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柴田理恵 心でつながる人づきあい

いま実感しているのは 母への思いを素直に言えるようになったこと――。

 富山に住む母の遠距離介護をしていることでも知られている俳優の柴田理恵さん。昨年秋には、その経験を踏まえ『遠距離介護の幸せなカタチ』(祥伝社刊)という著書も出版した。
 柴田さんは、母の介護を通して、母子の関係も、自分自身の母への思いもよりよく変わったと話す。
(『パンプキン』2024年4月号から転載。撮影=雨宮 薫 取材・文=鳥飼新市 スタイリング=高橋めぐみ ヘア&メイク=松本吉枝)
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 富山の実家でひとり暮らしをしていた母・須美子の遠距離介護を始めて、もう7年。きっかけは、母が突然の病で入院したことでした。

  今年95歳になる母は、とても気丈でエネルギッシュです。入院するたびに驚異の回復力をみせ、退院して実家に戻り、ひとり暮らしを重ねてきました。しかし、ここにきて体調を崩し、しばらくは病院暮らしを続けています。
 最近は本人も少し弱気になり、自分はもうひとりでは住めないかもしれない、と口にするようになっています。「人の手を借りることが多くなって……もう無理かもしれんね」と。
 ただ、ずっと小学校の先生をしてきただけあって若い人たちが大好き。かつての教え子のような、まるで孫みたいな看護師さんたちに囲まれて賑やかに過ごしています。
 いまは個室に入っていますが、本人は「個室はイヤだ。大部屋に移りたい」と言うのです。自由に話ができる相手が欲しいんでしょう。人好きなところも変わっていません。

 コロナのときはリモートでしたが、昨年「三密」の行動規制が解けてからは2週間に1回くらいは訪ねていました。
 でも、5月に海外ロケや、地方公演が始まり、なかなか会いに行けなくなりました。公演先からリモートで「お母さん、ごめんね。舞台で行けなくて」なんて言うと、母は相変わらず「いいよ、いいよ。仕事が大事だ」と言ってくれるのです。本当にありがたいなと思います。
 母がひとり暮らしをしているときに、こんなことがありました。夏の暑い時期に冷房もつけずに母が家にいたんです。熱中症一歩手前です。
 たまたま遊びにきた近所の人が母が「しんどい」ってグッタリしていたのを見つけてくれたんです。慌てて冷房をつけ、「大丈夫?」と冷蔵庫から氷を出して体を冷やしてくれました。まさに危機一髪です。

周りの人たちに助けられ 遠距離介護は始まった

 事の始まりは〝いとこの息子〟からの電話でした。
「理恵さん大変だ! おばちゃんが入院することになった!」