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若者がもっと政治に関心を持つために、 制度と意識の変革を。

次代を担う若者の政治参加をどのように達成していくのか。若者の政治参加を促進する「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんと石井啓一公明党幹事長による対談。
(『潮』2023年10月号より転載。写真=富本真之、サムネイル使用イラスト=著作権者:Freepik

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21歳が議員を務めるデンマーク

石井 今回は若者の政治参加を促進する団体「NO YOUTH NO JAPAN」の代表理事である能條桃子さんとの対談です。

能條 よろしくおねがいします。最初に少し石井さんご自身のことを伺えればと思うのですが、子どもの頃はどういう少年でしたか。

石井 元気に遊んでいましたよ(笑)。近所の子と缶蹴りや鬼ごっこをやったり、女の子とはゴム跳びをやったり。勉強は歴史や地理が好きでして、中学・高校時代は地理クラブに入っていたんです。

能條 珍しいクラブですね。どんな活動をしていたんですか。

石井 地図上に書いてあるポイントを、コンパス(方位磁石)を使ってどんどん回っていくオリエンテーリングという競技に熱中していました。

能條 私は高校時代に登山部に入っていまして、山小屋に泊まりながら地図とコンパスをもって山を縦走したことがあります。

石井 トレッキングですか。同じような活動に熱中していたんですね。能條さんは学生時代から、若者の政治参加と投票率向上を促す社会活動に取り組まれています。登山から政治に興味が移ったきっかけはなんだったんですか?

能條 大学生だった21歳のときに、デンマークに留学したことがきっかけです。デンマークは20代の投票率が80%を超えていて、21歳の若者が国会議員になったりEU議会議員になったりしているんですよ。「政治は上の年代の人たちがやるものだ」と思っていたので、とても驚きました。日本の政治について文句を言っていると、デンマークの友人から「いい政治家がいないと思うなら、それはいい有権者がいないってことだよ」と言われちゃいました。

石井 強烈な一言ですね!

能條 留学中の2019年7月に、参議院選挙がありました。事前に在外投票の申請をしておかなければ、選挙が始まってからパッと投票できないことを知らなかったんです。「こうして投票に行かない人がいるから、投票率が低いんだな」と反省して、インスタグラムを使って政治と選挙の情報を発信する活動を始めました。選挙前に2週間限定でやろうと思ったら、たった2週間でフォロワーが1万5000人まで増えたんです。

石井 それはすごい。そのときの経験が、のちに「NO YOUTH NO JAPAN」の立ち上げへ発展していったんですね。

能條 フォロワーの皆さんから「生まれて初めて選挙に行きました」「友だちと初めて政治について話せた」と感想をもらいました。

石井 若い人は、政治と日常の距離が遠く離れているように感じているのかもしれません。だから身近な人と政治について話をするのが、なんとなく気恥ずかしくて遠慮してしまう。けれど、本当は政治と生活は地続きなんです。若者に政治に関心をもってもらおうという運動に取り組まれているのは、素晴らしいことだと思います。

 
デンマークの中学校を訪れた際、「政治家に会ったことがある人?」と訊いたら全員の手が挙がりました

 

政治意識を高める主権者教育

石井 それにしても、デンマークの20代の投票率が80%を超えているのはすごいですね(日本では国政選挙の投票率は全世代平均で50%前後、20代は30%台)。公職選挙法改正によって、2016年7月の参議院選挙から有権者の年齢を18歳まで引き下げました。18歳選挙権のスタートと並行して、小中学校や高校では主権者教育が行われています。

能條 私も主権者教育の講師として小学校へ講演しに行くことがあります。自分の意見を素直にバンバン言ってくれて授業はすごく楽しいのに「みんなが18歳になったら投票に行く?」と訊くと「いや、行かないと思う。面倒くさいから」と言うんですよ。

石井 政治への無関心が、親から子へ世代間で伝播してしまっている面もあるのでしょうか。

能條 そうです。50代の投票率が60%、40代の投票率が50%台、30〜20代の投票率はもっと低い。学校では政治的中立性が求められるので、主権者教育の場で先生はなかなか突っこんだ話ができません。では親が家庭で政治について深く話をするかというと、選挙の棄権率が5〜6割ですから、政治の話題なんてほとんど出ないのが現状でしょう。

石井 その一方で、選挙があると、投票所まで親子連れで出かける人もいます。選挙を棄権しがちな家庭の子どもは、大人が実際に投票に出かける姿を自分の目で見る機会がほとんどありません。

能條 かたやデンマークでは、小学生にも選挙の立候補者の話を聞いてくる宿題が出ます。広場には選挙小屋と言われる政党ごとのテントが張ってあって、候補者や議員もいます。そこに小学生たちが集まって熱心に話を聞いているんです。つまり、学校帰りに宿題をやりに来ながら政治家と接しているんですね。
 デンマークの中学校を訪れた際、「政治家に会ったことがある人?」と訊いたら、全員の手が挙がりました。むしろ「なんでこの人はそんな質問をするの?」という目で見られてしまいました。

