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公明党は最も国民の側にいる政党(上)

2023年6月、政府は「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。
歴史的転換点を迎えた日本の子育て政策。子ども・子育てに関する政策実現を主導してきた公明党への評価と期待について、教育学者・日本大学教授の末冨芳氏に綴っていただきました。
(月刊『潮』2023年9月号より転載、全2回中の1回目)

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すべての子どもを
切れ目なく支援する

 613日、政府は「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。児童手当の所得制限撤廃や第3子以降の手当の拡充が話題になりがちですが、全体としては〝すべての子ども・子育て世帯を切れ目なく支援する〟という方針に貫かれた内容となっています。

 なかでも、親の就労要件に囚われない「こども誰でも通園制度」(仮称)や、フリーランス・非正規に対する産休・育休に伴う社会保険料免除と休業給付の拡充などは、経済的な理由で結婚や出産を躊躇する若者たちの悩みに寄り添った施策です。

 そもそも、親が働いていなければ子どもを保育園に預けられないというのはおかしな制度です。産後の母体の体力の消耗は実に激しく、分娩時の出血が多い場合には退院後もなかなか動けなかったりします。そうした心身ともに不安定な時期の母親と生後間もない子どもを孤立させてしまっては、事故や虐待のリスクも高まってしまいます。

 子どものことを考えるならば、母親が辛い時には保育園に預けたっていい。そう言うと、「それでは子どもが愛情に飢える」という声が未だに聞こえてきますが、すでにそれらの意見を否定するエビデンス(根拠)は得られています。

 東京大学の山口慎太郎氏らの研究では乳幼児の時から保育園に預けるのは、子どもの発育にとっても、親のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的な幸福)にとっても有益であることが証明されています。(山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』光文社新書、2019年)

「こども未来戦略方針」の閣議決定は自民党だけでなく、連立を組む公明党のリーダーシップが何より大きな役割を果たしました。公明党は2006年に「少子社会トータルプラン」を、昨年11月に「子育て応援トータルプラン」を策定するなど、一貫して〝こどもまんなか〟の姿勢を貫いてきました。今回の決定は、そんな公明党に感化されて自民党もついに変わりつつあることを感じさせました。

 方針のなかで、私が最も評価したのは、子ども・子育てに関する予算が、貧困世帯や障がい児・医療的ケア児など、最も大変な思いをしている方々への支援策の拡充のために、最後の最後で5000億円程度も積み増しされたことです。これも最後まで訴え抜いたのは公明党でした。

 もちろん、自民党にも子ども政策への思いがある議員はいますが、どうしても党内のさまざまなしがらみによって彼・彼女らの思いが阻まれてしまう節が見受けられます。そんななか、公明党は正面を切って総理に申し入れをし、壁を突破する――私はそんな場面を何度も目の当たりにしてきました。

 

 子育て政策の歴史的転換点

 コロナ禍中、子育て世帯への未来応援給付金が議論された際も、公明党は一貫して所得制限を設けない方針を主張しました。最終的に自民党の強い意向で所得制限が設けられましたが、公明党は〝差別があってはならない〟との考え方を最後まで貫きました。その姿勢が自民党内の考えを徐々に変えていき、今般の児童手当の所得制限撤廃につながったと捉えています。

 先日、ある院内集会に参加した自民党の首相経験者が子育て政策に関して「今この国は転換点にある。変わっていかなければならない」と述べていたことが印象的でした。その方は児童手当に所得制限を設けた張本人の1人です。ですが、私はその言葉を聞き、自民党がこの数年で考えを改めている一つの証左だと受け止めています。

 本年4月に施行となった「こども基本法」と新たに設置された「こども家庭庁」は、いずれも公明党抜きには実現できなかった施策です。当初、自民党の中には強固に反対する議員もいました。ところが、公明党が2021年の衆議院選挙で公約に掲かかげて戦い、反対する自民党と粘り強く対話を重ねてきた結果、自民党内でその重要性への理解が広がったのです。

「こども庁」ではなく「こども家庭庁」となったことへの批判が一部ありますが、子どもにとっての家族の重要性は「子どもの権利条約」の前文にも明記されています。子どもも家族も応援することが、こども家庭庁の役割なのです。

 こども基本法やこども家庭庁に象徴される〝こどもまんなか社会〟の実現に向けた取り組みは、日本の子育て政策における歴史的転換点と言えます。そして、その転換を成し遂げたのは公明党なのです。

 

議論するべきは
子どもの扶養控除

「こども基本法」は、すべての子どもを差別することなく応援していこうという法律です。法律として成立した意義は非常に大きい。こども基本法ができる前の教育政策は、教育基本法に定める教育の機会均等に基づいて制度設計されていましたが、日本では教育の機会均等は長く低所得層にだけ少し手厚くすれば良いという程度の貧弱なイメージしかありませんでした。そのため、すべての子どもの学ぶ権利を保障するために子ども政策の所得制限をなくそうという訴えは、昔も今も「金持ち優遇」だと批判されがちです。

 一例を挙げれば民主党政権時代の高校無償化です。これ自体は良い政策だったのですが、子どもの権利を十分に理解してつくられたものではないという危うさを孕んでいたため、政権交代後、自民党の下村博文文部科学大臣の時代に、残念ながら所得制限の仕組みが導入されてしまいました。

 対して公明党は、こども基本法ができる前から、先の未来応援給付金の時も含めて、いつも大事なタイミングで所得制限を設けないことの重要性を訴え続けてきたのです。高校無償化に所得制限が設けられた時も、公明党は必ずしも良い判断ではないという考えでした。だからこそ2019年の10月から、消費税増税による増収を活用する形で、35歳の教育・保育の無償化を所得制限なく実現したことは極めて重要な意味をもっています。

 そして今、「こども基本法」が施行されたことで、まずは差別なくすべての子どもたちの公平性を担保し、その上で低所得層や障がい児・医療的ケア児などの困難を抱える子どもたちを手厚く支援していく流れができたのです。

 とはいえ、課題はまだまだ残っています。最も大きな課題は子ども政策の財源のあり方です。今回のこども未来戦略会議で残念だったのは、財界の委員から「児童手当を拡充するのだから、子どもの扶養控除をなくすのは当たり前だ」との意見が挙がったことでした。これこそまさに、私が以前から指摘してきた日本の〝子育て罰〟の最たるものです。

 大学生も高齢者も働いている主婦も、生存権保障のために扶養控除の対象であるのに、なぜ子どもだけが外されなければならないのか。財界の委員の意見は、公明党が子育て応援トータルプランで掲げた「次世代育成のための国民会議」(仮称)とは正反対の発想です。

 こうした意見が差別であるという考え方も、こども基本法の施行によって少しずつ広まってきています。0歳から15歳まで扶養控除がないのは差別であり、いくら児童手当をもらっても高齢者の年金のほうが充実しています。

 高齢者ではなく子どもが狙い撃ちされるのは、選挙権がないからです。自民党は公明党のおかげで変わりつつありますが、昭和の自民党の古い考え方が今なお財界に残っていることを残念に思いました。基本法ができた今、子どもの扶養控除の問題は、もう一度しっかりと国を挙げて議論するべきです。


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教育学者・日本大学教授
末冨 芳(すえとみ・かおり)
1974年山口県生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・神戸大学大学院)。専門は教育行政学、教育財政学。文部科学省中央教育審議会委員等を歴任。著書に『教育費の政治経済学』など。