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公明党がリードする物価高対策と子育て支援。

「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」の理念を議員全員が共有する公明党。一丸となって取り組む日本の重要課題について公明党代表 山口那津男氏に伺った。
(『潮』2023年11月号より転載。写真=富本真之

 

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記事のポイント

  • 物価が高騰する現在、政府の補助は続けてほしいとの世論を受け止め、10月以降も燃料油と電気・ガス代の補助継続を決定した。

  • 政府の「こども未来戦略方針」が今後3年間方針どおりに進めば、子育て政策において世界トップレベルの給付水準が実現する。

  • 公明党が与党だから発揮できる最大の力の一つは、議員間のネットワークによって国から市区町村までの政策を連動させられる点。



意識すべきは生活者の視点


 物価高が続き、人々の生活に広範な影響を与えています。そもそも今般の物価高は、当初はコロナ禍から脱却する欧米諸国の経済活動が活発化し、輸入品が高騰したことなどに起因していました。そこにウクライナ危機による原油や小麦などの高騰が追い打ちをかけたのが昨年までの経緯です。

 それに対して、政府は緊急の物価高対策として燃料油の激変緩和措置を講じました。具体的にはレギュラーガソリン1リットルの価格を170円程度に抑える補助を実施し、これについては本年9月までの期限となっていました。もう一つは、電気・ガス代の負担緩和策です。これも天然ガスや原油の価格高騰を受けて実施したもので、本年1月に開始し、9月までの期限となっていました。

 今年に入ってから、物価高は食品を含めたさまざまなものに広がってきました。この半年間の消費者物価指数は日本銀行の目標である2%を上回り、3~4%の高水準となりましたが、これは政府として強く推し進めてきた賃上げの成果が出てきた面もあります。賃金の上昇によって価格転嫁が可能になり、賃金の上昇との好循環によるものという意味では、物価高の質も変わってきてはいます。

 確かに物価高に負けない賃上げの対応ができれば、それに越したことはありませんが、ここで意識しなければならないのは生活者の視点です。まず中小企業のなかには賃上げしたくてもできない企業が実態としてあります。また、非正規雇用労働者やアルバイトの方々に関しては、この10月で全国平均時給が1004円に引き上げられましたが、地域ごとに実行されるのは今秋以降になりますので、賃上げを生活のなかで実感できるまではもう少し時間がかかります。

 加えて、世の中は賃金で生活をしている人だけではありません。年金で暮らしている方もいます。さらに、ひとり親家庭、子育て世帯など、賃上げの恩恵を受けにくい人たちへの配慮も当然必要です。

 夏前の世論調査では、政府の物価高対策が十分でないと回答した人の割合が8割を超えていました。人々の一番の心配は、10月以降の燃料油と電気・ガス代の補助がどうなるかです。物価が軒並み上昇しているのだから、せめて10月以降も補助を続けてもらいたいという人々の切実な願いを、政治は受け止めなければなりません。

 

自公党首会談が転換点


 ところが政府のなかには、秋以降は涼しくなって電力需要が減り、消費者の負担も軽減するため、補助は9月いっぱいで打ち切ればいいという考えの人や、脱炭素の取り組みを進めるためには、ある程度の負担増はやむを得ないと考える人もいました。

 もちろんそうした考えも理解できますが、補助を続けてもらいたいという国民の思いがあるわけですから、私は7月の岸田文雄総理との党首会談の折に、10月以降も燃料油と電気・ガス代の補助を続け、それをなるべく早めに国民に示す必要があると申し上げました。

 そのときには、総理から特別に前向きな反応があったわけではありませんでしたが、それでも私は各所で補助の継続を訴え続けたのです。8月9日、再び党首会談が行われました。長崎で原爆が炸裂した時刻に合わせて2人で黙祷を捧げました。その場で改めて総理に同じことを申し上げると、総理は7月のときとは打って変わって前向きな反応をされたのです。

 その後、総理は与党に対して月内に緊急の経済対策の提案を指示し、自民・公明両党は8月30日に政府に緊急提言を行いました。そして、政府はその日のうちに自公の提言に沿って、ひとまずは年内いっぱいまで切れ目なく燃料油と電気・ガス代の補助を継続する旨を決定したのです。

 それでもなお、先般の内閣改造の際の世論調査でも、物価高対策への関心は依然高くなっています。そこで岸田総理は内閣改造のタイミングで、大胆な経済対策の策定を打ち出しました。具体的には、9月中に閣僚に柱立てを指示、10月中に内容を取りまとめるという順序です。その後に財源の裏付けとして、補正予算を提出することになります。

