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たった一人になった時に本当の偉大な人がわかる【書籍セレクション】

言論出版問題で逆風の1970年、創価学会第三代会長・池田大作は少年少女60人と「未来会」を結成。外なる宇宙と内なる宇宙を重ね、生命の無限を説き、『一人立てる時に強きものは真正の勇者』と鼓舞した。孤立の場でこそ真価が試される――半世紀を超え語り継がれる勇気のメッセージを辿る。

『民衆こそ王者 池田大作とその時代』21巻から一部を抜粋してご紹介します。

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1970年(昭和45年)、創価学会は「言論出版問題」の渦中にあった。
「嵐にも 王者の子なれば 誇りもて」
池田大作は逆境にあってなお、友を励まそうと言葉を贈り続ける。
そして6月、初めての「未来会」の結成。
各地に届けられた言葉と、参加者の証言から、
池田の胸中に迫っていく。

 

〝外なる宇宙〟と〝内なる宇宙〟の旅

 久松美年子が初代の全国少女部長になったのは1970年(昭和45年)3月。「言論出版問題」の嵐の中だった。3カ月後、初めて「未来会」が結成される(6月27日)。東京の各地に住む子どもたち60人とともに、池田のもとに集った。その時の様子は小説『新・人間革命』にくわしく描かれている(第14巻「大河」の章)。

 星空を見上げ、「宇宙に行きたい」と言い出した小学生の女の子がいた。

 山本伸一(池田をモデルにした人物)は「宇宙か。ぼくも行きたいな」「仏法では自分自身が宇宙と同じだと説いているんだよ」と話す。その子の頭を指さして続けた。

「頭はまるいよね。これは天を表し、髪の毛は無数の星。両目は太陽と月で、目が開いたり、閉じたりするのは昼と夜。眉毛は北斗七星だよ。

 鼻の息は谷間の風、大きな12の関節は、1年が12カ月であることを表し、小さな関節は、1年の1日1日を表している。また、体に流れている血管は川なんだよ。太いのは大河、毛細血管は小川だね」「つまり、自分自身が一つの宇宙であり、自分の生命のなかに幸福の大宮殿もあるんだよ。そのなかに入っていくための信心なんだ」

 この〝髪と星〟の話を、池田はさまざまな場所で話してきた。東南アジアのタイでは「息は風である。静かな風のときもあるし、夫婦げんかのときは台風となる(爆笑)……血流は川。脳溢血は川の氾濫といえようか」とわかりやすい譬えを通し、「わが身が即、大宇宙である。それが生命の根本の法理である。ゆえに、妙法を信じ、行じるとき、事実のうえで、大宇宙の無量の宝を、わが身の上に、そのまま開き顕していけるのである。そこに『幸福』という結果が生まれる」と語った(1994年2月、第1回タイ総会、『池田大作全集』第84巻)。

 日蓮仏法を証明するには、人間の〝外なる宇宙〟を探求する「天文学」と、人間の〝内なる宇宙〟を探求する「医学」について深く知ることが大事だ――創価大学の教員との懇談で、こう語ったこともある。

「未来会」の語らいでは、花火を見ながら子どもたちにこうも言った。

「花火はきれいだね。でも、華やかだけど、一瞬で終わってしまう。

 マスコミや芸能界で、もてはやされている人を見ると、〝いいな〟と思うかもしれないが、それは花火みたいに、一瞬にすぎないものだよ。大事なことは、何があっても崩れない、自分自身をつくりあげていくことだ。それが信心をすることの意味でもある」(前掲「大河」の章)

〝たった一人になった時に本当の偉大な人がわかる〟

 この日から、未来部のリーダーたちは数年にわたり、各地の未来会の結成に同席した。池田の指導に接し、その優しさと同時に、厳しさも目の当たりにしてきた。

 中部方面の中心地である愛知でも、九州方面の中心地である福岡でも、池田は一つの信条を繰り返した。それは、

 「一人立てる時に強きものは、真正の勇者なり」

 20代の日記にも写し、小説『人間革命』(第1巻「一人立つ」の章)でも引用した、ドイツの詩人シラーの言葉。この一言に象徴される信条だった。

 国会図書館で確認できる限り、この言葉の最も古い出典は内村鑑三の『基督教講演集 第一集』(1903年、警醒社)。日露戦争が起こる1年前である。他にも何冊もの書籍で紹介され、池田の少年時代には広く知られた言葉だった。


 中部未来会(第2期)の結成式(1973年1月)――
〝ある時は共産主義の時代になるかもしれない。ある時は創価学会が大弾圧を受ける時があるかもしれない。ある時はみんな辞めて、臆病になって、他の宗教や思想に行ったり、むしろ学会を批判する人がたくさん出るかもしれない。そういう時代も私は考えています。どんな大弾圧を受けても信仰し抜くのが創価学会なのです〟

〝仏の命とは何か。現代の言葉でいえば、一生涯かかって、いろんな社会に、文化に、価値創造していく。そういう生命をつくる。その生命の源泉が南無妙法蓮華経である。それを仏の命という。創価─価値を創る。これを仏というのです。仏の実践というのです〟

