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今すぐ書き始めたいエンディングノート――人生後半を豊かにする「終活」を

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エンディングノート(終活ノート)は、書くだけでなく、希望を託す相手との共有が大切。多くの高齢者を支えてきた黒澤史津乃さんが、元気なうちに始めたい「終活」のポイントを解説します。医療や介護の希望から趣味まで、自分らしい終活を考えます。(月刊『潮』2026年10月号より転載)

記事のポイント
認知症や突然死で意思決定不能になる前に、自立期のうちからエンディング期に必要な意思決定と後事の準備をすぐ始めるべき。
親族や友人であっても安易に頼らず、どこまで任せるか細かく話し合い、相互の認識に齟齬が生じないよう注意する必要がある。
趣味や医療等の希望を記録・共有し、最後に頼るキーパーソンと対話しておくことが、後顧の憂いなく晩年を暮らす鍵となる。

エンディング期のライフリレー

私はこれまで、身寄りがない「おひとりさま」の高齢者を数多くサポートしてきました。


人生における意思決定の三要素は(A)意思の形成(B)意思の表明(C)意思の実行です。心身ともに元気な時期にしかこれらすべてを一人で完結できません。「自分はあと20年は生きる」と確信していても、60代の若さで突然死したり認知症を発症する可能性は誰にでもあります。すると(A)(B)(C)がたちまち行き詰まるのです。


心身ともに元気な自立期(①‒1、「人生マッピング」参照)には、すべての事柄を自己管理できます。病気や初期の認知症になると、将来への不安が始まるグレーゾーン(①‒2)です。病気や認知症が重く進むと、判断力を失って自己管理ができません(②)。三途の川を渡って亡くなると葬儀(③‒Ⅰ)、荷物の処理・手続(③‒Ⅱ)、財産の処理(③‒Ⅲ)という難問が待っています。


人生のエンディング期に身寄りがないおひとりさまは、①‒2に至る前段階のうちに③‒Ⅰ、③‒Ⅱ、③‒Ⅲについて意思決定し、自分の希望を誰かに託しておかなければなりません。


セミナーでお会いする高齢者がよく「貯金は十分ある。一人暮らしが難しくなったら介護保険を使って介護施設に入ればいい」と言います。誰がその段取りを後押ししてくれるのでしょう。


要介護3まで進んだおひとりさまには「自分は要介護3だ」という自覚症状がないケースがほとんどです。そうした高齢者が自力で要介護3の認定を受けることはできませんし、特養への入居申し込みだって不可能です。


ならば自立期(①‒1)のうちに「自分が要介護3になったときには特養に入りたい」「貯金はこの口座にこれだけある」という意思と情報を誰かに伝え、その人に後事を託しておく準備が必要です。


人生、いつ何が起こるかは誰にもわかりません。自立期からエンディング期への移行を「ライフリレー」と考えてください。自分の人生のバトンを確実につなげ、最期を迎える。人間は次の瞬間どうなるかわかりません。エンディング期を迎えるための準備は、いつ始めるべきなのか。準備が必要であることに気づいた今すぐ始めるべきです。準備のスタートに早すぎることはありません。

財産・葬儀後事を誰に託すか

エンディング期の手続きを担ってくれる肉親が近くに住んでいれば、すべて任せる方法もあります。ただし作業の内容と負担感によっては、肉親であっても断られてしまうかもしれません。


葬儀の場に親族一同が揃い、その中に子どもがいない独身者がいたとします。「次は私の番ね」とその人がつぶやいたとき、甥っ子が「大丈夫だよ。おばちゃんのときはオレがやるから」と言ってくれたとしましょう。そんなとき、たいてい「あら、それは安心ね」で話は終わってしまい、お互い細かく話を詰めないのです。


甥っ子は「おひとりさまのおばさんの葬式くらい、自分があげてあげるよ」くらいの軽い気持ちで言ったのかもしれません。ところがおばさんは「いざというときは甥っ子が自分の面倒を見てくれるんだな」と早合点し、お互いの認識に齟齬が生じてしまうのです。


おばさんの具合が悪くなったり認知症の症状が出て病院に行けば「すぐに連絡できるキーパーソンはどなたですか」と訊かれます。「私のことは甥っ子が面倒を見てくれることになっている」と言って連絡したところ「入院や介護の面倒まで見るなんて無理です」と断られても不思議はありません。


「遠くの親族より近くの友人」と、近くに住んでいる友人に助けてもらうのも一つの方法です。


ですが、血を分けたきょうだいと同じくらい親密でない限り、自宅のカギやオカネの管理までは他人に任せないほうがいいかもしれません。友人・知人については「普段からお互い見守り合いをする」「具合が悪いときにはお見舞いに来てもらう」「亡くなった後はお葬式に来てもらう」くらいの緩やかなつながりが安全だと思います。


困ったときのために、おひとりさま同士で自宅のカギを預け合ったり、キャッシュカードの置き場所と暗証番号を教え合うとしましょう。二人とも元気な自立期のうちはいいですが、どちらかが病気になったり認知症が始まると「勝手に家に入られて××がなくなった」「銀行口座の貯金が減っている」とトラブルになり、人間関係が壊れてしまうことがあるのです。


そうしたトラブルを避けるため、自立期(①‒1)からグレーゾーン(①‒2)への移行期の段階で成年後見制度を利用し、弁護士や司法書士、行政書士、社会福祉士などに財産の管理などを任せておく方法も検討してみてください。


私どものような事業者と契約を結び、作業や手続を委任するのも一案です。

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