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国民の生活を守る――そのために公明党は勝たねばならない

国民生活が逼迫している現状を前に、政治が手を拱いているわけにはいかない。
与党として四半世紀。斉藤鉄夫公明党代表が、重要な決断の中心には常に公明党がいたことを力強く訴える。その理由は創立者池田大作先生が示された確固たる立党精神と理念があるからだとも――。
(月刊『潮』2025年7月号より転載)

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訴えるだけでなく公明党は実現する

 物価高やトランプ関税などの影響で、国民生活や日本経済の先行きに不安の声が広がっております。なかでも米価の高止まりについては、全国を回るなかでも大変な思いをされているお声が数多く聞こえてきます。特に低所得層への影響が深刻です。また、私の地元・広島が本拠のマツダをはじめとする自動車メーカーやその協力企業の皆様が、大きな不安のなかでトランプ関税の趨勢を見守っておられることも各所で伺っております。

 国民の生活を守るため、この大変に厳しい状況をなんとしても切り抜けなければなりません。そこで公明党としては、4月25日に参議院選挙の重点政策の第1弾を発表しました。

 テーマは「訴えるだけじゃ変わらない。公明党は実現する」。具体的な内容としては、以下の3本の柱を掲げました。すなわち①物価高対策、②給与の額面アップ、③社会保障の充実――です。

 まずは「物価高対策」について。日本経済の6割を支えているのは個人消費です。生活を守るためにも、日本経済を底支えするためにも、公明党としては当面の物価高対策としての「減税」と、それが実現するまでの「給付」が必要だと考えています。

「減税」については、報道の通り自民党内の慎重意見などによって議論が停滞しているのも事実です。しかし、国民生活が逼迫している現状を前に、政治が手を拱いているわけにはいきません。我が党としては食料品への消費税減税をはじめ、ガソリンの暫定税率廃止や賃上げを行った法人への税制優遇など幅広い形で国民の皆様が「減税」の恩恵を受けられるよう、引き続き自民党に強く働きかけてまいります。

「給付」については、いわゆる"ばら撒まき批判"があることも認識しております。そのうえで、私たちは先述の通り個人消費が日本経済の6割を占める実態を踏まえ、また少なくとも低所得層の方々に対して一定の手当をすることには意味があると考えています。もちろん、給付についてはきちんと消費に回る仕組みを整えることが前提ではありますが、「給付か、減税か」という二者択一ではなく、私たちはその両方を訴え続けたいと思っています。

手取りはもちろん額面をアップする

 物価高自体は、経済が拡大していく局面では自然なことでもあります。現在の大きな問題は、物価高に賃金の上昇が追いついていないところにあります。したがって、短期的には減税や給付によって手当をしつつ、中長期では賃金を上げていくことが重要になります。

 もちろん"手取りを増やす"ことも大切ですが、それ以上に大切なのが"額面を増やす"ことです。額面が増えれば自然と手取りも増えるからです。ゆえに私どもは「給与の額面アップ」を重点政策の柱としました。

 額面アップのための政策としては、すでにこれまでにも2023年の物流業における法改正や24年の建設業法の改正、さらには今国会で成立した下請法の改正などを進めてきました。中小企業が大手企業に対して対等な立場で価格交渉を行い、賃上げの原資を確保していくことが重要です。

 欧米ではこの30年間で、物価も賃金も約2倍に増えており、それにともなって経済規模も約2倍に膨らんでいます。それに対して日本は、長く物価が維持された半面、賃金が上がらず、結果的に経済規模において国際的に後れを取ってしまいました。これをなんとか巻き返さなければならないと考えています。

 中小企業と大企業の適正価格の取引は、中小で働くパートの方々の厚生年金への加入も後押しするはずです。「社会保障の充実」としては他にも、年金給付水準の底上げや、介護従事者や保育士などの給与を全産業平均まで引き上げることを目指します。

 ともあれ、4月末に発表した重点政策はあくまでまだ"第一弾"です。よりきめ細やかな政策は、第2弾として6月中旬までには発表できるはずです。公明党が本年3月から始めた政策立案アンケート「We connect」をフルに活用して、精度の高い政策をつくり上げていくつもりです。

 広く大衆から声を募って政策に反映する「We connect」のような仕組みは、同じ政権与党でも自民党にはありません。四半世紀にわたる連立によって、公明党がかねて強みとしてきた"小さな声を聴く力"が、自民党によい影響を与えていると自負しています。

公明党が主導する日本の平和政策

 公明党は戦後80年の節目に合わせて、この5月に「平和創出ビジョン」を策定しました。主な柱は2本。すなわち①「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設、②核廃絶に向けた議論の推進――です。

「北東アジア安全保障対話・協力機構」は、山口那津男元代表がかねて訴えてきた構想であり、かつては「アジア版OSCE(欧州安保協力機構)」と言っていました。具体的には、北東アジアの安全保障環境の改善を目的とし、少なくとも日本を含めてアメリカや中国、ロシア、韓国、北朝鮮の6カ国が参加する機構を目指します。

 核廃絶については、引き続き日本が核保有国と非保有国の橋渡し役を担っていけるようにしたいと考えています。公明党は、本年3月に行われた核兵器禁止条約の第3回締約国会議に、日本政府がオブザーバー参加をすることを強く主張しましたが、政治の壁を前に結果的に実現しませんでした。

