【潮10月号の読みどころ】特別企画ほかオススメ記事
2025/09/05月刊「潮」2025年10月号(9月5日発売)のオススメ記事の読みどころをご紹介します。
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《特別企画》「乱気流の時代」を超えて
トランプとキリスト教の奇妙な蜜月──リベラルが生んだ異端児(P.32~)
大澤真幸(社会学者)VS 柳澤田実(哲学者)
「リベラルサイドとトランプは、対立しているようでいて、通底するものがある。リベラルがいう寛容というのは、何事にもコミットせず、何事も絶対化しないということです。つまりすべてを相対化する。この態度を徹底させるとどうなるか。どんな道徳をも冒涜し、どんな人間関係もディール(取引)だと見なすシニカルな人物が導かれる。そう、トランプです。リベラルはトランプを嫌悪し、自分たちとは真逆だと思っているかもしれませんが、トランプに自分自身の真実の姿を見るべきだというのが、僕の考えです」(大澤)(P.37)
持続可能な未来を考える(上)──日本人はなぜ消費税を嫌うのか(P.44~)
神野直彦(東京大学名誉教授)VS 井手英策(慶應義塾大学教授)
「言葉の定義上、無駄をなくすというフレーズはほとんどの有権者が賛成するでしょう。『手取りを増やす』というフレーズも同じです。だって、手取りを減らしたい人などいませんから。反対に、具体的で中身のある主張をすると違いが目立ち、論争が起きてしまう。だから、ポピュリストは『無駄をなくす』とか『手取りを増やす』といった議論の余地のない空虚な言葉を拠り所にするのです。『減税』で一致している勢力も、具体的な制度設計には言及せず、与党や官僚に丸投げしていますよね。そこに、社会の進むべき道や望ましい方向を示すビジョンなど皆無です」(井手)(P.51)
【特集】SNS選挙の深層
参院選で可視化された現役世代の本音(P.58~)
伊藤昌亮(成蹊大学文学部教授/社会学者)
参政党の憲法草案に「八百万の神」「國體」「教育勅語」「修身」というキーワードが並ぶため、「彼らは戦前の日本に回帰したがっている」と見る向きもある。私はそうは思わない。参政党が目指す道には戦前への回帰ではなく昭和回帰、それも1960年代の高度経済成長への憧憬が透けて見える。彼らが戻りたいのは往年の大ヒット映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の世界観だ。彼らはジェンダーフリーにもLGBT(性的少数者)の権利保護にも反発し、家庭における男性と女性の役割分担を明確にしようとしている。お父さんは会社で働き、お母さんは専業主婦として家庭で子どもを育てる昭和の家庭像だ。(P.64)
ルポ
手塚治虫『ブッダ』誕生秘話(P.98~)
前原政之(フリーライター)
あるとき、雑談の中で、手塚は当時のスタッフたちに、「昔の雑誌で『冒険少年』って知ってたかい?」と語りかけた。そして、自らが秘蔵していた『冒険少年』数冊を持ってきて見せたうえで、同誌への熱い思いを次のように語ったという。「この本からは何か特別な情熱みたいなものを感じたよ」「でも、この雑誌は僕が上京したころには廃刊になっていたんだ。(中略)自分から是非描きたいと思った雑誌は、当時はこの本くらいだったねエ……」(中略)『希望の友』の創刊(1964年)当時にはすでにマンガ専門誌が林立していたが、その中にあって同誌が児童文学などの読み物に重きを置いていた点も、『冒険少年』との連続性を感じさせる。つまり、かつて憧れた『冒険少年』と‶同じ匂い″を、手塚は『希望の友』に感じ取ったのではないか。だからこそ、自らの意志で『ブッダ』を連載したのだろう。(P.102)
【民衆こそ王者──池田大作とその時代〈識者の声〉篇】
信仰によって世界と人生を広げた民衆たちのドラマ(P.140~)
開沼 博(社会学者、東京大学大学院准教授)
離島のように中央から離れた周縁で生まれ育つと、どうしても生きる「世界」が狭くなってしまう。仕事も生活も、地元で閉じ、抜け道がない。そうした人生に創価学会は「別の軸」を入れる。伝統やしがらみとは異なる思考を促し、新たな人間関係の作り方、人生の目標の立て方を教える。創価学会に入ることで、周縁で暮らす人々はより広い「世界」に接続した感覚をもつわけです。創価学会を媒介に「日本、世界に自分と同じ志、同じ価値観をもった人々がいる」と実感できる。(P.143)
凡夫からボサツへ──仏教学から見た創価学会の現代的意義(P.148~)
羽矢辰夫(仏教学者、元青森公立大学教授、創価大学名誉教授)
創価学会の思想の根幹である「人間革命」という言葉をどうとらえているのか。会員に尋ねたところ、一人ひとりが自分の言葉で、自分の生活や活動のなかで実感している「人間革命」について自信をもって語ってくださったのです。これはすごいことです。池田先生の指導や創価学会の教義を、一人ひとりの会員が自分ごと化しているのです。創価学会の教義を、会員の一人ひとりが生活のなかで活かしているのです。だからこそ会員一人ひとりが、自分の言葉で「人間革命」を表現することができるのです。(P.151)
※10月号では、「民衆こそ王者──池田大作とその時代 〈火宅を出ずる道〉篇」は休載です。