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夏の不調をリセットする生活習慣

体を「守る」姿勢と鍛える「攻め」の姿勢で、夏の暑さに備えます。
特に汗腺を鍛えることがポイントです。
大阪国際大学人間科学部名誉教授 井上芳光さんに教えていただきました。
(『パンプキン』2023年8月号より転載)

 

お風呂に入る習慣

 夏はシャワーだけ、という人も多いかもしれませんが、お風呂に入って汗を出す習慣は、それだけで汗腺を鍛えることになります。汗腺は使えば使うほど鍛えることができる器官で、夏に強くなるためには汗腺をよい状態に保ち、よい汗をかけるようにすることが大切。高齢になると汗腺は萎縮して小さくなり、汗を出すのにも時間がかかり、発汗量も減ります。高齢者でなくとも若者でも、「快適」な汗をかかない暮らしは汗腺を使わないですむわけなので、汗腺の機能を衰えさせます。快適ばかりを求めてしまうと、人間としての機能が衰えていくこともあるのです。人気のあるサウナも汗腺を働かすためにはおすすめですが、基礎疾患などがない方が無理のない範囲で行いましょう。

 
©Freepik

暑熱順化で汗を出すトレーニングを

 夏に向かって気温が高くなると、人間の体は少し遅れて暑さに慣れていきます。これを暑熱順化(しょねつじゅんか)と呼びます。暑熱順化が順調に行われていれば、発汗量が増えて汗に含まれている塩分濃度も低くなるなど、暑くても体温調節機能がうまく働くようになり、熱中症や夏バテになりにくい体になります。まさに暑さに負けない体づくりには暑熱順化が欠かせません。
 近年は、まだ夏にはなっていないのに急に暑くなることがありますが、そんな日に熱中症が増えるのは、暑熱順化ができていない体がいきなり暑さに襲われ、体が対応できないためです。暑熱順化は汗がかける体になることなので、夏になる前から入浴や運動などで汗をかくトレーニングが効果を発揮します。約2週間ほどで汗腺機能も改善し、暑熱順化は完成するといわれていますが、できれば1年を通した運動習慣で汗腺をトレーニングしておくと、暑さ対策としてはなおよいかと思われます。
 汗を出すときに汗腺には水分と一緒に塩分が出ていかないように再吸収する仕組みがあります。汗をかくことで鍛えられた汗腺はこの再吸収能力も優れているため、体から失われる塩分量が少なくなります。そのため汗腺での塩分再吸収能力の優れた人はサラサラな汗をかき、塩分再吸収能力の劣る人はベタベタとした塩分濃度の高い汗をかきます。

 

夏の不調をリセットする秘訣はまだまだあります。
続きは『パンプキン』8月号でお楽しみください。

 

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大阪国際大学人間科学部名誉教授
井上 芳光(いのうえ・よしみつ)
1981年大阪教育大学大学院修了後、神戸大学医学部助手、助教授を経て、97年より大阪国際大学教授。発汗機能の発達・老化およびその性差を生理学的に探究し、その成果に基づき子どもや高齢者の熱中症予防策を提唱している。環境省の『熱中症環境保健マニュアル』編集委員(2004~18年)も務めた。

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