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子どもたちに豊かな読書体験を 公明党チーム3000の奮闘

長年、本と関わり続け、現在は、"未来の読者をつくる"取り組みを幅広く展開している田口幹人(たぐち・みきと)さんと、公明党の佐々木さやかさんが、「子どもたちに本を届ける」取り組みについて語り合った。


(月刊『パンプキン』2025年3月号より転載。撮影=箱崎慎一 ヘア&メイク=館向寿子〈佐々木さん〉 取材・文=長野修)

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興味のある本との出会いが大事

佐々木 私は青森出身で、田口さんは岩手ですよね。東北つながりなんですよね。

田口 そうですね。僕は、今は東京で仕事をしていますが、神奈川とも縁が深いんです。岩手で本屋をしていたころ、東日本大震災がありました。当時、被災地から本屋としての情報発信をしていたんですが、そのときにいちばん先に応援してくれたのが神奈川の書店でした。

佐々木 田口さんはずっと本と関わってこられました。現在は合同会社「未来読書研究所」の共同代表として、またNPO法人「読書の時間」の理事長として、子どもたちの読書人口を増やす取り組みを続けてこられていますよね。

田口 目指しているものは2つです。「未来の読者をつくる」ことと「町に本がある場所を増やす」ことです。

佐々木 町の本屋の減少は、社会問題にもなっていますよね。

田口 毎日1.5 店舗どこかで本屋が消えているんです。この20年の間で書店の数は半減し「書店ゼロ」の自治体が30%に近づこうとしています。

佐々木 こうした現状を変えるためにも、未来の読者をつくることが重要ですね。

田口 私たちの独自調査では、小学生が読書を嫌いになった理由で最も多かったのが「読書の必要性がわからない」、次に「興味のない本を読まされた」と続き、これは調査を開始して以来約20年間変わっていません。

佐々木 まずは興味のある本との出会いが大切ですね。

田口 そう思います。興味のある本との出会いがないから読書が好きになれない。本は多様性に富んでいます。たとえば「野球」というカテゴリーの中には、技術書もあれば、産業としての野球もあり、小説もあるわけで、実に幅広いです。これほど多様性のあるものが身近にありながら、それを使わないのはもったいない。

佐々木 SNSの普及も活字離れを進めているかもしれません。

田口 「フィルターバブル効果」(※1)や、「エコーチェンバー現象」(※2)などによって、現代人は偏った思考や思想になりがちです。大人はまだしも小学生、中学生という、まだ自分が何者かわからない年代だからこそ、本を通じて広い世界を知ってほしい。読書は、人づくりの根幹ですから。

※1 ユーザーの好みや検索履歴に基づいて情報が優先的に表示される現象
※2 SNSなどの閉鎖的空間で自分と同じ特定の意見や思想が増幅される現象

佐々木 うちの子は今4歳ですが、以前YouTubeの動画を長時間見ていた時期がありました。夜寝るときもそれを見ないと寝ないという状態が続いて私も悩んでいましたが、そんなとき、夫が「どうしてお日さまは明るいのか」といった子どもが興味のある本を買ってきたのが転機となり、それ以降は、絵本の読み聞かせをしながら寝られるようになりました。

田口 私たちのワークショップも、自分は何に興味があるのかをワークシートに全部書き出すことから始まります。

学校図書館を充実させたい

佐々木 冒頭にも話があったように町の本屋が減少するなかで、子どもたちの最も身近な場所にある学校図書館の重要性が増しています。

田口 ところが、学校図書館の図書購入費は年々減少しています。その理由のひとつは、文科省の「学校図書館図書標準」が関係しているんです。これは、生徒やクラスの数に応じて蔵書の目標数を定めているのですが、それが達成されていると、それ以上買い足す必要がないと考え、図書購入に予算が回されません。必然的に蔵書の新陳代謝が行われず、古い本ばかりが並んでいる。
    
佐々木 話題の新刊が出てもそれが図書館になければ、図書館の魅力は失われ、子どもたちの足は遠ざかってしまいますね。

田口 「どうにかしなければ」と思っていたそんな時期(2023年)に、公明党女性委員会の佐々木さやかさんにお会いすることができました。そこから、学校図書館の充実に向けての取り組みを開始しました。

佐々木 私たちも、田口さんのお話を伺って大変共感できたので、これは公明党の取り組みとして進めていこうと決めました。学校図書館の図書購入費の増額のためには、地方議員の力が重要です。公明党にはチーム3000のネットワークがあるので、そこが動けば大きく変わると考えました。そこで、2023年の6月に全国各地をオンラインで結び、約200人ほど地方議員が参加して、田口さんを中心とした勉強会を開催しました。

田口 その後は、各自治体の議員さんたちと私たちが個別に連携をとりながら、その地域の状況に合わせてどう取り組みを進めるべきか一緒に考えながら歩んできました。

佐々木 議会の一般質問や予算委員会は、各議員が田口さんからいただいた図書購入に関するさまざまなデータを示しながら、議会や首長を説得し、予算の獲得に力を尽くしてくれました。

田口 その結果、各自治体で図書購入金額が大きく増額しました。なかには、予算が前年と比較して倍増した自治体もあります。ちなみに去年(2024年)いちばん予算が増えたのは、横浜市でした。

佐々木 うれしいです。ところで、公明党に最初に声をかけてくださったのは、なぜだったのですか?

田口 僕の中では読書推進イコール公明党だったからです。具体的に言えば2000年から始まった「朝の読書運動」です。この運動を全国に広げたのは公明党だったので、一度お話しする機会をいただきたいと思っていました。

佐々木 2000年といえば私はまだ大学生だったのですが、確か私の母親が取り組みに協力していたような記憶があります。

田口 そのおかげで、当時は5000校ぐらいしか実施していなかった朝読書が、今では2万5000校までに増えました。

佐々木 高校生や大人と比較して小学生の読書率がある程度高くなったのは、その影響が大きいのでしょうか?

田口 圧倒的にその影響です。

佐々木 私も学校図書館で興味のある本を見つけ、読書を始めました。また、公明党の先輩議員の本を読み、弁護士を目指しました。本は人生をひらきますね。教育は、結党以来公明党が大事にしてきたテーマです。多くの子どもたちに本を届けることに問題意識をもって取り組んでいるのは公明党だけです。だからこそ、公明党の強みであるチーム3000の力を借りてさらにこの運動を推し進めていきたいと思います。一緒に力を合わせて進みましょう!


田口 よろしくお願いします!

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未来読書研究所共同代表
田口幹人(たぐち・みきと)
1973年岩手県生まれ。「第一書店」勤務を経て、実家の「まりや書店」を継ぐ。 その後「さわや書店」に入社し、同社フェザン店統括店長に。2019年に退社し、合同会社「未来読書研究所」の共同代表に。NPO法人「読書の時間」理事長も務める。著書に『まちの本屋』などがある。

参議院議員
佐々木さやか(ささき・さやか)
青森県八戸市出身。創価大学法学部卒、同法科大学院修了。弁護士。2013年7月、参院議員に初当選し、現在2期目(神奈川県選挙区)。公明党青年委員会副委員長、同女性委員会女性局長、同女性防災会議議長、同神奈川県本部代表代行。横浜市在住。