 先進国は物価高対策として金利を上げたため、景気が冷え込んできています。日本はその煽りを受け、輸出などに影響が出て、これから経済が停滞するリスクがある。そうしたなかで、賃上げが今年だけで終わらずに持続するように、また物価高を少し上回る賃上げにするのが、経済対策の一つの目標になるはずです。

 公明党としては、いまこそ国会議員と地方議員による強固なネットワークをフルに活用し、現場の声をしっかりと聴いて、的確なニーズを掴み取らなければならないと思っています。四月の統一地方選挙でフレッシュな人材も新たに誕生し、女性議員も増えています。新しい力を存分に生かして、実効性のある対策を準備してまいります。

 

著作者:senivpetro/出典:Freepik

 

公明党の提言が政府の方針に


 いま、世論調査などでも関心の高いもう一つのテーマは、子ども・子育て政策です。公明党は昨年11月に「子育て応援トータルプラン」を公表し、今年春の国会では、子ども・子育て政策を最大の課題に位置付けて議論しました。その結果、我が党のプランが大幅に盛り込まれた形で、政府の「こども未来戦略方針」が策定されました。この方針は加速化プランとして、今後3年間で集中的に取り組まれます。

 大きく3つの柱があります。すなわち①経済的支援、②サービスの拡充、③働き方改革――です。

「経済的支援」では児童手当を拡充し、これまで中学3年生までだった受給対象を高校3年生まで広げます。所得制限は撤廃し、第3子以降は給付額を月3万円に増額します。さらには、医療費も全国一律に高校3年生までの無償化を進めます。

「サービスの拡充」については、0~2歳までを含めた「こども誰でも通園制度(仮称)」をつくります。現状では0~2歳のお子さんは、親が就労していなければ保育園に預かってもらえません。しかし、働いていなくても臨時の用事や体調の不具合など、預けたいニーズはある。以前から、どんなライフスタイルであれ、預けたいときに預けられる環境整備が求められてきました。具体的には、保育園の定員の拡充や保育士の増員や処遇改善を進めます。

「働き方改革」では、育児休業給付の給付率を、これまでの休業前の手取りの8割から、10割まで引き上げます。また、現状で取得率が2割程度にとどまっている男性の育児休業を、女性と同程度の8割まで水準を高めるための取り組みを行います。

 3年間でこれらの集中的な取り組みが方針どおりに進めば、OECD(経済協力開発機構)諸国のなかで子育て政策のトップレベルといわれているスウェーデンと同じ給付の水準になります。3年間でやり切れない支援策も出てくるでしょうから、その後の取り組みの提案もすでに行っています。おおよその方向性は「こども未来戦略方針」で策定されていますので、財源の裏付けのもと一つ一つ着実に実現していくことが重要です。若い人々が安心できるよう、また自分も子育てをしようという意欲を後押しできるよう、公明党がしっかりと議論をリードしていく決意です。

 先述のとおり「こども未来戦略方針」には公明党の「子育て応援トータルプラン」が大幅に盛り込まれています。こうしたきめ細かなニーズを的確に捉えた政策は、全国的なネットワークを擁する公明党の真骨頂と言えます。他党ではなかなかここまできめ細かなニーズを掴み切れません。

 

着実に実現してきた大衆福祉の理念


 公明党の政策には、緊急事態に対応する即効性のあるものもあれば、日本社会の先々を見て中長期的に着実に進めている取り組みもあります。とりわけ社会保障分野における取り組みは、これまでにいくつもの大きな実績を残してきました。

 公明党は1964年の結党時に「大衆福祉」というスローガンを掲げました。当時はまだ「福祉は政策ではなく施しだ」といわれていた時代です。それでも公明党は大衆のために福祉の旗を掲げ、76年には「福祉社会トータルプラン」というビジョンを掲げました。年金・医療・介護が国民皆保険として定着するまでには長い年月を要しましたが、いま諸外国を見渡しても、ここまで公平平等に整った国民皆保険制度を持つ国はほとんどありません。そうした日本の大きな特徴を築いたのは、公明党の中長期ビジョンに基づく取り組みだったのです。

「社会保障と税の一体改革」の際には、公明党が2006年に公表した「少子社会トータルプラン」をもとに、子育ても社会保障の柱にするべきだと訴えました。それ以前の子育て政策は、児童手当や乳幼児の医療費無償化など、状況に応じて部分的な施策を積み重ねてきたのです。

