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【独占配信】公明党はSNS選挙にどう向き合うべきか

720日の参議院選挙においても、SNSなどを活用した熾烈なネット選挙が繰り広げられた。公明党も若い世代や無党派層へのアプローチのために力を入れたSNS戦略。党内で精力的にSNS発信を行ってきた伊佐進一前衆議院議員に、SNS選挙のあり方について伺った。(722日インタビュー、聞き手=潮プラス編集チーム)

――伊佐進一さんは精力的にSNSの発信をされています。今後、公明党議員はSNSにどう向き合うべきだとお考えですか。

私は、全国約3000名の公明党議員に対して、“全員がSNSを頑張ってください”と訴えるつもりはないんです。議員の中にはSNSが得意な方もいれば、地域に根差した対話で信頼を得ている方もいます。同じ議員であっても、得意・不得意はあります。そこは桜梅桃李で、それぞれの議員の特性にあわせた活動が大切だと思います。

私の場合は、SNSが性に合っていたので、YouTubeX(旧ツイッター)での発信に力を入れるようになりました。今後は、SNSが得意な議員、SNSに意欲的な議員を中心にして、公明党の理解の輪を広げていってほしいです。


――「今後の選挙はSNSが重要」という風潮の中、いささんの返答は意外でした。

有権者はSNSの情報だけで投票先を決めているわけではないですし、SNSだけが支持基盤の議員はむしろ脆いと思っているんです。

先日、私の地元である大阪6区(守口市、門真市、大阪市鶴見区、大阪市旭区)のお祭りに参加してきました。お祭りに参加されている方のほとんどは、“YouTuberいさ進一”のことを知りません。YouTube上で私の代名詞となった“ラブ&ピース”や“ミラーボール”といったフレーズで声をかけてくる方も、ほとんどいません(笑)。むしろ、「落選した議員さんなのに、お祭りに顔を出してくれたんやね」と優しく声をかけてくださるんです。

顔と顔を突き合わせて一人ひとりの声を聴く、いわば“地上戦”がやはり重要なんです。公明党議員はこうした地道な活動を徹してやり抜き、信頼を築いてきました。選挙区内を誰よりも回って、朝から駅に立ち、一人で街頭演説をやってきました。そこで皆様の声を聴き、実現していく。これが公明党の強みなんです。

前回の衆院選で、私は誰よりも地域を回り抜いた自負があります。ただ、大阪でいえば日本維新の会がSNSを駆使した、いわゆる“空中戦”で認知を広げたことで、私は苦杯を喫しました。なので、落選後は、ひたすらSNSに徹し、発信力を磨いてきたつもりです。

公明党のサブチャンネル、毎朝のニュースライブなど、いろいろな挑戦をしてきました。そうした取り組みが、公明党に触れてこなかった層に届き、「公明党ってすごいやん」と知ってもらう機会になりました。公明党を応援する際のツールにもなりました。そこに一定の評価はあったと思います。

ただ同時に、私たちのSNSに触れた人たちが「公明党に投票してみよう」となるまでにはあと一歩、越えなければならない壁があると感じたことも事実です。発信力を強化した先に、何を伝えていくのか。公明党に投票することで、どう社会が変わるのか。それを有権者がイメージできなければなりません。この点は今後の党の課題だと思います。

私自身は参院選を一区切りにして、SNSでの発信に加えて、もう一度、地域に根差した活動に力を入れていくつもりです。地域に根差した活動とSNSでの活動、この両方をやり抜くことで有権者からの確かな支持が得られると思っています。


――SNSでの発信に挑戦する上でのポイントはありますか。

SNSで重要なのは、議員自身の“体温”であり、“生身の自分”を伝えていくことだと思います。議員としてのリアルな活動の様子を発信する。なぜこの政策に取り組むのか。その想いを伝える。時には生活感の伝わる内容や、何に興味・関心があるのかが分かる内容を発信しても良いと思います。

逆に形式張った内容では、なかなか見てもらえません。たとえば、私が配布している「いさ通信」の内容をそのままSNSに掲載するだけで関心を惹くことは難しい。紙媒体とSNSは違います。SNSでは目の前にいる知人に話しかけるような自然体の発信を心がけ、親近感を持ってもらうことが重要だと思います。


――大多数に向けた演説のようになってしまってはいけないということですね。

私が心がけているのは、一人ひとりに直接語りかけていこうとする姿勢です。SNSの発信はネット上の「どぶ板選挙」だと思っているんです。

実は、大規模な街頭演説も同じです。私もたくさんの人の前でマイクをとらせていただくことがありますが、そこで意識しているのは、マス(集団)ではなく、そこにいる一人の顔を見て話すことです。

子連れのお母さんがいれば、「子育ては大変ですよね。公明党はこうした支援をやっていきたいと思っています」と訴える。何百人もの聴衆に話しているのではなく、有権者一人ひとりに語りかけています。

どこまでも一人の声を聴き、一人に語りかける。SNSも同じで、大勢の誰かに向かってではなく、その先にいる一人と対話する意識で発信していくことが肝心だと思います。すると、不思議とインプレッション(表示回数)も伸びていくんです。


――最後に、読者の皆様への一言をお願いします。

公明党には変えてはならないものがあります。それは「大衆とともに」との立党精神であり、「誰一人取り残さない」という理念です。時代が変わり、戦い方が変わってもその精神だけは変わりません。

今回の選挙結果を受け、自公は参議院でも少数与党となりました。日本政治はますます不安定になっていくと思います。新興政党の台頭と多党化によって、時には政党間の対立が深まり、社会に分断が広がることもあるでしょう。そうした中で、60年以上の歴史を持ち、結党以来、すべての人が幸福に暮らせる社会の実現を目指し、中道政治という確かな軸を保ち続けてきた公明党が果たす役割はますます大きくなると思います。

混迷を極める世界だからこそ、平和を実現するために公明党は戦う。物価高が続く厳しい経済状況だからこそ、一人ひとりの暮らしの安心を実現するために公明党は全力を尽くす。そうした活動を続けていく中で、皆様にさらに応援したいと思ってもらえる党になっていくと固く決意しています。

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伊佐進一(いさ・しんいち)
1974年大阪府生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。米ジョンズ・ホプキンス大学院で修士号を取得。文部科学省を経て、衆議院議員。当選4回。元厚生労働副大臣。現在は公明党中央幹事として、SNSの発信に加え、全国各地で精力的に活動する。