世帯の半数近くに井戸――給水義務を支援するという視点
発災直後に続き、8月10日から11日にかけて、八代市に向かいました。この期間は、公明党の、昨年当選した川村雄大、原田大二郎、司隆史、佐々木雅文参議院議員が被災地で小さな声を集めて回りました。
当時、どう取り組めばいいか悩んでいたことは生活用水の確保でした。避難所には全国から皆様の真心で、ペットボトルなど飲料水が充分に届いていました。しかし、お風呂や洗濯に用いる、生活用水はまったく足りていませんでした。猛暑のなか被災した皆様はお風呂に入れず、洗濯もできず、なかには汗疹ができたとお訴えになる方もおられました。
八代市の水道普及率は52%。それ以外の水は、井戸の活用に依存しているのです。その井戸の多くが、地震によって破損し、使えなくなってしまいました。
水道は公共物だから、行政が復旧しようとなります。しかし、井戸は私有財産です。崖崩れで家が壊れたからといって、私有財産である家の修理に行政の支援はあまり見込めません。同様に井戸の修繕に対する特段の支援を政府に求めても、政府がこれまでの考え方を踏襲していたことは仕方がないことでした。しかし、井戸は私有財産なので、修繕は自前でやって下さいと突き放したままでは、被災地はいつまでたっても水を確保できない。何かいい考えはないか。どう理屈をつけるか。私も悩みに悩みました。
突破口となったのは、自治体に課せられた給水義務です。ならば「井戸は私有財産だ」と杓子定規なことは言わず、視点を変えて、国は自治体の給水義務を支援するために、井戸の修繕に国費を投入するべきではないのか。
8月10日、公明党本部と公明党熊本県本部の災害対策本部会合を合同で開催し、私は政府に対して「井戸は私有財産であることから支援の対象としないとのこれまでの考え方と、被災した自治体の給水義務を国がどう支えるのかについて考え方を整理して欲しい。井戸を修繕して活用するほうが現実的な解ではないか。井戸の修繕を災害救助法の対象として公費を投入してはどうか」とあらためて政府に提言しました。
その後の政府の対応は迅速でした。翌8月11日には、国、県、市、全国さく井協会からなる「井戸水対応チーム」が設置されたのです。井戸の調査と洗浄が無料で行われるようになりました。さらに、政府は公明党の災害対策本部会合にて、井戸の支援に災害救助法を適用させると初めて説明しました。
その後、8月21日に、高市早苗首相が政府の非常災害対策本部会議で「井戸を災害救助法の対象とする」と表明したのです。極めて異例なことに、私有財産の井戸の修繕に対する財政支援が実現することになりました。その後、制度の裏付けは、災害救助法に基づく住宅の応急修理によるものと整理され、一世帯あたり最大75.5万円が支給されることになりました。公明党の訴えが、政府を動かした瞬間でした。
被災者でもある議員が現場で東奔西走
なお、この経過のなかで、地方議員の対応はさらに丁寧でした。政府の「井戸水対応チーム」は、井戸を掘削する全国さく井協会に井戸の調査と洗浄の支援を頼むことにしました。すると、「八代市の地質と現場の特徴をよく知る地元の業者が外されていて、利用できなくなっている」とのお声を、城下広作熊本県議と八代市の橋本隆一市議、西和明市議が受け止めたのです。地元の業者が、井戸水対応チームの取り組みから外れてしまった理由は、全国さく井協会に加入していなかっただけのようでした。
そこで8月25日、公明党は全国さく井協会に加盟していない地元の事業者や団体も事業に参加できるよう要望して政府と議論を開始。政府は、「熊本県が作成する業者のリストに追加されれば、地元業者の活用は可能」と考え方を整理しました。その旨が政府から熊本県に、また城下県議から熊本県に伝えられ、今は地元業者も事業に参加できるよう方針が修正されています。地元の業者が支援に関わっていただけると、中長期的視点で、井戸に問題が生じたときにフォローをしてくれます。地元業者が関わることで支援の質は格段に高まるのです。
こうした公明党のきめ細かな提案は、机上で生み出されたわけではありません。橋本市議や西市議は、自身も被災しながら、地元のニーズを一つずつ集めて回りました。その結果が「たとえ私有財産であろうが、井戸は生存のために必須のインフラだ。井戸の修繕に災害救助法を適用するべきだ」という新たな提案につながっていったのです。
宇城市の河野正明市議や宇土市の中野洋一市議と情報交換していた際にも、公明党の地方議員でなければ汲み取れない精緻なニーズの把握を実践しているお姿に頭が下がる思いがしました。
「生活用水が足りなくて洗濯ができない」と聞いたならば、「では、洗濯支援サービスを検討しましょう」と発想することもあっていいでしょう。しかし、実際に避難所を回りながらお話を伺うと、避難所に洗濯機を置いて欲しいというお声ばかりなのです。「洗濯は自分のペースでやりたい」というお気持ちは、被災した河野議員や中野議員が既に現場で受け止めており、私たち国会議員に共有して下さっていたお声でした。地域を歩く地方議員こそ、被災者のニーズを正確に把握しているのです。
ならば、避難所で、被災したご自宅で、洗濯機を回すための生活用水を確保しなければなりません。だからこそ「八代市の井戸を、個人所有とはいえ早期復旧しなくてはならない、そのために何ができるか」という熱量ある考えにもつながっていったのだと思います。
このように地方議員と国会議員との対話は重要です。国会議員がトップダウン型で対策を打つスタイルだけでなく、訪問・対話を通じてボトムアップ型で現場から対策を絞り出していく。その特性を組み合わせて、地方議員と国会議員が一緒に力を合わせて現地での課題解決に向けて取り組んでまいりました。
