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侵入犯から住まいを守る ~意外と知らない身近なリスクを減らすために~

 これまで聞いたこともないような手口の侵入事件や、身近なスマートフォンから犯罪に巻き込まれるニュースを頻繁に耳にする昨今です。今日まで犯罪に巻き込まれることなく安全だったからといって、その安全が続く保証はありません。時代と共に犯罪手口も変化するので、怖がるだけでは防ぐことができません。

 今、どんなことに気をつければよいのかを正しく知り、自分に必要な防犯対策を身につけていきましょう。
(月刊『パンプキン』2025年5月号より転載。取材・文=石井美佐)

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意外と知らない身近なリスクを減らすために

 SNSが普及したことで闇バイトをはじめとした、今まででは考えられなかったような犯罪を耳にすることが急増しています。「今まで安全に暮らせたから」「事件など起きたことがない地域だから」といったことは、通用しなくなっており、むしろそうした安心だったはずの住宅街がターゲットにもなっています。

 特に高度経済成長期に開発された住宅街では、住人が高齢化して若い人が少なく、家の防犯も昔のままアップデートされていないことが多いです。「我が家は大丈夫か?」ということを、これを機にいま一度見直すきっかけにしてみましょう。
 
 また、さまざまな個人情報のリストが売買されていて、それらをもとに犯罪のターゲットにされることもあるので、通販で購入するときなどをはじめ、自分の個人情報を出すときには日ごろから細心の注意を払はらうようにすることも大切です。

すべての開口部が侵入口になる

 特に戸建ての場合は、窓など開口部がたくさんあります。侵入犯は玄関か窓から侵入することが圧倒的に多いのですが、過去にはキッチンの換気扇を外して取り付け口から侵入された事例もあります。どんな開口部でも人の肩と頭が入れば侵入される恐れがあるのです。

 気をつけなければいけないのは、お風呂の窓。格子が入っているので換気のために窓を開けていることも多いですが、じつは格子は後から付けるので、ドライバー1本で簡単に外すことができます。また、針金の入っている窓ガラスは、ガラスの飛び散りを防ぐためのもので、防犯上の効果はありません。むしろガラスを割られても音がしないので、安心するのは危険です。

 マンションの場合、オートロックを開けるときは、必ずインターホンのモニターで確認してから解錠します。案外「オレ」と言われてモニターを確認しないで、「お父さんが帰ってきたわ」と思い込んで開けてしまうこともあります。マンションにあるオートロックは建物の開口部であり、最初の侵入口ということになります。我が家だけでなく、マンションに不審者を侵入させないようにします。

防犯意識をアップデートして安全に暮らす

 20年ほど前は、ピッキングという玄関の鍵を特殊な道具で壊して侵入するという手口が主流でした。そうした事件が増えて鍵の性能が上がり、ピッキング被害は減少していきました。また、侵入者は鍵を壊すのに時間をかけず、開いている玄関ドアや窓などからたやすく侵入する場合が多いのです。いまだにいちばん多い侵入口は無施錠の玄関や窓です。在宅していても玄関の鍵をかけ、外出するときはすべての窓に施錠するのが防犯の一歩となります。

 都市部と郊外、地方では意識にも違いがあり、昔から鍵をかける習慣がない場合もあります。子どもの出入りが多いとか、お父さんが帰るまで玄関の鍵は開いているといった家も見受けられます。ただ、鍵が開いているのは路上と同じということで、だれでも入れる状態だといえます。侵入に5分かかると侵入者の約7割が、10分以上かかるとほとんどが諦めるといいます。

 侵入に5分以上かかることが確認されている商品には、「防犯建物部品」(CP製品)としてCPマークがつけられています。こうした錠やガラス、防犯グッズを取り入れると犯罪被害リスクを下げることができます。

 玄関の表札や門などに何か印が書かれているときは、マーキングといって下見した侵入犯が印を残している可能性があるので、交番や警察に相談してみてください。あまり普段注意して見ていない場所なので、常にチェックしてみることも大切です。

今日から始める防犯対策

 少しでも犯罪に巻き込まれるリスクを下げるために、すぐにでもできる我が家の防犯を考えてみましょう。対策費用は必要な安全経費。被害で受ける損害より高いことはありません。

