【潮1月号の読みどころ】特別企画ほかオススメ記事
2024/12/05
【特別企画】「分断」と「不信」超克へのロードマップ
“103万円の壁”に抜け落ちている「共に生きる」哲学(P.48~)
井手英策(慶應義塾大学教授)
◆先の衆議院議員選挙を経て、話題になっている「103万円の壁」について財政学者の井手英策氏に伺った。井手氏は、一部の議論を見ていると、税について基本的な無理解があるように思えてならないと語る。まず、「手取りを増やす」政策について考えると、その方法には①賃上げと②給付や減税がある。井手氏は、予算が大きくなる②を行う場合、代替財源の議論を避けるのは無責任だと喝破。
◆井手氏は、現在の日本社会に本当に重要なものとして「共在感」を強調する。この共在感があるからこそ社会は成り立ち、財政は成立する。そして井手氏は、「全体としてどこまで保障し、満たしあうのか」について議論することが、政治家が果たすべき責任だと述べた。また、最初に税で賄うべき大切なものを決めることが重要だ。その上で、命はすべての人に保障されるべきであり、そのために必要なものはすべて無償化にするべきであると井手氏は主張する。
◆「消費税の5%減税」「消費税全廃」を唱える政党もある。しかし、バブル崩壊後の日本では減税を繰り返しても景気は良くならず、むしろデフレ経済に陥った。理念や哲学抜きに景気対策として減税を主張するのは本質を見誤っている。そうした中で、公明党が2024年9月に発表した「2040ビジョン」の「中間とりまとめ」では、〈ベーシックサービス〉を中核のひとつに据え、財源は「共に生きる」原理として重要視されており、財源論から逃げない公明党のビジョンは一筋の希望の光だと井手氏は評価した。
いま政治家に求められているのは「覚悟」です(P.64~)
杉 良太郎(歌手/俳優)&安江伸夫(公明党参議院議員)
◆「遠山の金さん」をはじめ数多くのドラマや映画で主演を務めた杉良太郎さん。杉さんは法務省特別矯正監、警察庁特別防犯対策監を務め、受刑者の矯正教育や防犯対策といったさまざまな施策に実務的に取り組んでいる。今号では、日本各地で問題となっている「闇バイト」や、防犯などをテーマに、弁護士で公明党国会議員最若手の安江伸夫さんと対談していただいた。
◆特に高齢者が被害を受けている特殊詐欺が問題視されているが、政府の犯罪対策の方針は各省庁の末端まで浸透していない。杉さんは、自ら全国の警察署を根気強くまわり、意見交換会を開いているという。そして、一般の住民目線、現場感覚に基づいて、さまざまな提言を行ってきた。こうしたご自身の生き方には「すぐに実行する」公明党に似ている部分があると杉さんは語る。
◆近頃の政治家は保身ばかりを考えていると断じる杉さんは、他者のことを思いやるという政治の基本をやってきたのが公明党であり、さらに頑張ってほしいと叱咤激励。安江さんは、政治不信が極まる今こそ、立党精神に立ち返り、覚悟を持って働いていくと応じた。対談の最後では、政治家の3つのタイプに触れながら、安江さんには「すぐに実行する人」であってほしいと期待を語った。
【特集】SNS社会の“ジレンマ”
私の“関心”は自分で選ぶ! ネットに吞み込まれない生き方(P.80~)
山本龍彦(慶應義塾大学法科大学院教授)
◆グーグルやアマゾンといった巨大プラットフォーム企業は、「情報空間の統治者」と呼ばれている。これらの企業が提供するプラットフォーム上においては、新聞などの報道であっても、個人のコメントや根拠の乏しい情報、さらにはデマまでがすべて横並びで競争しなければならない。こうした世界は、貨幣の代わりに私たちの「関心」(アテンション)を交換財としてやり取りする、アテンション・エコノミーというビジネスモデルによって成立している。
◆アテンション・エコノミーでは、いかに利用者の関心や時間を「奪うか」が重要であるため、ビジネスとして中毒的、依存的な状況をつくり上げることが必要になる。そのため、私たちの自立的な意思決定が巧妙に侵害されてしまう。人間の思慮深さではなく、情動的・感情的・反射的な面を増幅させるアテンション・エコノミーというビジネスモデルは、「人間が人間のことを嫌いになってしまう仕組み」。それによって、社会に分断が生まれていると指摘する。
◆アテンション・エコノミーにはAI(人工知能)の分析が用いられており、その最大のリスクは、人間の自律的な意思決定の疎外、すなわち”心の操作”だ。人々に快楽と刺激を与え続け、我々の心を統治しようとするプラットフォーム企業は、新たな権力である。AI規制を進める欧州から学びながら、日本国憲法の基本原理をもとに議論を進めていくべきだと語る。その上で、個人としては情報の「偏食」を避け、バランスよく「情報的健康」を意識していくことが肝要であると述べる。
【人間探訪】小堺一機(P.112~)
◆今号では、コメディアンの小堺一機さんが登場! 小堺さんが司会を務めたお昼の長寿番組「いただきます」と後継の「ごきげんよう」は、ゲストとの軽妙なトークが人気をよんだ。そんな小堺さんの芸能人生の転機には、往年の名優である故・勝新太郎さんや、小堺さんが大将と慕う萩本欽一さんからの金言があった。
◆小堺さんは、1979年に俳優養成を目的に立ち上げられた勝アカデミー第1期生として演技の基礎を学んでいた。その頃に勝さんから「自分ひとりだけで役作りをすると、現場の空気感と違ってくる」という警句を授かる。テレビの大ヒット番組「欽ちゃんのどこまでやるの!」にレギュラー出演するようになって約1年が経ったときには、萩本さんから「お前は一本立ちできないな」と言われてしまった。
◆その後「いただきます」の司会に抜擢されたが、視聴率は予想外の低迷を続けた。そうした中で、小堺さんは堺正章さんの一言をきっかけに、独りよがりな損得勘定とは正反対の勝さんと萩本さんの教えを掴み取っていった――。小堺さんが語る、スターたちとの心温まるエピソードをお楽しみいただきたい。