分断から協調へ "自他共の幸福社会"を実現するのは公明党
2025/01/10公明党参議院議員 矢倉克夫さんが挑む社会全体が「明日に希望が持てる」ようなビジョンと政策実現について語っていただきました。
(月刊『潮』2025年2月号より転載)
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物価高を乗り越えるための緊急的な対応
長引く物価高による家計の圧迫から、いかにして国民の生活を守るか――。国民の命と暮らしを守るという政治の使命を踏まえれば、現下の日本社会において最重要の課題です。
物価高対策については、おもに二つの軸が必要だと考えています。一つ目の軸は緊急的な対応です。いまの物価高のおもな原因はコストプッシュです。為替相場やウクライナ紛争などの外的な要因でエネルギーや資源・原材料費が高騰しコストが膨らんでしまっており、国内の人手不足による供給力の低下がそれに拍車をかけ、そのまま消費者に転嫁されてしまっている。
本来、目指すべき物価の上昇は企業の利益を増やし、それを賃金アップにつなげるためのものですが、いまの物価高はそうした好循環をまだ十分に生み出せていません。ゆえに、家計を支える緊急的な対応が必要なのです。
公明党としては、かねて低所得世帯への給付金の支給はもちろんのこと、幅広い層への支援を訴え、具体的には、自治体が独自の物価高対策に使える重点支援地方交付金の充実を求めてきました。
物価高で大変な思いをしているのは、「すべての人」だからです。とりわけ中間層支援は、私が党青年委員会委員長であったとき、繰り返し政府に申し入れしたことでもあります。
合わせて、昨年12月6日の参議院予算委員会において私は、固定費削減という観点から住まいの負担軽減、特に賃貸支援を訴えました。現役世代を中心に持ち家比率が下がり、また、年金生活者の家計に占める住居費の割合も増えていることから、従来の持ち家政策のみでは十分とはいえないと考えるからです。
中野洋昌国土交通大臣から、賃貸に関しても「住まいの確保を支援する必要がある」との認識を示していただきました。各自治体が行っている住宅支援のような施策への国としての支援や、将来的な「住宅手当」の創設も含め、具現化するための議論を、しっかりと展開していきたいと考えています。
物価高対策における二つ目の軸は、賃金上昇への好循環の創出です。この物価高を企業の収益につなげ、賃金上昇に結び付けていく対策を打つ必要があります。その根本は、中小企業が賃上げできる環境の整備です。
ここしばらくは毎年、大幅な賃上げが報道されていますが、労働分配率(企業が生み出した付加価値のうち、人件費が占める割合)がまだ5割程度の大企業に比べ、中小企業の労働分配率はすでに8割弱。目一杯賃金をあげている企業も多く、より多くの生活者の賃上げを実現するためには、中小企業の賃上げ原資、つまり、儲けの拡大が必須です。
これまでにも、賃上げを促す動機付けとして、「賃上げ促進税制」を赤字企業にも適用するなどの対応をしてきました。しかし、中小企業の賃上げ原資を本当に確保するためには、大企業との取引における価格の適正化など、根本的な対策が必要となってきます。
残念なことですが、未だ大企業と中小企業の取引の現場では、買い叩きが横行している現実があるのです。大企業の利益は上がっているという統計もありますが、その背景には原材料などのコスト増を下請け企業が背負っている面もあります。中小企業が価格転嫁をできる環境こそ重要です。
こうした問題意識は、先の参院予算委員会で私が行った質疑において、中小企業庁だけでなく、公正取引委員会とも共有できました。公取から、現在、中小企業庁と共同で、下請法の改正に向けた検討を進めているとの答弁もありました。より前面に立って進めていただきたいと思います。
先の参院予算委員会では、各種子育て支援策などにおける「所得制限の撤廃」も訴えました。なぜなら、所得制限撤廃を足がかりとして、支え合いの協調社会をつくりたいと思ったからです。
先日、高校生の子どもを持つ親御さんから、「税も社会保険料も上がって、負担が増えていくのに、収入が増えればあるとき突然、所得制限によって支援が打ち切られてしまう。国はもっと弱者以外も支援してください」とのお声が寄せられました。
もとより所得制限そのものは財源の問題などから現実的に必要な場合もあることは否めません。しかし、こうした現役世代、中間世代の切実な声の奥に、人と人の間の分断につながる現実の懸念があれば、政治はしっかりそれを受け止め、変えていかなければなりません。
分断ではなく協調のために
そもそも、国家とは何のためにあるのかといえば、国民が互いに支え合い、「共通の利益」を実現するためです。そのために国民の皆様に税を納めていただき、それが「共通の利益」のために使われると実感していただくことで、国民相互の支え合いの基盤をつくる。それが国を支える礎にもなります。しかし、それが分断や対立によって奪い合いのようになってしまえば、国そのものがおかしくなってしまいます。
公明党が掲げるべきは"自他共の幸福社会実現"という理念だと考えています。公明党の斉藤鉄夫代表も、新代表就任のあいさつで「分断から協調へ」を強調されましたが、私はこの点こそが、これからの日本政治のなかで公明党が担うべき大きな役割だと考えています。
もちろん、政治はただ理念を訴えるだけではなく、現実の制度にその理念を浸透させていかなければなりません。その理念実現のための政治的手段の一つが、先述した所得制限の撤廃だと私は考えます。なぜなら、それにより負担が自分を含めた「すべての人」の受益になるからです。
様々な立場の人々が社会のなかで共有しあえる"共通の領域"を広げていくことが、公明党の重要な政治的使命です。公明党がかねて推し進めてきた全世代型社会保障は、すべての人のそれぞれの人生の段階で生じる将来不安をなくそうという思いから出発しています。
