事業者が準備 3種類の契約
私どもは、エンディング期に活用できる3種類の契約を準備しています。
第1に、自立期(①‒1)、病気や認知症が進むグレーゾーン(①‒2)における「存命中の見守り等事務委任契約」です。
具合が悪くなって救急搬送されても、急性期の患者はすぐに退院させられます。そこから介護保険を使って自宅に戻るのか。リハビリの専門病院に入院するのか。自宅療養を断念して介護施設に入るのか。さまざまな選択肢を考慮しながら対応を進めます。
スタッフが見守りをしながら「最近ゴミの出し方がおかしい」「徘徊が始まっているようだ」と生活習慣の変化に気づく場面があるかもしれません。そんなときは「要介護認定の手続をしよう」「そろそろ施設に入る必要があるかもしれない」と検討します。
第2に、病気や認知症が進んで(②)オカネや契約のことがわからなくなったときに備えた「任意後見契約」です。脳梗塞で倒れて一命を取り留めたものの、そこから何年も意識が戻らない。そうなったときには、士業や国家資格をもつスタッフが責任をもってオカネの管理をし、施設や病院の入居費用をやりくりしながら、尊厳と希望を大切にした療養介護が受けられるように支援します。
第3に、三途の川を渡った先の③‒Ⅰ(葬儀)と③‒Ⅱ(荷物・手続)を代行する「死後事務委任契約」です。オプションで遺言の準備まで済んでいれば、本人が元気なうちに③‒Ⅲ(財産)の処理まで終活が切れ目なく完成し、ライフリレーが円滑に行われることでしょう。
今すぐ書き始めたいエンディングノート
自分が倒れたり亡くなったときのために、元気なうちからエンディングノート(終活ノート)を準備する人が増えました。何かあったときに家族や親族が途方に暮れないよう、伝えておくべき情報を記録しておくのです。
いくらエンディングノートを完璧に書き上げても、書いた本人が死後にそれを使うことは絶対にありません。自分の手元にエンディングノートを保管したまま誰にも託しておかなければ、本人の終活は徒労に終わってしまうのです。
延命治療の希望について救急隊から訊かれたときには、家族がその場で即答しなければなりません。保管場所を誰かに伝えておいても、カギがかかっていたり金庫の番号がわからなければ、それを取り出すことはできません。
「エンディングノートが全部完成してから渡そう」という完璧主義にとらわれるのも要注意です。書けるところから書き始め、不完全な状態でもいいので誰かにいったん渡しましょう。盆と正月など半年に1回、あるいは1年に1回のペースで、アップデートしたエンディングノートを渡すのです。
「今はまだお墓のことなんて考えられないな」など筆が進まない項目は、無理して埋める必要はありません。書きやすいところから書き始めましょう。「どこの金融機関の××支店に口座がある」という情報を書いておくだけでも家族は大助かりです。「貯金が今いくらあるか、娘にも知られたくないな」と思うのであれば「私が倒れたときにこのシールを剥がしてね」と付箋にメモ書きして「ここに大切な情報がある」とわかりやすく示してあげましょう。
推しのおかげで激変 人生の最終コーナー
夫に先立たれてから鬱状態になったおばあちゃんが、介護施設に入ってから部屋に引きこもってしまったことがありました。
後見人の契約を結んだ私が自宅の片づけと売却の手続を進めていたところ、プロ野球の読売ジャイアンツのグッズが山ほど出てきたのです。それを介護施設にもっていったところ、おばあちゃんがとたんに明るく変わりました。さらに施設の職員がナイター中継をつけると、テレビを見に共用スペースに出てきて、みんなとおしゃべりするようになったのです。
そのおばあちゃんが大のジャイアンツファンだという事実は、私が家の片づけを代行するまで誰も知りませんでした。誰かにその情報を伝えておいたり、エンディングノートに自分の趣味や推しについてメモしておけば、エンディング期に明るくご機嫌に暮らす大きなきっかけになります。
終活は一人で完結するわけではありません。「自分は晩年××のように生きたい」「死後は△△の手続を取ってほしい」とエンディングノートに希望を記録するだけでなく、元気なうちにキーパーソンと対話することが重要です。最後に誰かの手を借りることになったとき、後顧の憂いなくすべてを託せるようにキーパーソンとの対話に努めるべきです。
不慮の交通事故で即死することもあれば、病気や認知症になってから10年、15年と長生きすることだってあります。いずれにせよ、永遠に生きる人は誰一人いません。人間の致死率は100%です。「人間は必ず死ぬ。それは明日かもしれない」と覚悟しつつ、今から終活を進めていきましょう。
