侵入犯から住まいを守る ~意外と知らない身近なリスクを減らすために~
2025/04/28 これまで聞いたこともないような手口の侵入事件や、身近なスマートフォンから犯罪に巻き込まれるニュースを頻繁に耳にする昨今です。今日まで犯罪に巻き込まれることなく安全だったからといって、その安全が続く保証はありません。時代と共に犯罪手口も変化するので、怖がるだけでは防ぐことができません。
今、どんなことに気をつければよいのかを正しく知り、自分に必要な防犯対策を身につけていきましょう。
(月刊『パンプキン』2025年5月号より転載。取材・文=石井美佐)
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意外と知らない身近なリスクを減らすために
SNSが普及したことで闇バイトをはじめとした、今まででは考えられなかったような犯罪を耳にすることが急増しています。「今まで安全に暮らせたから」「事件など起きたことがない地域だから」といったことは、通用しなくなっており、むしろそうした安心だったはずの住宅街がターゲットにもなっています。
特に高度経済成長期に開発された住宅街では、住人が高齢化して若い人が少なく、家の防犯も昔のままアップデートされていないことが多いです。「我が家は大丈夫か?」ということを、これを機にいま一度見直すきっかけにしてみましょう。
また、さまざまな個人情報のリストが売買されていて、それらをもとに犯罪のターゲットにされることもあるので、通販で購入するときなどをはじめ、自分の個人情報を出すときには日ごろから細心の注意を払はらうようにすることも大切です。

すべての開口部が侵入口になる
特に戸建ての場合は、窓など開口部がたくさんあります。侵入犯は玄関か窓から侵入することが圧倒的に多いのですが、過去にはキッチンの換気扇を外して取り付け口から侵入された事例もあります。どんな開口部でも人の肩と頭が入れば侵入される恐れがあるのです。
気をつけなければいけないのは、お風呂の窓。格子が入っているので換気のために窓を開けていることも多いですが、じつは格子は後から付けるので、ドライバー1本で簡単に外すことができます。また、針金の入っている窓ガラスは、ガラスの飛び散りを防ぐためのもので、防犯上の効果はありません。むしろガラスを割られても音がしないので、安心するのは危険です。
マンションの場合、オートロックを開けるときは、必ずインターホンのモニターで確認してから解錠します。案外「オレ」と言われてモニターを確認しないで、「お父さんが帰ってきたわ」と思い込んで開けてしまうこともあります。マンションにあるオートロックは建物の開口部であり、最初の侵入口ということになります。我が家だけでなく、マンションに不審者を侵入させないようにします。
防犯意識をアップデートして安全に暮らす
20年ほど前は、ピッキングという玄関の鍵を特殊な道具で壊して侵入するという手口が主流でした。そうした事件が増えて鍵の性能が上がり、ピッキング被害は減少していきました。また、侵入者は鍵を壊すのに時間をかけず、開いている玄関ドアや窓などからたやすく侵入する場合が多いのです。いまだにいちばん多い侵入口は無施錠の玄関や窓です。在宅していても玄関の鍵をかけ、外出するときはすべての窓に施錠するのが防犯の一歩となります。
都市部と郊外、地方では意識にも違いがあり、昔から鍵をかける習慣がない場合もあります。子どもの出入りが多いとか、お父さんが帰るまで玄関の鍵は開いているといった家も見受けられます。ただ、鍵が開いているのは路上と同じということで、だれでも入れる状態だといえます。侵入に5分かかると侵入者の約7割が、10分以上かかるとほとんどが諦めるといいます。
侵入に5分以上かかることが確認されている商品には、「防犯建物部品」(CP製品)としてCPマークがつけられています。こうした錠やガラス、防犯グッズを取り入れると犯罪被害リスクを下げることができます。
玄関の表札や門などに何か印が書かれているときは、マーキングといって下見した侵入犯が印を残している可能性があるので、交番や警察に相談してみてください。あまり普段注意して見ていない場所なので、常にチェックしてみることも大切です。

今日から始める防犯対策
少しでも犯罪に巻き込まれるリスクを下げるために、すぐにでもできる我が家の防犯を考えてみましょう。対策費用は必要な安全経費。被害で受ける損害より高いことはありません。
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教えていただいた方は…
佐伯幸子(さえき・ゆきこ)さん
安全生活アドバイザー。暮らしの中のあらゆる場面での危険を指摘、排除する方法をわかりやすく解説。老若男女を問わず身近な危険を防ぐ「頭を使って身を守る方法~知的護身術」を提唱し、日常的な危機管理のスペシャリストとして講演や執筆、記事監修などで活躍中。All About 防犯ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gt/71/)