【潮７月号の読みどころ】民衆こそ王者――池田大作とその時代

本当の創価学会はこうなんだ 箱根の研修所に６０人の小・中学生、高校生たちが集まり、初めて「未来会」が結成された。（中略）懇談で、池田はある男子高校生に「どこかで会ったことあるよね」と声をかけている。そのふた月ほど前、本部総会があった。「言論出版問題」をめぐって、池田がいわゆる「政教分離」を明言した。その男子高校生も、未来部の代表として総会に参加していた。杉原容子もその場にいた。「未来部は前のほうの席でした。大勢のマスコミの取材、カメラのフラッシュの中で、なぜ先生が謝らないといけないんだ、それはおかしいんじゃないかと思ったことを覚えています。あの講演の最中に、未来部の一人の顔を覚えておられたことにびっくりしました」（中略）と語る。箱根の研修所で、池田は語った。――（本部総会の折、新聞記者に対して）私は心から謝罪した。世間をお騒がせして本当に申し訳ありません、と。だけどその後に、本当の創価学会というのは、皆さんが思っているような学会ではないんです。21世紀になった時に、本当の創価学会はこうなんだということを、今の子どもたちが必ず証明してくれるでありましょう。それが本当の創価学会です。私はこのように啖呵を切ったんだよ――（『潮』2023年7月号 P.134-135） 〝生きて、生きて、生き抜くこと〟 膝詰めの懇談になり、学校の成績を聞く場面があった。学年で一番の子が多かったが、クラスで二番の子がいた。池田は「私は二番が好きだよ」と言った。その子は顔を上げた。親が病で倒れ、炊事、洗濯などの家事に追われる日々を過ごしていた。「なぜ二番が好きか。一番は、いつ追い越されるかわからない。だけど、二番はいつも『あの人を追い越そう』って思う。本当の青年の力というのは、『あの人を追い越そう』という気概の中で、本当の力が出て来るんだよ」「若い時は二番でいいんだよ」「お金がなくてもいいんだ」。池田はその子に「〝生きる〟って、どういうことかわかる？」と尋ねた。思いもよらない質問だった。「〝生きる〟っていうことはね、どんなにつらいことがあっても、どんなに悲しいことがあっても、生きて、生きて、生き抜くことを、〝生きる〟っていうんだよ」。そう言った後、「じつは私も、生き抜いているんだよ」と続けた。その子は思わず涙をこぼした。（『潮』2023年7月号 P.138-139） 〝「働きながら学ぶ子どもたち」の姿を思い浮かべながら〟 参加者の中には、今でいう「ヤングケアラー」の境遇だった子が何人かいた。近年、社会問題として注目されるようになり、全国で調査や対策が進んでいる。家庭の問題を、子どもが抱え込む。追い込まれる。学校生活も、日常生活も、まともに送れなくなる。大きな原因の一つは、その子の周りに、つらい実情を「相談できる相手がいない」という「孤立」である。彼らにとって創価学会は、そして池田という師の存在は、血縁でもなく、利害でも打算でもなく、孤立の地獄から抜け出して「生き抜く」ための、このうえなく強い「つながり」になった。池田は21歳の時、恩師である戸田城聖のもとで働き、子ども向けの雑誌を編集していた。初めて編集長を務めたのは、「冒険少年」の1949年8月号。その「編集室より」の冒頭に、こんな文章がある。〈楽しい夏休みが近づきました。明るい吾が家に、青い海に、緑の山々に、諸君の紅顔の微笑が目に見えるようです。 世の中へ出て働いている諸君も、輝かしい希望の前に張切って活動していることでしょう〉この雑誌の読者層は、中学生から小学生である。日本の敗戦から4年。子どもが働くのは当たり前の時代だった。21歳の編集長は、さまざまな事情で学校に満足に通えない「働きながら学ぶ子どもたち」の姿を思い浮かべながら、編集作業に取り組んでいたことがうかがえる。（『潮』2023年7月号 P.139-140）

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