「社会保障と税の一体改革」は、消費税率を2段階で引き上げて、社会保険の安定財源を確保する取り組みでした。国民の皆さんに負担をお願いするわけですから、丁寧に訴えてご理解いただきつつ、低所得層への逆進性緩和策として、食料品などに関しては公明党の訴えによって軽減税率を導入するなど、負担を軽くするための政策を断固として推し進めて実現することができました。併せて、安定した財源の使途を変更して、日本の将来を担う子どもたちのために教育の無償化などを大きく拡充することができたのです。

 昨年公表した「子育て応援トータルプラン」は、その延長線上にあるもので、妊娠・出産から高等教育を終えて社会に巣立つまで切れ目なく続く支援策の構築を目指しています。子育ての重要性はどの政党も訴えていますが、ここまで具体性を帯びた包括的な政策を提言したのは公明党だけです。こちらも必ず実現してまいります。

 

著作者:Freepik

 

生命・生活・生存を尊重する人間主義


 有権者の皆様の信任のもと、公明党が連立与党となって通算で20年が経過しました。私たちが与党であるからこそ発揮できる最大の力の一つは、国会議員と地方議員の約3000人のネットワークによって、国と都道府県と市区町村の政策を連動させられる点です。

 一例として、先程、政府の物価高対策の話をしましたが、地方議員から「学校給食が大変だ」との声が聞こえてきました。原価が高騰しているものの、給食費は役所の予算で決まっているため、すぐには値上げができません。かといって、保護者に負担を求めることもできないし、子どもの栄養のために給食の量を減らすこともできず、業者が倒産の危機に瀕しているというのです。

 このような物価高に伴う課題の内容は地域によって千差万別です。私たちはそうした声を受け、政府として予備費を活用して物価高対策に使える地方創生臨時交付金を都道府県や市区町村に配ることで、それぞれの自治体で対応してもらうことにしました。

 地域ごとのニーズを的確にキャッチし、国と連携して課題を解決する。こうした事例は枚挙にいとまがありません。まさにネットワーク政党である公明党にしかできない強みであると思います。

 ある有識者の方は公明党を「価値観政党」と評価してくださいますが、私たちは共有する理念を「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」という言葉で表現します。こうした普遍的な人間観、社会観、ひいては宇宙観が具体的な政策に反映されていくのです。

 先日はアフリカのとある国の大使が、公明党本部を訪ねてきました。大使からは次のように言われました。「公明党はとても大切な理念を掲げており、それは私どもが求めているものと一致している。そうした理念を持っている政党は、日本では公明党以外に見当たらない」と。生命の尊重を理念として掲げる政党が日本の政権与党にいることで、国内外の幅広い信頼に結びつくことを改めて感じました。

 公明党がしっかりと政治を担ってくれていることが安心と希望につながる――私たちはこれまでもこれからも、皆さんにそう実感してもらえる存在でありたいと願い、行動を続けています。

 

平和を維持する人的ネットワーク


 日本とASEAN(東南アジア諸国連合)の友好協力関係は今年で50年を迎えました。公明党は8月に公式な訪問団を結成して、フィリピン・インドネシア・ベトナムの3カ国を訪問し、各国政府の要人らと会談などを通じて友好関係を深めることができました。各国要人との会談では主に次の3つのことがテーマになりました。①さらなるインフラ整備の支援、②人材の交流・育成の促進、③「法の支配」に基づく国際秩序の形成――です。

 特に「法の支配」に基づく国際秩序の形成については、海上交通路の安全確保のため、各国の海上保安機関の連携を強化することで一致しました。各国ともに経済力が増し、輸出量も増えているため、海上交通路での事故や海賊・密輸の被害の対策が大きな課題となっているのです。

 実は、日本にはアジア諸国から海上保安機関の幹部候補職員を招き、高度な研修と人的ネットワークの構築を実施する「海上保安政策プログラム」があります。この制度は公明党としても力を入れ、私は立ち上げの段階から携わりましたので、フィリピンの沿岸警備隊を視察すると、見知った顔の方が最高幹部になっていました。

 彼らは「日本で他の国々の人と一緒に寝食をともにして学んだことが役に立っている。力には力ではなく、法に基づいて冷静沈着に行動することで信頼を生み、他国との衝突を防いでいる。日本にはこうした取り組みを続けてもらいたい」と言われました。日本が人材育成によって幅広い国際ネットワークを構築することが平和に大きく寄与しているのです。国際秩序の平和と安定のために、公明党はこれからも日本の政治をリードしていきます。



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公明党代表/参議院議員
山口那津男(やまぐち・なつお)

1952年、茨城県生まれ。東京大学法学部卒業。弁護士。90年、衆議院議員に初当選。2001年より参議院議員(現4期)。防衛政務次官、参議院行政監視委員長、党政務調査会長などを経て、09年9月より公明党代表。