「家計応援計画」で都議会公明党は都民の暮らしを守る
2025/05/08物価高に揺れる現役世帯の懐をどう温めるか――都議会公明党幹事長・東村くにひろは「家計応援計画」を掲げ、5年で世帯収入を200万円底上げするビジョンを提示。アフォーダブル住宅の家賃6割化、DX投資に伴う中小企業賃上げ支援、教育費・保育料の無償化など総合策で生活防衛と成長を両立させ、立党精神「大衆とともに」を東京から実践する挑戦が始まる。
(月刊『潮』2025年6月号より転載)
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首都・東京が直面する課題
目の前の物価高にどう対応するか。現役世帯(世帯主が18歳以上、65歳未満の世帯)の収入をいかに増やすか。安心・安全をいかに守るか。少子化とどう向き合っていくか――。首都・東京が直面する課題は、いずれも待ったなしの状況です。本稿では、都議会公明党が本年6月に予定されている東京都議会議員選挙に向けて掲げた重点政策「家計応援計画」について解説します。
その前に現在の東京が抱える諸課題について、論点を整理したいと思います。物価高については、食品や生活必需品の価格高騰もさることながら、都内においては住宅価格の上昇が深刻です。住環境は人が生活していく上での最大の基盤です。そこが安定すれば、モチベーションも向上し、次のステップに進めます。しかし、現状では投機目的の住宅購入などが増えており、特にマンション価格の高騰が深刻な事態となっています。
物価高対策にもかかわる課題として、賃上げが物価の上昇に追いついていない現状があります。とりわけ現役世帯が置かれている状況は深刻ですので、物価高に負けない中長期的な賃上げが求められています。
都民の生活を脅かすものとしては、体感治安の悪化が挙げられます。いわゆる"闇バイト"による強盗事件が発生したり、投資詐欺が横行したり。さらに言えば、街頭で政治家を狙うローンオフェンダー(単独でテロ行為を行う個人)による事件も起きています。実際の犯罪件数というよりは、あくまでメディアの報道も踏まえた体感の話ではありますが、不安を感じる都民の心情に政治は応えていかなくてはなりません。
安全面で見過ごせないのは自然災害です。地球温暖化の影響もあり、近年は2年に一度の頻度で大規模な水害が発生しています。首都直下地震は今後30年以内に70%の確率で発生するとされています。要は、いつ起きてもおかしくないのです。さらに言えば、富士山の噴火が起きれば都市機能は大きな打撃を受けることが予測されています。ハード・ソフトの両面からの対応が求められています。
同じ首都圏である埼玉県八潮市で起きた道路の陥没事故に心を痛めている人は少なくないはずです。東京都ではかねて下水管の長寿命化を進めてきたわけですが、それには都心ならではの難しさがあります。大規模な改修を行おうと思えば、交通や生活排水などを止めたりしなければならないからです。人間の生活において最も大事なものの一つが下水ですので、なんとか交通や生活に大きな支障を来さない範囲で管の長寿命化を進めているというのが現状です。
少子化といかに向き合うべきか
もう一つ、目を背けてはいけないのが少子化の問題です。国が「異次元の少子化対策」を打ち出したのは2023年1月のことでしたが、公明党はそれ以前から一貫して少子化対策に注力してきました。思い出すのは、私が直接話を伺った親御さんの言葉です。3人目を産みたいけれど、教育費が高くてとても産めない――。教育費の負担を軽減できれば少子化に歯止めをかけられるかもしれない。そうした思いで都議会公明党が取り組んだ教育費の負担軽減が、結果的に国の施策を動かした側面があると私は考えています。
教育費に関して、今年度の国会で所得制限が撤廃された高校無償化についても、東京都が率先する形で進めてきました。2017年には年収760万円未満まで、2020年には年収910万円未満まで、そして2024年には所得制限なしで無償化が実現しました。その背景には、高校教育の6割は私立の学校が担っているという東京特有の事情があります。
6割すべての人が私立を目指していたわけではなく、都立高校に残念ながら合格できなかったため経済状況が厳しい家庭であっても私立に行かざるを得ないケースが少なくないのです。無償化にあたっては様々な困難がありましたが、実現後、都民から直接感謝の言葉を頂いたことが度々ありました。それだけ多くの家庭が頭を抱える問題を、政治の力で解決することができたことを嬉しく思います。

保育料については、2019年10月に政府の3歳から5歳の幼児教育の無償化が実現し、その流れを受け段階的に第2子以降の0~2歳の保育料無償化まで実現しました。
東京都は本年9月、0~2歳の保育料無償化を実現します。さらには、両親が共働きでなくとも保育園に入れるようになっています。これは子育てを担う親のレスパイト(息抜き)という側面もありますが、私が重要だと思っているのは子ども自身の社会性への影響と"子どもは社会で育てる"という考え方の浸透です。
私自身、孫育ての過程で気がついたのですが、乳幼児でも家族以外の他者と早い時期から触れ合う機会が多ければ、徐々に社会性が身についていくのです。また、レスパイトによる子育てからの一時的な解放は、親のストレスを軽減して虐待やネグレクトを防ぐ効果もあります。保育料の負担軽減には少子化対策以外にも効果が期待できるのです。