 忸怩たる思いではありますが、今回我が党が強く申し入れたことで、政府として熟議が行われたことは確かです。オブザーバー参加は、唯一の戦争被爆国である日本にしか果たせない重要な使命であり、これからも粘り強く着実に前に進めてまいります。

 公明党の「北東アジア安全保障対話・協力機構」に対しては、日本平和学会から学術的な評価を頂戴しています。学会として全面的に協力するとのありがたいお言葉も頂戴しました。また、石破首相からは、政策としてだけでなく、きちんとした論文にして発表したらどうかとのご提案もいただいています。

 石破首相とお話をしていると、広島平和記念資料館をもう一度訪問したいと言います。実は石破首相が広島平和記念資料館に最後に足を運ばれたのは、首相になる前の2023年9月です。そのときに同行したのは公明党の広島市議会議員らで、そのうちの一人はもともと京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)で芸術平和学の准教授をしていた田中勝市議です。石破首相は田中市議の名前を今もよく覚えています。

 この5月には、各国の元首相らでつくる国際人道グループ「エルダーズ」が来日し、首相官邸で石破首相と面会しました。エルダーズは南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が創設した団体です。エルダーズからはコロンビア元大統領のフアン・マヌエル・サントス会長や、元国連事務総長の潘基文(バンギムン)副会長らが参加し、核廃絶や気候変動対策、国連改革などについて意見を交わしました。

 エルダーズの来日の主目的は広島市での会合に参加するためでしたが、石破首相との面会については、公明党が政府とエルダーズの間を取り持つことで実現したのです。そのため、会見の席には私も同席をさせていただきました。

 日本の平和政策は公明党が主導する――そうした決意でこれからも国際社会の平和と安定のために党として様々な取り組みを行ってまいります。

重要な決定の中心には常に公明党が

 過日、公明党が自民党の収支報告書不記載議員に参院選での推薦を出したことに対して、非常に多くのお叱りの声を頂戴いたしました。有権者の皆様、また最前線で日々現場の声を受け止めてくださっている公明党の地方議員の同志にご心配をおかけしておりますことを代表として心苦しく思っております。

 今回の推薦に至った理由を端的に申し上げると、当該の候補者については不記載問題について不起訴となっていることや、説明責任を果たして再発防止の意思を示していることなどを踏まえ、党執行部として判断いたしました。これからも折に触れて丁寧に説明をさせていただく所存です。

 本件については、先日公明党に所属する約3000人の議員全てを対象にオンラインで総会を開催し、執行部から説明をいたしました。党を挙げて長時間にわたり議論をするなかで、私は3月に作家の佐藤優氏と対談を行った際のエピソードを紹介しました。佐藤氏は、公明党が不記載議員に推薦を出すことに触れて、こんな趣旨の話をしてくださったのです。

「人間は誰しも間違えることはある。公明党や支持母体の創価学会が大切にしている"人間主義"の観点から見れば、一度間違えた人間だからといって、切り捨てることはできないはずだ。私が見る限り、公明党が推薦を出した議員に大衆を欺いている人間はいない」

 もちろん、こうした趣旨でご理解を求めようということではありません。しかし、自民党と政策をともに進めていくことを考えるならば、"裏金議員"と一括りに断罪するのではなく、当該の議員それぞれがこの問題とどのように向き合い反省しているかを見極め、判断することも大切であると私たちは考えております。佐藤氏に党のそうした姿勢を"人間主義"と評していただいたことを嬉しく思い、意見の一つとして『潮』の読者の皆様にもこのエピソードを共有させていただきました。

 過去に国政において公明党以外に自民党と連立を組んだ政党で分裂や解散をせず今も残っている政党はありません。なぜ四半世紀にわたって連立を組んできた公明党は、いまなお一定の勢力を保ち、屹立した存在として自民党と対峙できているのか。それは、創立者である池田大作先生が示してくださった確固たる立党精神や理念があるからだと私は考えています。

 同時に、今夏の参院選は、我が党が今後も立党精神や理念を堅持しながら政権与党としての役割を果たし続けることができるか否かの正念場だと感じています。だからこそ、なんとしても勝ち抜いていかなければならないと強く決意しています。

 公明党が連立与党に加わってからの四半世紀で、数多くの政治決定が行われてきました。そのほとんどの背景には三党合意があります。そのときどきで異なりますが、自民・公明に民主党が加わったり、最近では国民民主党や日本維新の会が加わったりといった形で、合意形成が図られてきたわけです。

 その合意形成において、一番汗をかいてきたのが公明党だという自負があります。例えば、2012年の民主党政権時代には、日本郵政グループの経営形態再編を柱とする郵政民営化法改正案を、民主・自民・公明の三党合意のもとで共同提出しました。他党政権下であろうと、是々非々で大衆のために政策を前に進める。それがいまも変わらない公明党の姿勢です。

 この四半世紀で締結された重要な政治決定の中心には常に公明党がいる――そのことを力強く訴えて、この夏の参院選に挑んでまいります。 (5月21日)

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公明党代表
斉藤鉄夫(さいとう・てつお)
1952年島根県生まれ。東京工業大学(現・東京科学大学)大学院理工学研究科応用物理学専攻修士課程修了。工学博士。清水建設勤務を経て93年7月、旧広島1区より衆議院議員に初当選。当選11回。環境大臣、国土交通大臣、党幹事長などを経て現職