石井 日本だとほとんど手が挙がらないでしょうね。

能條 給食の時間に政治家が来て、子どもたちと一緒にご飯を食べながら話をするのも当たり前です。たくさんの政治家から直接話を聞けば、世の中にはいろいろな意見をもった人がいるのだな、という事実がわかります。

石井 たとえ自分と異なる意見でも理解を示し、その上で自分の意見を堂々と主張する姿勢は極めて重要だと思います。能條さんたちの取り組みを通し、そうした文化が日本でも育まれることを期待しています。

 著作者:drobotdean/出典:Freepik

ボイス・アクションで実現した政策

石井 私はかつて公明党青年局(現・青年委員会)の一員として、携帯電話料金の値下げを求める署名運動に取り組みました。若者を中心に1352万人分もの署名が集まり、2000年に政府に届けました。
 2016年からは、公明党青年委員会が「ボイス・アクション」を実施してきました。全国の街頭でボードをもって立ち、今実現してほしい政策を若者から聞くアンケートです。私も昨年街頭に立ったところ、小さな子どもたちも喜んで参加してくれました。

能條 「ボイス・アクション」で要望が強かった政策のうち、実際に実現したものはありますか。

石井 直近では最低賃金の引き上げです。2016年と19年の「ボイス・アクション」で、公明党は最低賃金を全国平均1000円に引き上げるよう主張し、賛同の声を集めました。つい最近、時給を現行の961円から1002円へ上げる方針が決まっています。学生さんへの給付型奨学金の支給も、徐々に拡大してきました。
 ネット上の誹謗中傷対策のための規制強化、不妊治療への保険適用、出産育児一時金の増額(2023年4月より、42万円から50万円に)も、公明党が「ボイス・アクション」で訴えた結果実現した実績です。

能條 日本の政党の中で、若者の政治参加を促す「ボイス・アクション」のような運動を全国的に、しかも長年にわたって継続している政党は公明党しかありません。
 若者が声を挙げるのを待っているのではなく、議員や党員が街頭に立ち、若者のもとへ歩み寄って声を聞き取る。こういう地道な活動は、公明党が全国にきめ細かいネットワークをもつ組織政党だからできることです。自民党をはじめとする議員政党は、「ボイス・アクション」のような全国的な運動はなかなかできるものではありません。
 公明党は今年の統一地方選挙の重点政策に「こども若者議会」の設置推進を入れました。実は私は小学5年生のとき、神奈川県平塚市の青少年議会に出たことがあるんですよ。

石井 小中学生と市長や市職員が議論する模擬議会ですね。貴重な経験になったことでしょう。

能條 「自分たち子どもの声を聞いてくれる大人がここにいるんだ」と知った最初の機会でした。「こども若者議会」の設置を、ぜひ全国的に推進してください。平塚市だけでなく、あちこちの自治体で「こども若者議会」が開かれることを楽しみにしています。

 著作者:jcomp/出典:Freepik

クオータ制で男女格差を解消

能條 国際社会に比べてジェンダー・ギャップ(男女格差)が大きく性的多様性が乏しい日本で、公明党はジェンダー平等に率先して取り組まれています。公明党の地方議員は女性が多いですよね。

石井 全国に約3000名の公明党議員がいる中で、およそ3分の1強が女性議員です。

能條 国会議員となると、女性議員はまだそれほど多くありません。

石井 おっしゃるとおりです。そこはこれからの課題です。

能條 クオータ制(人種や性別などを基準に、議員の一定数をあらかじめ割り当てる制度)についてはどう思いますか。

石井 まずは政党の自主努力によって女性議員を増やし、同時並行でクオータ制の準備を進めていくべきだと思います。

能條 デンマークに留学していたとき、ちょうど政権交代が起きたタイミングだったんです。内閣の構成員が20人いて、30代の閣僚が8人、40代が8人、50代が2人という構成でした。

石井 それはずいぶんと平均年齢が若い。日本で女性閣僚の数を増やすためにも、まずは女性の国会議員の母数を増やすことが先決ですね。そもそも公明党は多様性を高めることについて積極的な立場です。2023年6月にはLGBT(性的少数者)理解増進法を成立に導くことができました。この次は選択的夫婦別姓の実現へ向けて尽力していきます。

能條 10年時間が経つと、今の若者も若者ではなくなってしまいます。「声を挙げたら政治が変わった」という成功体験をもつことができれば、10年後に30代、40代になってからも人々は政治への関心を失いません。政治に無関心な人が量産されないよう、公明党がスピード感をもって政策を形にされることを期待します。LGBT理解増進法の次は、同性婚の実現もぜひがんばってください。

