【潮12月号の読みどころ】特別企画ほかオススメ記事
2024/11/05
【特別企画】「内憂外患」ニッポンの船出
「政治とカネ」の早期決着が安定政権を築く最良のカンフル剤だ(P.32~)
牧原 出(東京大学先端科学技術研究センター教授)
◆10月9日に行われた石破茂首相と立憲民主党の野田佳彦代表の党首討論では、紳士的な論戦が展開された。もはや国民は「糾弾と挑発」の政治論戦を求めていない。どうすれば「政治とカネ」の問題を解決できるのか。野党が与党の足を引っ張ってばかりいては、政治改革も財政再建も前には進まない。
◆自民党の裏ガネ問題について国民は心底呆れている。また、節約しながら生活している消費者が、法外な金額を裏帳簿化していた議員に激怒するのも当然だ。来年の参院選で有権者から厳しい審判を受けたくないならば、自民党は2025年1月から始まる通常国会で第三者機関の設置について詳細を詰めるべきだ。
◆安全保障と社会保障を支えるための増税が、近い将来政策課題に載る日が必ずやってくる。「政治とカネ」の問題がくすぶっていては増税などできない。だからこそ、裏ガネ問題を早く解決すべきだ。自公政権が今後も存続できるかどうかの天王山は、2025年7月に予定されている参議院選挙だ。
【連載】鎌田實の「ガラスの天井」を破る女性たち 第6回
遠い日本からでも、「平和」のためにできることがある(P.48~)
鎌田 實(医師/作家)/ゲスト・中満 泉(国連事務次長・軍縮担当上級代表)
◆好評の連載企画「鎌田實の『ガラスの天井』を破る女性たち」。4人目のゲストは、日本人女性初の国連事務次長として軍縮上級代表を務める中満泉さん。国連難民高等弁務官事務所に入職して以来、紛争地で常に危険にさらされながら働いてきた。一方で中満さんは、「紛争地では女性であることが、マイナスよりもプラスに作用した可能性があります」と語る。
◆紛争地における国連の立ち位置は、ニュートラルではなく明確なプリンシプル(原理原則)がある。それは国連憲章であり、国際法だと中満さんは述べ、国際法に基づいた不偏不党の立場こそが国連の〝武器″だと語る。さらに中満さんは、現在の世界情勢に対して「見たことがない危機的な状況」と語り、「20代の娘たちの世代の将来のためにも、少しでも状況を好転させたい」という言葉から、本然的に平和を希求する母親としての顔が鎌田さんには垣間見えたという。
◆鎌田さんが、紛争が激化しているガザやウクライナの厳しい状況に対して、遠く離れた日本の一人一人にできることは何かと尋ねると、中満さんは憎悪を煽るSNSの問題を指摘しながら、一人一人が今いる場所で、対立ではなく共通項を探ることが大切だと答えた。次号では、中満さんが女性国連職員として紛争地で苦労したことや、仕事と家庭の両立をどのように成し遂げたかなどについて掘り下げていく。
紫式部と藤原道長が〝愛した″法華経――『源氏物語』の本質に迫る(P.102~)
東 晋平(文筆家/編集者)&西田禎元(国文学者/創価大学名誉教授)
◆王朝文学を専門とする国文学者・西田禎元氏と、日本文化と法華経の関わりを論じた『蓮の暗号』の著者・東晋平氏に「平安貴族と法華経」をテーマに語り合っていただいた。東氏は、現在放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」では〝あること〟が完全に省かれていたと指摘。それは、主人公・紫式部や主要な登場人物たちが法華経を熱心に信仰していたという事実だという。
◆摂関政治において大きな役割を果たした藤原道長だが、法華経の教説に基づく演劇などを開催するなど、法華経を宮廷社会に根付かせた大功労者ではないかと東氏は語る。また、西田氏は法華経を題材にした和歌(釈教歌)をいくつか紹介しながら、こうした楽しみ方ができることについて、当時の貴族にとって法華経二十八品が共通教養だったからだと論じた。
◆両氏によると、『源氏物語』の構成や設定にも法華経の影響がみられるという。西田氏は、作者・紫式部の法華経に対する理解は教学的な面まで含めて非常に幅広いと指摘。東氏は、『源氏物語』が今なお日本や世界で読まれているのは、物語の骨格から細部まで、法華経という深遠な叡智に基づいていることが大きいと述べる。さらに東氏は、平安の法華文化が16・17世紀になると法華衆の芸術に影響を与えたのではないかと独自の分析を披露した。
【新連載】2030年への羅針盤――「若き日の日記」を読む①
21世紀に蘇る「命の書」(P.138~)
佐藤 優(作家/元外務省主任分析官)
◆本年5月から創価学会の機関誌『大白蓮華』にて「若き日の日記〈選集〉」の連載が掲載されている。「若き日の日記」には、池田大作創価学会第三代会長が戸田城聖第二代会長の構想を実現するために奮闘した青春の記録が綴られている。本誌でも「若き日の日記」の解説記事を、今号から新連載としてスタート。作家の佐藤優氏が、創立100周年となる2030年に向けて世界宗教としての道を歩む創価学会の思想基盤に迫っていく。
◆『大白蓮華』で、「若き日の日記」が新たな編纂による連載が始まったことの特別の意味とは何か。変動する社会のなかで世界広宣流布への動きを加速していくために、池田会長の基盤を形成した青年期の宗教的エトス(倫理・信頼)とパトス(情熱)から学ぶことが重要になると指摘。つまり、「若き日の日記」は単なる書物ではなく、信心の糧となる「命の書」であると佐藤氏は語った。
◆また佐藤氏は、創価学会が「御書根本」「日蓮大聖人直結」であることに注目し、『大白蓮華』での池田会長の講義を通して「創価学会の教学」が形成されてきたと分析する。最後に、「若き日の日記〈選集〉」の冒頭に記された池田会長の言葉を引用して、真実の追求こそが創価学会員をはじめ全人類に通じる普遍的価値観であると強調した。