【独占配信】前衆議院議員いさ進一は参院選をどう見たのか
2025/07/242025年7月20日に投開票が行われた参議院選挙。与党の自民党と公明党が議席を減らした一方、野党では議席を増やす新興政党が相次ぎ、本格的な多党制が幕を開けた。参院選の結果をどう見たのか。公明党の伊佐進一前衆議院議員に話を伺った。
(7月22日インタビュー、聞き手=潮プラス編集チーム)

――このたびの参議院議員選挙の結果をどう受け止めていらっしゃいますか。
はじめに、この猛暑の中、また土砂降りの中でも、「より良い政治をしてほしい」「より暮らしやすい日本社会を作ってほしい」との思いで、たくさんの応援をいただいた党員・支持者の皆様に、改めて深く御礼申し上げます。皆様に支えられて、全国各地で議席を獲得することができました。本当にありがとうございました。
しかし、残念ながら14議席から8議席へと議席数を減らしてしまい、党員・支持者の皆様と同じく、私も悔しい気持ちでいっぱいです。正直、自分が落選した時よりも悔しい思いをしております。落選した方々は公明党の実務を担っている大事な議員であり、政府・与党にとっても重要な議員でした。
現在の自公政権において、自民党と公明党では国会議員数に10倍近い開きがあります。10分の1の人数で自民党と同じように政策を前に進めていくのは大変なことです。国民の皆様の声を伺い、国会質問をして、政府・各党との調整を進めていく。公明党の国会議員は、それら全部をこの少ない人数でやるために、一人が十倍の仕事をしてきたと思うんです。こうした有為な人材を失ってしまったことが本当に悔しくてなりません。
――国政選挙における議席減に歯止めをかけ、公明党が支持を拡大するため、いま何を変えていくべきだとお考えですか。
公明党も結党から60年が過ぎました。時代は激しく動いています。その中で、何が変えてはいけないもので、何を時代とともに変えていくべきか。そのことを考え模索している議員はたくさんいます。次世代を担う若手たちが、皆様に応援してもらえる党になろうと、一歩二歩と前進している。変革の意識をもって、公明党の今の課題を洗い出して、変わろうと挑戦しています。そこには希望があります。
いままでやってきたことを変えるのは簡単なことではありません。前のほうが良かったという方もいるかもしれない。新たな試みに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。そういった声も受け止めながら、我々若い世代が真剣に悩み、公明党のあり方を模索しているという点を最初にお伝えしたいです。
そのうえで、今回の結果を真摯に受け止め、しっかりと分析・反省することは重要です。選挙のたび、議員本人や党自身の力量が足りなかったと総括されます。もちろん、落選は議員本人の責任であり、党の力不足もあったと思います。ただ、それだけで総括を終わらせてはならないとも思っています。
そうした意識で、私なりに分析・総括したことを6項目に分けて提言させてもらいました(※)。 詳しくは7/22のニュースライブで発言していますので、そちらを見ていただければと思います。
――ニュースライブ内では、自民党との関係にも触れられています。
私は自民党と連立解消すべきだとは思っていません。今の政治状況の中で、本当に責任を持って政権運営できるのは、自公しかないと思っています。だからこそ、両党がどれだけ緊張感を持てるかが大事です。もっと緊張感を持った関係にすべきだと私は思っております。
たとえば自民党の不記載議員3人に公明党が推薦を出した。もちろん、前回の衆院選の総括から、今回の参院選では一定の基準をつくって対応しました。
しかし、これは理屈であって、世間がどう感じるかは別問題です。とりわけ、支持者の皆様は、「政治とカネ」の問題に対して、より厳しい対応を期待していたはずです。皆様がどう感じるかという点をもっと重視すべきだったと思います。
「政治とカネ」の問題については、最終的に公明党の改革案が通りました。しかし、そうした事実だけでなく、「公明党はちゃんと言ってくれている」「公明党が意見しているから自民党も変わってくれるかもしれない」と国民の皆様が受け止めていただけるよう、もっと厳しい姿勢で対応すべきだったと思います。
――公明党が政権与党の一角を担っているからこその苦悩だと思います。
自戒も込めて、“自分たちは与党慣れしすぎてないか”と、公明党は常に自らに問うべきだと思います。政府の論理や自民党の論理が分かるようになった結果、与党内においてただ単に物分かりがよい政党になってはならないと思います。
別の言い方をすれば、公明党は問題設定能力のある政党であり続けるべきだということです。世の中の根本的な事象に対して、「これっておかしいんじゃないの?」と真摯に正面から問う能力です。
最近では、野党が「103万円の壁」や「外国人に関する政策」などについて問題提起をしました。内容の是非はあるものの、ワンイシュー(1つの政策を争点として訴えること)が国民へと届いたことは事実です。
かつて、公明党は増税時に軽減税率の導入を提案・実現しました。自民党も野党も経済界も反対でしたが、唯一、世論だけが味方になってくれました。食料品の消費税は下げてほしいという国民の声が多かったのです。このように公明党にも特定の争点を掲げて勝負してきた歴史があります。
「103万円の壁」については、最終的には公明党が必死に調整をして、「160万円への引き上げ」の実現にこぎつけたわけですが、そもそも、野党が声を上げる前に、「103万円の壁が問題ではないか」と与党内において強く提起することも公明党がやるべきだったと思います。誰かが問題提起したことを調整していくだけでなく、大きな問題提起を公明党ができているのか。その点について私も胸に手を当てて考えていきます。
後半:公明党はSNS選挙にどう向き合うべきか に続く
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伊佐進一(いさ・しんいち)
1974年大阪府生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。米ジョンズ・ホプキンス大学院で修士号を取得。文部科学省を経て、衆議院議員。当選4回。元厚生労働副大臣。現在は公明党中央幹事として、SNSの発信に加え、全国各地で精力的に活動する。