサートになったらうれしいです」

あらためて感じた生の音楽のもつ力

 一人でしゃべって歌うというソロコンサートは初めてなので最初はドキドキヒヤヒヤの連続。昨年11月にまず大阪で開催したが、小学生から年配者まで幅広い年齢層、しかもこれまで"だいすけお兄さん"を知らなかった観客も同じ空間で一緒に音楽を楽しみ盛り上がってくれたのは「初めて見る景色ですごくうれしかった」。演目の中でもイタリアのカンツォーネ「オー・ソレ・ミオ」と劇団四季のミュージカル「ライオンキング」のナンバー「終わりなき夜」は特に思い出深いという。

「前者は僕が学生のときに勉強して好きだった曲で、発表会で披露しただけだったのでちょっとちゅうちょしましたが、今回歌ったら皆さんが聞いたことのない声やふれたことのない雰囲気だったこともあってか、"ウワ~ッ"とすごい盛り上がりでした。

 後者は劇団四季に入ったら『ライオンキング』に出たいという夢があって、ずっと練習し続けていた曲でした。でもすごく難しい曲なので、歌いきれる自信がなくて。実際、劇団で披露する機会もなく、練習し続けただけで終わってしまった。

 でも劇団四季の同期が大阪公演を見にきてくれて、つらいときに励まし合った仲間たちが僕がこの曲を歌うのを泣きながら喜んでくれました。僕を支えてくれた仲間たちにちょっと恩返しができたかな」
 
音楽を聞くきっかけはテレビでもSNSでもいいが、足を運んで劇場で聞く生の音楽はまったく別物だという横山さん。

「その感動は一生心に残ります。今まで子どもたちに歌を届けてきて、"だいすけお兄さんの生の歌ってテレビとは全然違う! 感動しました! 涙が出ました!"って、子どもたちって自分の思っている以上の感動があったときに心が動くんです。子どもは言葉でなく表情や音色に動かされます。本当に感動したら笑顔になるし、楽しくないときは眠そう(笑)。だからこそ直球勝負。噓は通じません。そういうフィールドでずっとやってきたから、生の音楽の力がわかるんです。

 それを感じているからこそ人生を賭けてやり続けたいし、生きて生活していくことがすごく大変で芸術にお金を使うことが難しい今の時代に、"足を運んでよかった、また明日がんばろう"と思える空間をつくっていくことが僕の使命だと思っています」

 今回の東京公演の見どころは「"来てよかった!サイコー"って皆さんの心の叫びが聞こえるくらい、僕の人生を賭けて皆さんを笑顔にしたい! 目を合わせて音楽を共有し、語り合う。来てくださった一人ひとりとの対話だと思っています」と目をキラキラ輝かせる。

 自身も子どもができたことで、家庭を守るには時間と労力とお金がかかることをあらためて実感しているという横山さん。コンサートに足を運んでくれる人はいろんなことを調整し、切り詰めて来てくれる。だからこそ最高の思い出をプレゼントしたいと話す。

「人間、心に余白がなくなるとイライラしたり余裕がなくなったりします。豊かに生きていくには、お金じゃなく心が豊かであること。音楽で心に余白をつくることで、皆さんの人生の豊かさのちょっとしたお手伝いができればいいな。

 今は日本の多くの人たちが我慢して、苦しんで、もがいている。大人が元気になれば、子どもたちは必ず見ているし、それが日本の未来を明るくしていく力になると思います」

 最後に読者へのメッセージを伺うと、

「この記事を読んでいただき、僕がどんな気持ちでこのコンサートに臨んでいるかを感じてもらえたと思います」とにっこり。

「読者の皆さんが今日を、明日を笑顔でいることを願いつつ、僕もこのコンサートで笑顔の種をいっぱいお届けしたい。そしていくつになっても夢をもって!

 僕自身も"うたのお兄さん"を卒業したから終わりではなく、これを新しいスタートとしてがんばりますので、皆さんも1つでも2つでも夢をもってもらえたらうれしいです」

"うたのお兄さん"から"歌のエンタテイナー"へと羽ばたく横山さん。その心打つハーモニーに期待が膨らむ。

 

コンサート情報
MIN-ONスペシャル・ステージ
「横山だいすけ My Songs Concert 夢見る明日へ!」
開催日:4月5日(土) PM3:00
会場:東京・文京シビックホール 大ホール
料金:S席¥6500 A席¥6000
問い合わせ先:MIN-ONインフォメーションセンター
TEL:03(3226)9999
https://www.min-on.or.jp/play/detail_231645_.html

 

横山だいすけ(よこやま・だいすけ)
千葉県生まれ。国立音楽大学卒業後、劇団四季に入団し、「ライオンキング」などの舞台に出演。2008年からNHK「おかあさんといっしょ」の11代目"うたのお兄さん"に就任。歴代最長となる9年間務める。卒業後は、歌手、俳優、声優、タレントとしてコンサートやテレビ、映画、舞台、CMと幅広く活躍している。