クーリング・オフ
2023/08/04ushio情報box 潮マネー講座
(『潮』2023年8月号より転載)
クーリング・オフ
クーリング・オフとは、一定期間内であれば無条件に契約を取り消すことができる制度で、クーリング・オフすれば、支払った代金は返金されることになっています。
訪問販売や電話による勧誘、路上でのキャッチセールスなど、特定の取引が対象です(下の図参照)。こうした取引は、消費者にとっては「不意打ち」のような勧誘であり、冷静な判断で契約に至ったとはいえない場合も多々あります。
契約を取り消したい場合、決められた期間内(契約書面を受け取った日から起算して8日以内など)に通知をしなければなりません。クーリング・オフは、ハガキなど書面で行うのが一般的でしたが、2022年6月から電子メールやファックスなど電磁的記録と呼ばれる方法でも可能になり、制度がより使いやすくなりました。
電子メールなどでクーリング・オフする場合は、書面で行うときと同様に、対象となる契約を事業者が特定するために必要な情報(契約年月日、契約者名、購入商品名、契約金額など)やクーリング・オフの通知を発した日を記載します。
通知後は送信したメールだけでなく、送信した画面をスマホやパソコンでスクリーンショット(表示されている画面をそのままの状態で画像として保存すること)しておいてください。
認知症の人の契約でも
無効にするのは難しい
高齢社会となり、認知症や判断能力の衰えた人を狙った勧誘が増えています。価値の低い商品を高額で購入させたり、必要のない工事(屋根工事やシロアリ駆除など)をしてしまう事例は少なくありません。ご家族はさぞかし心配でしょう。
「認知症の人が契約してしまったものは無効だ」と考えるかもしれませんが、クーリング・オフ以外の方法では、認知症の人が行った契約であっても、取り消すことは容易ではありません。契約をした相手から「認知症を患っていることは知らなかった」「契約をしたときは判断がしっかりしていた」などと主張されると、争うのが難しいからです。
大きな被害に遭うことが不安な場合は「成年後見制度」を活用して、ご本人の財産を守ることが可能です。後見人がつけば、契約を取り消すことができます。
ただし、「成年後見制度」の後見人は家族ではなく、家庭裁判所が選任した弁護士などが多く、報酬が発生します。ご本人が亡くなるまで必要になりますので、申請するかどうかは、よく検討してください。
家族が早く気づくことが大切
クーリング・オフ期間内であればだれでも、通知することで契約をなかったことにできますので、家族が早く気づくことが大切です。
日ごろから、家の中に見慣れない商品や書類が増えていないか、知らない工事の業者が出入りしていないかなど、変わった兆候に気をつけてください。一度被害に遭うと、次々と契約させられることが少なくありません。被害は最小限に抑えられるようにしましょう。
契約書の発行がなされていないとか、契約書にクーリング・オフの方法が記載されていない場合は、クーリング・オフ期間を過ぎていても契約を無効にできることがあります。
各地の消費生活センターに対応を相談しましょう。
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文:北見久美子(きたみ・くみこ)
ファイナンシャル・プランナー&年金アドバイザー