昨今の政治や社会は、ともすれば自己責任論的な発想に傾いてしまいがちです。これが行き過ぎると弱い立場にいる人は落伍者のように扱われ、ひいては弱者叩きにつながります。こうした自己責任社会の発想から脱却し、皆が支え合う実感を持つためにも、生まれたときから亡くなるときまで基礎的なサービスは皆の分かち合いの負担のもと国が支援し、「すべての人」が支え合い安心して暮らせる社会の在り方に変えていかなければなりません。
ビジョンのもとで若者を糾合していく
若い世代の方々含め現役世代の皆様と話したとき、公明党に、未来に向けた大きなビジョンを示してほしいと期待されていることを強く感じました。とかく無関心と言われがちな現在の若者ですが、実は自分たちも社会をつくっていく主体者であり、自分たちも政治に参画したいという思いが強いです。政党には、私たちはこうした社会をつくりますというビジョンを示し、有権者に一緒につくりましょうと呼びかける姿勢が求められると思います。
党青年委員会委員長であったとき、ボイス・アクションという取り組みを行いました。議員と青年たちが一緒に街頭に立ち、街の人々の実現してほしい政策を調査するもので、それによって実現した政策も数多くあります。
当然、実績は重要ですが、私はあのときに青年たちと一緒に動き、一緒に街の声を聴いたプロセスが大きな財産だったと思います。より確たるビジョンのもとで若者を糾合し、若者の主体性に応える取り組みを、さらに加速させてまいります。
一方で、公明党のそうした理念やビジョンを多くの方にご理解いただくための情報発信の仕方については、今まで以上に工夫や努力が求められることを痛感します。
近年、不満を抱える有権者に寄り添うふりをしながら怒りを煽り、国民のなかでの対立や分断を加速させる政治手法が国内外で見受けられます。非常に危機感を覚えています。こういった分断を煽る声に押し流されてしまっては断じてならない。
私たち公明党は対立や分断を煽るような手法ではなく、協調というメッセージを伝えるためのSNSの活用の仕方を模索していかなければなりません。
公明党議員の真骨頂は中道主義に基づく合意形成力です。皆が現場に入って、目の前の人の思いをしっかり受け止め、その人のために何ができるのかを真剣に考えていく。私自身、日々苦闘の連続です。しかし、悩みぬくなかでそちらの意見とこちらの意見の共通点を見出して答えを出していく――。
そうした公明党議員の対話力、合意形成力を国民の皆様に見知っていただくことが、分断を生もうとする勢力への対抗手段となりえます。そのためにSNSでどういったことができるのか、文字だけでなく動画による発信も今後さらに強化していきます。
理念を、広く国民の皆様と共有するためには、政治の言葉の力が欠かせません。いよいよ公明党の哲学理念に基づいた「言葉の力」が試される時代が来たという実感を抱いています。党内のみならず、外部識者の意見もしっかりと聴いて、私たちの理念を具現化してまいります。
政治家としての原点
分断は日本国のみならず、世界的な課題となっています。政党外交にも力を入れてきた公明党の一議員として、改めて肝に銘じたいことがあります。それは党創立者・池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長のイデオロギーを超えた"人間外交"です。
中国とソ連の緊張関係が戦争につながりかけていた1970年代に、党創立者は中ソを相次いで訪問し、中国の周恩来総理やソ連のコスイギン首相と会談を行いました。利害やイデオロギーではなく一人の人間として対話をすることで両国のあいだを取り持ったのです。党創立者のそうした哲学・姿勢にいま一度立ち返り、引き続き政党外交には力を入れていきたいと考えています。
平和政策に関して、もう一つ欠かせないのは核兵器廃絶の取り組みです。青年委員会の委員長をしていたとき、公明党広島県本部と連携し、全国の青年議員の代表参加のもとでの核廃絶に向けた平和創出大会を開催いたしました。今の日本は、唯一の戦争被爆国でありながら、アメリカの核抑止に依存する、という極めて複雑な現実に直面しています。
その現実を捉え、核兵器廃絶を唱えることは夢想主義であると冷笑する向きもありますが、政治はどこまでも理想を見据え、その上で現実と格闘しなければいけないと感じます。核兵器の非人道性に対する怒りを根本に、核抑止に代わる安全保障の在り方を現実に検討しつつ、粘り強く前に進めていく決意です。
私の政治家としての原点の一つは、大学1年時に遡ります。借金を抱えていた父親が末期の肺がんに倒れたときに、地元の公明党議員が私のもとを訪ねてこられて、高額療養費制度を教えてくれたのです。その制度を活用することで、40万円近かった医療費が約8万円で済み、その後、家計を支えつつ、司法試験の勉強を続けることもできました。
話を聞くと、その高額療養費制度を実現したのも公明党だということでした。政治には一人一人の人生を支える力が本当にあるのだと、この実体験を通じてより強く実感するとともに、目の前の人のために何ができるか同苦し悩み進む議員の姿そのものに、私は「大衆とともに」との立党精神を感じました。
私自身、こうした原点に常に立ち返りつつ、社会全体が「明日に希望が持てる」「明日はもっとよくなる」と実感できるようなビジョンを示し、具体的な政策に落とし込んでいくべく、これからも力の限り働いてまいります。
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公明党参議院議員
矢倉克夫(やくら・かつお)
1975年生まれ。東京大学法学部卒業。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法学修士課程修了。前財務副大臣、元参議院法務委員長、元農林水産大臣政務官、元経済産業省通商政策局通商機構部参事官補佐。日本、米ニューヨーク州弁護士を経て、2013年の参議院選挙埼玉選挙区で初当選し、現在2期目。