6割の家賃で借りられるように
ここからは重点政策「家計応援計画」の解説をしたいと思います。先述した課題に対応するかたちで、次の四つの柱を掲げました。
①物価高に「負けない」東京へ
②現役世帯の「所得が増える」東京へ
③「安全・安心」な東京へ
④教育負担が「かからない」東京へ
――です。
一つ目の〈物価高に「負けない」東京へ〉については、「アフォーダブル住宅」「シルバーパス」「都公式アプリでの7000円分のポイントの付与」などを実施します。
「アフォーダブル(affordable)」とは「手頃な」「安価な」といった意味の英語です。市場価格よりも安く入居できる住宅が「アフォーダブル住宅」と呼ばれています。東京都は2026年度から、公明党の提案によって官民連携ファンド(基金)を活用してこのアフォーダブル住宅の提供を始める予定です。都は市場価格の8割の家賃を想定していますが、我が党はこれをなんとか6割に引き下げられるように努力します。
この事業の参考にしたのは、愛知・名古屋を拠点に、シングルマザーにアフォーダブル住宅を提供する株式会社「LivEQuality大家さん」の取り組みです。同社代表の岡本拓也さんの取り組みを聞いた私は、この仕組みなら住宅価格の高騰に対応できると確信しました。
すぐに名古屋に足を運び、岡本さんを訪ねると、最初にこう聞かれました。「公明党の政策の基本はなんですか」と。私は間髪を容れずに「住宅政策です。住環境は人が生活していく上での最大の基盤です」と答えると、「それならばお手伝いします」と言ってくださったのです。私も名古屋に足を運びましたし、岡本さんも何度も東京に来てレクチャーをしてくれました。そうして2024年の1月に都議会で私が取り上げ、知事が選挙公約に入れてくださり、2026年度から実施する運びとなったのです。
住宅価格高騰の対策としては他に、都が再開発したエリアのマンションについては、販売戸数を一人2戸までに制限する提案をしています。1戸ではなく2戸というのは親子で購入するケースを想定しており、要は投機目的の購入を抑制する効果があると考えます。
都の剰余金から都民に還元する
これはすでに実現したことですが、東京都は本年10月に70歳以上の高齢者が都営交通や民営バスに乗車できる「シルバーパス」の制度を改正します。住民税課税世帯の年間負担額が、2万510円から1万2000円に大幅引き下げとなったのです。これはかねて公明党が主張していたことで、月額で1000円ですので、多くの高齢者にとって利用しやすい制度になったと思います。ICカードも導入されるので、利便性も向上します。これが二つ目です。
三つ目は、「都公式アプリでの7000円分のポイントの付与」です。都は、本年2月にリリースした「東京都公式アプリ」を活用し、15歳以上の都民に一人7000円分のポイントを付与する予定です。公明党としては、これを今後も金額を上げ継続して実施することを政策として掲げます。
こうした施策の際に、必ず課題となるのがスマホをお持ちでない高齢者への対応です。これは、私どもの働きかけによって東京都がガラケーからスマホに乗り換える人へ一人3万円の財政支援を行うことを決めました。また、スマホの使い方に関するサポートも、区・市に働きかけていくつもりです。
7000円分のポイントの財源は剰余金です。例えば、東京都の2024年度の予算では、都税収入が6兆7000億円になりました。そのうち、政策的経費に充てられるのは6兆3000億円。予算の執行率が100%に行けばよいのですが、どうしても執行残の剰余金が発生します。
剰余金の大半は積立金に回すわけですが、残った剰余金を都民の皆さまに還元する。それが7000円分のポイント付与の実態です。メディアによっては、この仕組みを踏まえずにバラマキだと批判する向きもありますが、あくまで剰余金の活用であるということはご理解いただきたいと思います。個人的には、剰余金がさらに増えれば、来年度以降は1万円分のポイント還元も実現可能であると考えております。

平均年収を5年で200万円引き上げる
重点政策の二つ目の柱〈現役世帯の「所得が増える」東京へ〉については、ずばり今後5年で現役世帯の平均年収を200万円引き上げたいと考えています。
手立てとして重要なのは、中小企業の賃上げです。DX(デジタル改革)やAI(人工知能)の活用による生産性向上を促進し、賃上げに結びつけていく必要があります。賃上げに結びついた設備投資であれば都として5分の4までの助成を行う。こうした好循環を生み出していきたいと考えています。
さらには、従業員のリスキリング(学び直し)を支援したり、都と経済界と労働組合による「公労使会議」で年収増を協議したり、就職氷河期世代を含めたミドル世代のセカンドキャリアの支援を拡充することも推進したいと思います。
また、公明党はかねて奨学金返済の負担軽減に取り組んできました。実現したのはIT分野や製造業、建設業などの技術人材が不足している業界に就職した人に対して、3年間で150万円の返済を肩代わりするという制度です。150万円のうち半分は企業が、もう半分は都が負担します。企業の方に話を聞くと、人材確保のために仲介業者に支払っているコストに比べれば、むしろ負担は少ないということでした。