対策①窓を強化する
窓から侵入されるリスクは高いので、できれば防犯ガラスに替えたい場所です。ただ、防犯ガラスは値段が高いので、予算とのかねあいも考慮が必要です。もし、あまり予算がかけられない場合は、ガラスに貼る防犯フィルムならすぐに貼ることが可能です。ただし、窓ガラスの全面に貼らないと効果が弱いため、自分で貼るよりは防犯設備士がいる工務店や防犯ガラス施工を扱っている業者に頼むとよいです。また、窓の外に踏み台や足がかりとなるようなモノは置かないようにします。


対策②ツーロックを目指す
玄関はツーロックだけど勝手口はワンロックだとしたら、勝手口から入ってください、と言っているようなものです。侵入者は10分以上侵入に時間をかけたくないので、ツーロックの場所は侵入リスクを下げることができます。また、窓にも既存のクレセント錠だけでなく、窓用の補助錠を取り付けると、侵入者は補助錠の数だけ破壊する必要があるため、諦める可能性が高くなります。窓の補助錠は100円ショップなどでも購入できます。


対策③音と光を活用する
侵入者は、音や光が出るものは避けることがわかっています。玄関や駐車場、庭先には人感センサーライトを設置します。さらに、監視カメラがあればより安心です。窓に貼る侵入防止アラームは、侵入で窓が揺れるとアラームが鳴る防犯グッズです。ただ、使い慣れないと自分で窓を開けた際にアラームが鳴ってしまうので気をつけてください。ドアチェーンのようにドア上部に防犯ブザーをフックなどで渡しておき、開けられたときにひもが抜けるとブザーが鳴るようにすることもできます。


対策④家の周りの防犯レベルをアップ
静かな住宅街では家の周りの通路や勝手口付近に、人が歩くと大きな音が出る防犯砂利を敷き詰めておくと、足音や物音を避けたい侵入者を寄せつけにくくなります。ホームセンターなどで購入できますが、値段や材質に差があるので、よく性能と値段、またどのくらい必要かなどを比べて予算に合わせて検討してみてください。また、窓下にジュースなどの空き缶を並べておくと、どかさないと侵入できないのと音がするので防犯の一助になります。


対策⑤モニター付きインターホンは基本
購入に補助金を出している自治体もありますが、インターホンは必ずモニター付きにするのが防犯の基本です。録画機能がありますし、モニターがないとだれが来たか玄関まで出ないとわかりません。モニターがあれば配達の人と、顔を見せないようにした不審者と見分けがついて、警戒できます。もしいらない用事の場合であれば「お帰りください」とはっきり対応できます。


対策⑥見守りカメラで留守宅を確認
カメラを家に設置してスマホでそのようすを確認できる見守りカメラはペットだけでなく、育児や介護のときに活用する人もいます。外出時や旅行などの際も、もし設置してあれば出先から家のようすを確認することができます。家の中に設置するものと家の外に防犯カメラとして取り付けるもの、また録画やリアルタイム映像をスマホで見られる機能など、さまざまなタイプがあります。我が家に必要な機能をよく調べてから購入を検討しましょう。


対策⑦マンションの防犯対策
マンションの場合、2階以上の高層階だからと窓の施錠をしないなど油断しないようにしましょう。オートロックは必ずモニターでだれかを確認してから開けること。エレベーターに乗るときは顔見知りでない人や外からついてきた人が一緒に乗ってくるようなときは、先を譲り1台待ってから乗るか、エレベーターホールにも見知らぬ人がいないかを確認してから乗るほうが安心です。


対策⑧防犯ブザーを常備する
防犯ブザーは子どもや女性が持つためだけのものではなく、高齢者にも心強い味方になります。とっさのときには声が出ないものなので、玄関や家の手の届くところに防犯ブザーを置いておき、もしも不審者が侵入しようとしてきたら、すぐに鳴らせるようにしておきます。フラッシュライト付きや音の大きさや音色も多種あり、ピンを引き抜くと音が出ます。外出時の携行用として、また、住まいに活用するなど、手軽に使える防犯グッズとしておすすめです。


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教えていただいた方は…
佐伯幸子(さえき・ゆきこ)さん
安全生活アドバイザー。暮らしの中のあらゆる場面での危険を指摘、排除する方法をわかりやすく解説。老若男女を問わず身近な危険を防ぐ「頭を使って身を守る方法~知的護身術」を提唱し、日常的な危機管理のスペシャリストとして講演や執筆、記事監修などで活躍中。All About 防犯ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gt/71/)