2026年2月の解散総選挙では、自民党が単独で3分の2を占める圧勝で、新党「中道改革連合」はわずか49議席に留まる惨敗を喫した。なぜこうなったのか――。加害者か被害者かを問うだけでは見えてこない深層に迫る評論家・與那覇潤さんによる連載「平成の回廊――創価学会と日本社会」第3回原稿。
(月刊『潮』2026年6月号より先行公開)
「だました人」はいつも出てこない
多くの人が、先日の選挙でだまされていたと言う。
「みながみな口を揃えてだまされていたという。私の知っている範囲ではおれがだましたのだといった人間はまだ一人もいない……多くの人はだましたものとだまされたものとの区別は、はっきりしていると思っているようであるが、それが実は錯覚らしいのである」
敗戦から1年を経た1946年の夏、映画監督の伊丹万作(同業の十三の父)が記した一節だ。
「だまされていた」として自身を免罪する国民の安易さだけでなく、社会が道を誤る原因は容易に「誰のせいだ」と特定できないことを喝破する警句として、今日もよく引かれる。
衆院解散に向け加速のついた2026年1月13日、週刊誌『FLASH』のサイトが永田町に出回る「自民党調査」の数字を報じた。自民が当時の199議席から260に躍進し単独過半数を回復する一方、立憲民主党は148から半減し70となるとの予測だ。公明党も、24から18へ党勢が後退するとされた。
立憲・公明の衆院議員が合流し、総選挙には新党で臨むと発表されたのは、翌々日の15日。こうした情勢への危機感があったことはまちがいない。だがその新党「中道改革連合」は、予想からさらに半減した49議席の大敗。
それなら元の政党のまま戦ったほうがよかった、「だまされていた」との声が落選した議員から上がるのは、人情としてわかる。しかし伊丹が射抜いたとおり、結果論で自らを甘やかすだけでは、反省になりはしない。
今回も「おれがだましたのだ」と名乗る人は、出てこない。1月16日に中道改革連合の党名が決まり、19日に「5つの政策の柱」を含む綱領が発表されるまでの経緯は、ヴェールに包まれたままだ。
減税ポピュリズムになぜ陥ったのか
3月16日、「合流前に双方から相談された、おそらくは唯一の学者でしょう」と自負する識者を研究室に訪ねた。慶應義塾大学教授の井手英策(財政学)。多くの政党に、あるべき社会保障を提言してきた「大きな政府」の論客として知られるが、近年は安易な減税や給付金ばかりが「新たな福祉」のように囃される風潮に、警鐘を鳴らす。 いまも納得しかねる表情で、井手は中道結成の舞台裏をふり返った。
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