〝もう一度言っておきます。みんながいなくなっても、どんないやな現象ばかり続いても、決して御本尊を疑わない。一生涯、私は疑わない。こういう人になれるかどうかが、未来会ということなのです。

 今、一生懸命に信仰していなくてもかまわない。勉強を一生懸命すればいい。体を一生懸命つくればいい。

 そして30年先、50年先、万が一、創価学会が壊滅されるような時代が来た時に、今日の私の話を思い起こし、その時に創価学会を守り、再建する。そういう人になれるかどうか。それが未来会です〟

〝私は知っています。たった一人になった時に本当の偉大な人がわかる。「一人立てる時に強きものは真の勇者なり」です。その時に世間に迎合してしまって、臆病になり、卑怯な人間になるか、ならないか。そこだけが私の根本のポイントです。あとはもう何も言わない。

 あとはそれを心の奥底に、バネに巻いて、30年先、50年先に思い起こしてくれる人は、たとえ(社会的に)偉くなれなくても、その人は御本尊様から見れば永遠に、最高に偉い人です〟

 九州未来会(第2期)の結成式(同3月)――
〝このなかから一人だけ、学会がつぶれても、残っていればいい。周りがどうなっても、自分が実行すれば、それが本当の約束です。

 根本は南無妙法蓮華経という法則です。政治でもない。芸術でもない。一般の文化でもない。もっともっと永遠のものです。50年先、「自分は今日の未来会の約束を破らないぞ」と天に叫ぶような、そういう人になってほしい〟

〝私は牧口先生(牧口常三郎、創価学会初代会長)、戸田先生(戸田城聖、第二代会長)からバトンを受けた。次のバトンタッチは全部、皆さん方に託すのです。たとえ学会員が一人も九州にいなくなっても、未来会だけは、凱旋将軍のように朗らかに、学会を建て直してください〟

今日も悠然と

 未来部の担当者たちも、自らの悩み、苦しみと闘いながらの日々だった。久松美年子は31歳の時、長女の智湖を白血病で亡くした。「智湖が私に信心を教えてくれました」と語る。3歳で発症した。美年子は生まれたばかりの次女の世話をしながら、必死の看病を続けた。

 信仰を持って生死の淵に立った子は、周りが驚くほど精神的な成長を遂げることがある。美年子は「智湖は4歳の誕生日に亡くなったのですが、まるで15歳の子と話しているみたいでした」と振り返る。

 看病に疲れた美年子がベッドの脇でうたた寝すると「コーヒー飲んだら」と励まされ、童話を読み聞かせていると、学会の機関誌に載った信仰の体験談を「読みたい」とせがむこともあった。ある日、「闘いだ。がんばるぞ。負けないぞ」と言い、美年子は信じられない思いでメモに書き取った。

 息を引き取る日、「もこ(智湖)ちゃん、きょう、誕生日だね」と声をかけると、ゆっくり4本の指をあげた。亡くなる二時間ほど前、大好きな「ぞうさん」の歌を一緒に歌った。

 智湖の一周忌の前日、信濃町の駅近くでたまたま池田と会った(1979年7月10日)。池田の第三代会長辞任から、まだ3カ月も経っていない時期である。同行の幹部やスタッフたちとともに、喫茶店の「壹番館」で懇談した。美年子は次女を育てながら、おなかには新しい命が宿っていた。

「そうか、もう生まれてくるか」

 池田は静かに語った。

「亡くなった子に。生まれてくる子に。今いる子に」。記念の切手を3枚、美年子に贈った。

 幼い智湖の闘病中、母である美年子に宛てて、池田が届けた激励の文がある。池田の口述を、妻の香峯子が書き取った。美年子は、今も時折見返しては、自らを励ましている。

 自らの宿命と戦え

 自らの運命と戦え

 信仰者らしく

 地湧の戦士らしく

 そしてこの世の一生の縮図の

 因果の律動が

 三世永遠に

 つながりゆくことを

 喜びとしながら

 今日も悠然と

 嵐に向いゆくことだ

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※当記事は『民衆こそ王者 池田大作とその時代』21巻から抜粋をしたものです。

続きが気になった方はこちらもご覧ください。

「21世紀をすべて君たちに託したい」――
子どもたちの未来を見据え、その土台になろうとした池田SGI会長の願いを描く!

 

『民衆こそ王者 池田大作とその時代21 大いなる希望――未来部へのエール篇』「池田大作とその時代」編纂委員会著、定価:1265円、発行年月:2025年5月、判型/頁数:四六並製/256ページ

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【目次】
第1章 いじめた側が100%悪い――『希望対話』
第2章「僕は根っこになる」――「大いなる希望」①
第3章 悩みに直面した時こそ――「大いなる希望」②
第4章 彼らを戦争に巻き込むな――少年少女部の誕生
第5章「子どもは大人の父である」――信仰の継承
第6章「自らの宿命と戦え」――「未来会」の日々①
第7章「羊千匹より獅子一匹」――「未来会」の日々②
第8章「冬の太陽となって」――「未来会」の日々③
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