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若者視点で発信する「平和の情報誌」を創刊【平和をつなぐ次世代の語り手たち】

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平和活動は、特別な人だけのものではない。特攻隊員の遺書との出会いを原点に、高校生平和大使や長崎での平和ガイドを経験してきた関口萌さん。忙しい日常の中でも「読むこと」から平和に関われる場をつくりたい――。若者の活動を伝え、支える情報誌『KI NO NE』に込めた思いと、平和を自分事にするための歩みを語っていただきました。

(月刊『潮』2026年9月号より転載)

特攻隊員の遺書との出会い

長崎県佐世保市で生まれ育った私が、平和の大切さを意識するようになったきっかけは、中学3年生の時の修学旅行でした。福岡県の筑前町立ちくぜんちょうりつ大刀洗たちあらい平和記念館を訪れた際、当時の自分と年齢が変わらない若者が、特攻隊員として国のために命を落としていったという事実に強いショックを受けました。

館内に展示されていた数々の遺書の中に「これまで親孝行らしいことは何もできなかったけれど、特攻隊としてお国のために死ぬことが、自分にとって最後の親孝行です」という趣旨の言葉が綴られていました。今とはあまりにも違う価値観に衝撃を受け、彼らがどのような思いで死に向き合っていたのか、その内面に触れたことで、私は初めて「もし自分がこの時代に生き、手紙を書く側だったら」「もし自分がこの手紙を受け取る家族だったら」と、戦争の悲劇を自分自身の問題として地続きに想像することができたのです。


この学びをきっかけに、私は高校1年次から、佐世保の街頭で核兵器廃絶と平和な世界の実現を求める「高校生一万人署名活動」に参加しました。しかし、佐世保での署名活動は、決して一筋縄ではいきませんでした。

佐世保は「被爆県」にありながら、米軍基地を抱える街でもあり、平和や安全保障に対する住民の考え方が非常に複雑で多様な土地柄です。街頭に立っていると、「現実問題として、核兵器は必要だろう」と厳しい野次や批判的な意見を直接ぶつけられることも珍しくありませんでしたが、私はその環境を悲観するのではなく、佐世保ならではの特性として捉え直そうと考えました。


当時、英語が好きだった私は、佐世保に寄港する海外からのクルーズ船の観光客や、街を行き交う米軍関係者の方々に向けて、積極的に署名を呼びかけることに挑戦しました。米軍関係者の中には、「個人的には核兵器をなくしたいという思いはあるけれど、自分の立場上、この署名に応じることは難しい」と苦渋の表情で断られる方もおり、それぞれの立場にある人々の複雑な現実に触れる貴重な経験となりました。


その後は、「第19代高校生平和大使」を務めるなど、平和活動に打ち込む高校生活を送りました。進学を機に上京した私は、大学でも平和活動を続けたいと考えていました。しかし、大学生が気軽に参加できるような団体がなかなか見つからず、気づけば平和活動から遠ざかった4年間を過ごしていました。


さらに大学卒業後、そのまま東京で働き始めてからは、毎日の仕事をこなすことに心身ともに手一杯になりました。あれほど熱心に関心を寄せていた社会問題に目を向ける余裕すらなく、かつては欠かさなかった選挙の投票にすら行けない。そんな理想と現実のギャップに葛藤しながら、3年ほど前、私は故郷である長崎へ戻りました。

歴史を「自分事」として捉えるアプローチ

長崎に戻ると、「もう一度自分の原点である平和に関わる仕事がしたい」という想いが、これまでになく明確になっていました。現在は、修学旅行で長崎を訪れる中学生や高校生を対象に、平和公園や爆心地公園周辺を案内するガイドの活動などに取り組んでいます。


私が大切にしているのは、学生たち自身の言葉と想像力を使って、歴史を「自分事」として捉え直してもらうアプローチです。


例えば、平和公園内には、水を求めながら亡くなった原爆犠牲者のご冥福を祈り作られた「平和の泉」があります。ここを案内する際、私は学生の皆さんに次のような問いを投げかけます。


「今から約80年前の長崎にタイムスリップしたと想像してください。原爆が落とされ、周囲は火の海。あなたが必死に逃げる途中、倒れた人に足を掴まれ『助けて』と頼まれました。皆さんなら、助けますか? 助けませんか?」


学生の皆さんにはどちらの選択をとるか理由もあわせて答えてもらいますが、ここでは助ける・助けないという選択の「結果」に重きを置いていません。それよりむしろ、「命を天秤にかけるような最悪の事態」に陥ってしまうのが戦争であるということ、そして、それをこの問いを通して疑似体験することで、戦争のリアリティを自分事として体験してもらうのが狙いです。


私は被爆当事者ではないからこそ、同じ目線に立って一緒に問いに向き合い、対話を深めていくことを何よりも大切にしています。

平和の情報誌『KI NO NE』

ガイドの仕事と並行して、今年の5月、平和活動に取り組む若者にスポットを当てた情報誌『KI NO NE(きのね)』を創刊しました。この雑誌の名前には二つの意味を込めています。


一つは、平和のために活動する人とそれを応援する人を、「木の根のように支え、つないでいきたい」という想いです。もう一つは、平和活動に必要な「粘り強さ」の象徴です。大樹が何十年、何百年という長い歳月をかけてじっくりと根を張っていくように、平和への歩みにも根気強さが必要です。「核兵器の廃絶や戦争をなくすことは難しい」という厳しい現実に直面しても、決して諦めずに歩みを止めない姿勢は、まさに被爆者の方々が示してくださった姿そのものです。私たち若い世代もその姿勢を受け継ぎ、一過性ではない息の長い活動を続けていきたいと考えています。


この雑誌のコンセプトには、「読むことから始められる平和活動」を掲げています。かつて私自身が東京での生活に忙殺され、葛藤した時期があったからこそ、日々の暮らしの中で無理なく平和に触れられる時間を作りたいと考えました。自宅でリラックスしながら雑誌を読み、思いを巡らせる。そんなひとときも、平和を育む大切な一歩だと思うのです。「平和活動はハードルが高い」「特別なことをしなければならない」というイメージをなくし、誰もが自分らしい形で平和に関わるきっかけになればと願っています。


また、本誌の収益の一部は、取材に協力してくださった若者たちの活動資金として還元されます。読者の皆様も、『KI NO NE』を開くことで、若者たちの平和活動を地中で支える「木の根」となる。そんな温かい循環を、育んでいきたいと思っています。


平和への思いを自分らしいライフスタイルの中に息づかせ、楽しみながら育んでいく――。そうした一人ひとりの積み重ねこそが、次の世代へ平和のバトンをつないでいく大きな原動力になると私は信じています。

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