石井 能條さんは被選挙権年齢を引き下げる取り組みもされていますね。

能條 日本では地方議会や衆議院議員の選挙は、満25歳以上であれば出馬できます。参議院議員は、満30歳以上でなければ選挙に出ることができません。2016年7月の参議院選挙のとき、自民党の公約に「被選挙権年齢の引き下げ検討」と入ったので期待していたのですが、その後立ち消えになってしまいました。

石井 被選挙権年齢の引き下げには、私も賛成です。同世代に近い人が立候補すれば、10代や20代の有権者の関心は高まるでしょう。多様な世代、多様な性別の議員が増えてさまざまな意見が議場で飛び交ってこそ、政治の文化はよりいっそう豊かになります。

能條 デンマークでは同年代の子が大学を休学して、地方議員や国会議員に転身する事例が普通にありました。被選挙権年齢が下がれば、日本でもそれと同じことが可能になります。議員の多様性が増せば「この人であれば自分の意見を政治に投影してくれそうだ」と共感する若い有権者が増えるのではないでしょうか。

 
まずは政党の自主努力によって女性議員を増やし、同時並行でクオータ制の準備を進めていくべきだと思います

 

石井幹事長はなぜ、政治家に?


能條 石井幹事長は建設省(現・国土交通省)の官僚出身です。いつごろから「政治家になろう」と考え始めたんですか。

石井 もちろん政治に関心はありましたが、まさか国会議員になるとは夢にも思いませんでした。官僚の世界で最後まで勤め上げるつもりでしたから。ある日「議員にならないか」とお声がかかり、悩みに悩んだ末、政治の仕事に取り組むことを決意しました。
 余談ですが、官僚時代に子育てに取り組んだのは貴重な経験でした。子どもが小さいころは私も仕事が忙しく、帰宅が真夜中になることもしょっちゅうでした。そういうとき、妻は子どもを抱いたまま寝ているんですね。ベビーベッドに置くと、すぐに泣き出しちゃうので。帰宅すると、妻と交代して今度は私が子どもを抱っこしながら眠りました。

能條 それで朝6時半とか7時に起きて、また仕事に行かれるわけですか。

石井 大変な時期でしたが、私が留守にしている間、妻がどれだけ苦労しているのか身をもって知りましたよ。

能條 霞が関の官僚もそうですけど、政治家も超長時間労働というイメージが強いです。「24時間365日、すべてを政治に捧げられる人でなければ政治家になれない」と感じている人は多いのではないでしょうか。
 家事や子育て、介護は妻に任せっきり。なおかつ選挙運動も家族に全面的にサポートしてもらう。こういう働き方だと、とても政治家が自分自身の幸せやワーク・ライフ・バランスを追求することはできません。「24時間働けますか」的な政治家像も、女性の参入を阻んでいる原因だと思います。

石井 たしかに普通の一般市民が参加しにくく、敷居が高いイメージは強いかもしれません。

能條 もちろん、政治家が「9時5時で仕事は終わり」というわけにはいかないと思います。そのうえで政治家の働き方改革や産休・育休の取得が進めば、若い人が「自分にもやれそうだ」と政治参加してくれるのではないでしょうか。未来へ向けてどういう政治のあり方が望ましいのか、議論を進めてほしいと思います。

 

「2040年問題」に対処する希望の政治


石井 2040年には、65歳以上の高齢者が4000万人近くまで増えることが予想されます。現役世代(15〜64歳)は7450万人(2021年)から5978万人まで減ると推計され、一人の高齢者を1.5人の現役世代が支えなければなりません。
 こうした時代を見据え、公明党は「安心と希望の『絆社会』2040ビジョン」を検討しています。少子高齢化社会の中で、どうやって日本社会の活力を保ち、社会保障の持続可能性を担保していくか。2040年には、能條さんをはじめ現在20代の人が社会の中心になっていきます。自分たちの将来をどう構築していけばいいのか。私たち公明党も若い人の声をしっかりと掬(すく)い上げなければなりません。同時に、若い人にもどんどん声を挙げてほしいと期待します。

能條 まずは被選挙権年齢の引き下げへ向けて、超党派で院内集会を開こうと計画しています。ぜひご協力ください。石井幹事長をはじめ、公明党の皆さんの活躍にますます期待しています。




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「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事
能條桃子(のうじょう・ももこ)

1998年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科修士課程修了。デンマーク留学をきっかけに、若者の政治参加を促進する団体「NO YOUTH NO JAPAN」を2019年に設立。


公明党幹事長/衆議院議員
石井啓一(いしい・けいいち)
1958年東京都生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業。建設省(現・国土交通省)を経て衆議院議員。現在、10期目。公明党政務調査会長、国土交通大臣などを歴任。