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新幹線を降りて吸う故郷・山形の空気がとにかくおいしい!(橋本マナミさん)
「あなたは大器晩成型」
東京では、私は食費を限界まで切り詰めた生活をしていました。それで浮かせたお金を演技やダンスのレッスン、エステなどの自己投資に注ぎ込んでいたのです。自分なりに必死で努力をしていましたが、自分にはなかなか活躍の場が与えられませんでした。そんな状況のなか、まわりの子がどんどん売れていきます。それを見ているのは、やはりつらかったですね。
でもそこで落ち込む暇があったら、自分を磨いたほうがいい。そう思って、自ら映画監督のワークショップを調べて通ったり、カルチャーセンターで文章を書く練習をしたり、地道に努力を続けました。
今振り返ると、山形県人ならではの忍耐強さが私にもあったのだと思います。山形県人に限らず、東北の人は厳しい冬の時期をじっと耐えて過ごします。だからどんなにつらくても、大変でも、すぐに諦めない忍耐力をもっているのです。
今となっては、売れない時期に私が頑張っていたことは、何ひとつ無駄になっていないと感じています。最後まで諦めず、東京で頑張って良かったと心から思います。
それでも当時は、くじけそうになることもありました。正直、「芸能界の仕事はもうやめて山形に帰ろうかな」と思ったこともあります。でもそんなとき、実家に少し帰ると、また元気が出る。もう一度、頑張ろうという気になるんです。
私は若い頃、年齢よりも大人びて見られていたので、仕事の上でも中身と外見のバランスが取れなくて苦労しました。でもそのことをむしろ「あなたは大器晩成型なんだよ」と言ってくださる方もいて。その言葉に励まされて「私が売れるのはもうちょっと先なんだ」と根拠のない自信がどこかにありました(笑)。だから結局、完全に故郷の山形に帰ることはなかったのです。
東京で奮闘する私のもとには、母からしょっちゅう、手作りの食べ物が送られてきました。山形でたくさん採れるイチジクを甘く煮付けたものなど、とてもおいしかったですね。煮物もよく送ってくれました。そんな母の思いがこもった山形の食べ物も、私の大きな支えになりました。
素の自分とは異なるキャラクターで人気に
その後、私は27歳のときに思いきって事務所を移籍し、再スタートを切りました。そんななか、たまたまお受けしたグラビアの仕事が反響を呼び、「愛人キャラ」でバラエティ番組にも出演させていただくことが増えていきました。それがきっかけで仕事の幅を大きく広げることができたのです。
ただ、私の素の性格はどちらかというと真面目で大人しいほうなので、高校時代の同級生は、「愛人キャラ」でテレビに出ている私を見てびっくりし、本気で心配してくれました。(笑)
確かに私は20歳ぐらいの頃から「愛人っぽいね」とよく言われていて、それであのキャラで自分を世に売り出していこうということになったのですが、でも逆に本来の自分とは違うからこそ、うまく演じられていた部分もありました。
それまで私は、芸能人として自分をどう見せていくべきかずっと悩んでいました。なので私はむしろ、やっと芸能界での自分の立ち位置が見つかったと思って、「愛人キャラ」を楽しんでいたところもあります。
とはいえ、私が「愛人キャラ」としてテレビに頻繁に出ていたとき、正直なところ両親はちょっと複雑な気持ちだったと思います。それだけにその後、NHKの朝ドラや大河ドラマに出演したときはすごく喜んでくれました。
2022年にドラマの「相棒」に、23年に「徹子の部屋」に出たときも、母からすごく嬉しそうなメールが届きました。ようやく少し、親孝行ができたかなと思っています。
子育てをしながらさらなる挑戦を
今、私は結婚、出産を経て子育てに奮闘しています。家族のためにと、なるべく手料理を心がけていますが、母のあの味はなかなか出せません。
それでも、山形で夏によく食べる「だし」はしょっちゅう作っています。キュウリとナス、ミョウガとネギを細かく切って、醤油や味醂などの調味料と混ぜ合わせるんです。ご飯にかけてもいいし、そのまま食べてもすごくおいしいです。うちの息子は普段、あまり野菜を食べないのですが、「だし」だけはよく食べてくれます。
子育てと仕事の両立は大変なときもありますが、私は結婚し、子どもを産んで、本当に良かったと心から思っています。それによって、今までわからなかった妻、母親の感情が理解でき、表現の幅が確実に広がったと思うからです。
これからはその経験を活かし、この年齢ならではのお芝居をしたいと思っています。どんな現場でも役でも、必ず発見があり、成長があります。ですから仕事は選ばず、幅広く何でも挑戦させていただきたいと思っています。
もちろん、山形の魅力を発信する仕事も続けていきたいですね。山形をさらに盛り上げるためにも、もっともっと良い仕事をして、より多くの人に影響を与えられる人間になりたいと思っています。
読者の皆さんも、疲れたと感じたときはぜひ山形を訪れてみてください。身も心も必ず元気になるはずです。
