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「苦悩を突き抜けて歓喜へ」──5万人の「第九」

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師が指し示した前代未聞の「5万人の第九」をどう実現するか――。

1994年(平成6年)11月、「アジア青年平和音楽祭」が福岡で開かれた。衣装のデザイン、設営、音響、演出、指揮、人文字、合唱……そして出演者のために、おにぎりを作り続けた"陰の陰"の人々。

「民衆こそ偉大」との大宣言をベートーヴェンの音律に乗せて轟かせた、共戦の弟子たちのドラマを追った。

書籍『民衆こそ王者 池田大作とその時代』23巻から一部を抜粋して紹介します。

キーワードは「何のため」

「先生のため」の努力が、気づけば「自分のため」になっている――文化祭に取り組むたび、そんな光景を何度となく目の当たりにしてきた。


驚いたのは、一緒に仕事をしているPA会社(音響機器の会社)のスタッフから、学会歌の歌詞カードがほしい、と頼まれたことだ。それも一度だけではない。ある時は「紅の歌」。ある時は「広布に走れ」。文化祭のリハーサルで耳にして、自分たちも歌いたくなったというのだ。


「みんな、まったく学会員ではないのに、『自分たちだけ歌えないのが悔しいんです』って言うんです。学会員の皆さんが何カ月も準備して、目の前で、やりきったいい顔で歌うんですよね。横浜でも、長野でもリクエストがあって、歌詞カードをPA会社の人に配って、一緒に肩を組んで歌いました」(鈴木智雄)

文化祭に限らず、仕事では多くの高いハードルに挑んできた。たとえば「お箏ことと和太鼓のアンサンブル」。音量も音質も、まるで異なる。たとえば「那覇の米軍基地に近い、空きスナックでの録音」。言うまでもなく、録音しやすい環境ではない。そういう時こそ、腕が鳴る。「だったら、どうする?」と考え始める。

キーワードがある。

「池田先生に教わった『何のため』。これは強烈にいい言葉です。どんな演奏家でも、『ここで演やりたい』と言うのには、必ず理由がある。

何のため。これを汲み取れば、おのずと、どうすればいいか答えが見えてくる。そのために1週間や2週間、寝られない時もあるけれど」


「福岡(ドーム)の場合は、池田先生がここにおられて、オケ(オーケストラ)が(球場の)マウンドの上ですね……」。鈴木は目の前のテーブルを場内に見立てて説明した。――オーケストラとともに200人の合唱団がいる。池田が座る席との距離は100メートルほどか。その後ろに1万人の合唱団。さらに数万人が歌う。当然、それぞれの声は、ずれて届く。


だったら、どうする? 指揮のテンポは。マイクの数は。位置は。スピーカーをどう置くか。外野席で歌う人には全員、イヤホンでオケの音を届けるしかない。FMラジオが必須だ……。


それは、5万人の「何のため」を見いだし、形にする闘いだった。

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