他の業種にも対象を広げてほしいという声もあります。また、対象を現行の20代までという縛りを30代まで広げてほしいという意見もあります。これについては現在、東京都に提案をして検討をしてもらっているところです。
防犯・防災と教育負担の軽減
三つ目の〈「安全・安心」な東京へ〉については、体感治安の回復と防災・減災が重要だと考えています。東京都の2025年度予算案には、公明党の推進で個人住宅向け防犯機器の購入費の半額を、最大2万円まで補助する予算を盛り込みました。防犯機器とは、防犯カメラや防犯フィルム、カメラ付きインターホン、防犯砂利などです。
防災・減災の取り組みとしては、やはり頻発する豪雨災害への備えが最優先です。東京都としてはかねて「TOKYO強靱化プロジェクト」を推進しており、その一環として国内最大規模の調節池「環状七号線地下広域調節池」などの工事を進めています。これを着実に推進するとともに、線状降水帯による豪雨に対応できるように調節池を連結させ、海までつなぐ地下河川化も進めてまいります。
四つ目の〈教育負担が「かからない」東京へ〉については「子どもベーシックサービス」の導入を強力に推進します。都議会公明党はすでに、0~2歳児の保育料や学校給食費、高校生世代までの医療費、高校授業料の無償化をはじめ、全国をリードする子育て・教育支援を実現してきました。
私どもが掲げる「子どもベーシックサービス」では、これまで実現してきた施策に教材費の実質無償化などを上乗せし、妊娠・出産期から子育て期、就学期にかけての基本的な費用を、所得制限を設けずに無償化することを目指しています。
教育費負担とは別の話になりますが、子どもたちの将来の可能性を広げるために、英語の授業におけるネイティブ講師の活用も推進したいと考えています。すべての子どもが英語を話せる東京を目指し、英語を母語とする民間のネイティブ人材を都内の全公立中学校に配置したいと考えています。
これについて先進的な取り組みを行っているのは、多摩地域の東大和市です。自身が帰国子女である和地仁美市長の肝煎りで、オンラインによるネイティブ講師を活用した英語教育がすでに行われています。その結果、中学校英語スピーキングテスト(ESATーJ)において、東大和市の中学生たちは平均グレードがオンライン授業開始前と比べて大きく上回る成績を残しているのです。
公明党はいま原点に立ち返るべきとき
都議会公明党はこれまで半世紀以上にわたり、合意形成の要として東京発の政策を次々と実現してきました。現在も都議会127議席のうち、第1党は自民党の30議席、第2党は都民ファーストの26議席、そして公明党は第3党で23議席を持っています。議席数では決して多くはない公明党であるのに、どうして政策の実現力があるのか。それは、ときに対立する第1党と第2党の双方の間を取り持ち対話ができるからです。
そうした自負はあるものの、今夏の都議選が楽な戦いになるとは決して考えていません。むしろ、いまだかつてない厳しい戦いになるはずです。昨年10月の衆議院議員総選挙の結果を受けて、公明党の支持者の皆さまから大変に厳しい声を頂戴しました。私自身、今年に入ってからは20代の支持者と徹底的に懇談させていただき、そのたびに厳しいご意見を頂戴しました。
なかでも、とある現役世帯の支持者の声を私は厳粛に受け止め、猛省しました。それは、公明党はクリーンな政党であるはずなのに、どうして裏金議員を推薦したのか。公明党にとって清潔な政治は生命線ではないか。なぜ自分たちのアイデンティティを毀損するようなことをしたのかというものです。
公明党はいまこそ"大衆とともに"との立党精神に本当の意味で立ち返る必要があります。まことに残念なことではありますが、都議会自民党会派においても政治資金パーティー収入の不記載という"政治とカネ"の問題が発覚しました。今回こそ絶対に都議会自民党の候補者に推薦を出してはいけません。
4月、都議会の政治倫理条例検討委員会は、公明党の提案のもとパーティー開催時に会派の幹事長だった自民党議員の二人を参考人として招致することを決めました。都議会公明党は真相解明と再発防止のためにこの問題に徹底して取り組んでいきます。
1963年、公明党の前進である公明政治連盟は、「清潔な政治」の確立、「大衆福祉」の実現、「現場第一主義」を掲げて本格的に都議選に挑み、17人の議員が誕生しました。その勢いは翌年の公明党の結党へとつながっていきます。今一度、公明党の出発点である都議会から、"大衆とともに"という立党精神を体現する政策を展開していきたい――これこそが今回の「家計応援計画」の一番根底にある思いです。
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東京都議会議員
東村邦浩(ひがしむら・くにひろ)
1961年奈良県生まれ。創価大学経営学部卒業。税理士・公認会計士。民間企業や学校法人、公益法人の監査に従事。監査法人の理事を経て、2001年に東京都議会議員(八王子選挙区)に初当選。現在6期目。公明党中央幹事。都議会公明党幹事長。