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新NISA

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(『潮』2024年1月号より転載。イラスト=櫻井通史)

 

 2024年1月から、改正されたNISA制度がスタートします。

 従来のものを「旧NISA」、新たなものは「新NISA」と、区別して呼ばれています。

 新NISAの制度は、お金を成長させることで、私たちの老後や趣味など生活にゆとりを生み出すようなメリットがあるものです。

 しかし、私が個人相談や知人と接していると、10人中8人が新NISAについて、「聞いたことはあるけれど、自分から始めようとまでは思っていない」という感触です。また、旧NISAと新NISAでは、どこが変わったのか、関心が薄い人も少なくありません。

 そこで今回は、新NISAについてご紹介します。

 

非課税枠の拡大と恒久化

 旧NISAと新NISAの大きな違いは、「非課税枠」(非課税で資金を活用できる金額の枠)が大きく広がり、一人あたり1800万円まで利用できるようになったこと。そして、その利用枠が「恒久化」(期限なく、生涯利用できる)されたことです。

 利用できる金額が大幅アップしたことで、「値上がり益や配当金には課税されない」という従来のメリットが、さらに増えたわけです。
1800万円をうまく新NISAで活用できれば、たとえば3%の配当や分配金が出るような運用であれば、年間54万円が丸々受け取れます。本来なら課税されてしまう約20%(10万8000円)を引かれずに受け取れるわけです。また、値上がりして売却した場合も、値上がり分の利益に課税はされません。

 売却した翌年には、その空いた「非課税枠」が復活して再利用できます。このとき、売却した商品が大きく値上がりしていても、その商品を買ったときの価格(簿価)で復活します。

 

5年で非課税枠を使い切る人も

 1800万円は大きな金額の枠ですが、一年間に購入できる金額は、360万円までとなっています。また、1800万円は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」からなっており、それぞれ年間最大120万円と240万円が使えます。

 このように二つの枠に分けた背景として、「つみたて投資枠」は、コツコツと資産づくりをしていきたい若年層を意識し、「成長投資枠」は現在、余裕資金があり、長く積み立てることに抵抗がある中・高年層に配慮しているとされています。

「つみたて投資枠」と「成長投資枠」をフル活用すれば、最短5年で1800万円を新NISAの非課税枠で使い切ることができます。以後、意識しなくてもずっと運用されるので、中・高年層では5年の購入計画を立てている人が少なくありません。

 新NISAの「成長投資枠」で気をつけたいのが、いわゆる回転売買の営業です。「つみたて投資枠」では、金融庁の基準を満たした手数料が低い商品しか売ることができません。一方、「成長投資枠」では、個別企業の株のほか、「金融機関の手数料稼ぎ」といわれるような投資信託を顧客に売ることができます。

 新NISAは生涯にわたって上手に活用していきたい制度です。検討する時間は十分にありますので、「金融機関から勧められたから購入する」のではなく、基本的な制度や投資商品を理解してから、スタートすることをおすすめします。

 

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文:北見久美子(きたみ・くみこ)
ファイナンシャル・プランナー&年金アドバイザー

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