女性や子どもの声を日本の改革に繋げてきた公明党
2023/11/07こども基本法の施行、こども家庭庁の発足、こども未来戦略方針の策定など日本のこども政策が大きく動き出した2023年。
子育て政策に長らく関わってきた公明党・山本香苗参議院議員と、教育学者・末冨芳さんによる対談。
(『潮』2023年12月号より転載。写真=富本真之)
記事のポイント
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近年の日本の停滞を招いているのは、女性が圧倒的に不利な社会構造。望めば女性男性にかかわらず社会でも家庭でも活躍できるような世の中に
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公明党が挑戦していく政策は、人々の生活実感が伴なっているため、一時的には叩かれるものの、中長期的に見れば当たり前になっていく
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子どもやその親世代と関われば、子育てをめぐる実態がよく分かり、子育ては社会で支えるものという合意形成につながる
ようやく動き始めた日本の子ども政策
山本 2023年は「こども基本法」の施行や「こども家庭庁」の発足、さらには「こども未来戦略方針」の策定など、日本の子ども政策が大きく動き出しました。もちろんこれからが正念場ではありますが、長らく子ども政策にかかわってきた者として「ようやくここまで来た」という実感を抱いています。こども基本法によって、子どもを権利の主体として明確に位置付け、子どもの権利を包括的に保障していく足掛かりができました。これからはそうした法制度に魂を込めていく段階に入ったと思っています。
末冨 加えて、23年は今後の子ども政策の方向性を示す「こども大綱」の策定も進められています。子ども政策にしっかりと財源をつけ、掛け声だけでは終わらせない――そうした政府の迫力をかつてないほどに感じます。報道では「異次元の少子化対策」という言葉が独り歩きした感がありますが、実はすべての施策の名称に「少子化」ではなく「こども」という言葉がつけられているのも大きなポイントです。つまり、少子化対策のみならず、子ども・若者の支援や子どもの貧困対策なども含めた政策パッケージになっているんです。その点でも、今年は〝日本の子ども政策元年〟と言える年になりました。
山本 公明党はかねて子ども政策を政権の政策の中心に据えるよう訴えてきました。その一つの結実が、昨年11月に発表した「子育て応援トータルプラン」です。作成には約1年半かかりました。公明党の地方議員と国会議員が力を合わせて実態調査を行い、子育て当事者や支援団体はもちろん、子どもや若者にも直接話をうかがいました。そうした現場の声をしっかり聞いて作り込んだのが同プランなんです。
末冨 公明党の子育て応援トータルプランを見て、教育政策の研究者として思うのは〝痒いところに手が届く政策〟だということです。同プランには「五つの基本的な方向性」が掲げられています。
すなわち、①仕事と家庭の両立により生活を犠牲にしない働き方へ転換する ②子育ての負担が過重にならないように支援する ③常に子どもの視点に立ち子ども政策を中心に据えた「こどもまんなか社会」の実現をめざす ④男女間の不平等を解消し性別役割分担意識を是正する ⑤若者が希望をもって将来の展望を描ける環境整備――です。
特に重要なのは、③こどもまんなか ④男女平等 ⑤若者施策の3つが入っている点です。④については、子ども・若者に関する政策だけでなく、女性に関する政策をリードしてこられた公明党ならではだと思います。近年の日本の停滞を招いているのは、女性が圧倒的に不利な社会構造です。日本は先進国で一番女性の家事時間が長く、男性の家事育児時間はいまだに短い。女性だけに家事育児を押し付けるのではなく、望めば女性男性にかかわらず社会でも家庭でも活躍できるような世の中に変えていかなければなりません。
社会の意識も変えていく
山本 公明党が2006年に発表した「少子社会トータルプラン」は、子育ての負担軽減と働き方改革の二本柱でした。ところが、この二本柱だけでは少子化に歯止めがかからなかった。その反省を踏まえて、子育て応援トータルプランには③~⑤を追加しました。
何より、男女不平等の解消なくして少子化の抜本的な解決はありません。以前、若い女性たちから、こんな社会状況なら結婚して子どもを産みたくないという声を聞いて、衝撃を受けたことを覚えています。実際、子どもを持つことに対する希望が低下し、子どもを持つことをリスクと考える若者が増えています。
末冨 子育てがリスクということが社会に浸透してしまっていますよね。これは非常にまずいことなのですが。
山本 男女不平等の問題は、コロナ禍で顕著に表れました。
末冨 コロナ禍で一番自殺者が増えたのは若い女性です。社会的支援の目が届きづらく、かつ経済的に自立できない層に社会のしわ寄せが来てしまいました。
山本 若年層の経済的な基盤が弱いことも大きな問題です。子育て応援トータルプランを作成する際にも、結婚を希望していても現状の給料ではとてもできないという若い方の声が寄せられました。若年世代へのセーフティネットを張り直さなければなりません。もちろん、子育ての負担軽減と働き方改革も引き続き重要なのですが、今回のプランは人々の意識も含めた社会構造全体を変えていかないと少子化の流れは食い止められないという思いに裏付けられています。
公明党は子ども制作を政策の中心に据えるよう訴えてきました
その結実が「子育て応援トータルプラン」です
話しかけやすく相談しやすい
末冨 公明党の素晴らしい点は、吸い上げてくださる声が全世代を網羅しつつ、なおかつジェンダーの偏りがないことです。現在では子ども・若者の声を聞こうという問題意識は他党ももっていますが、そうした取り組みで浮かび上がってくるのは、自ら声を上げられる若者の声ばかりが注目される傾向です。その一方で、なかなか声を上げられない若者たちもいます。そうした埋もれがちな当事者の声を掬(すく)い上げられるのは公明党です。その最大の要因は、公明党議員の〝話しかけやすさ〟〝相談しやすさ〟にあると私は考えています。それは、普段から人々の話を聞き、相談に乗っているからこそ培われた力だと思うんです。
山本 ありがとうございます。確かに私たち公明党議員は、一人ひとりが日頃からアンテナを張り、日々のお付き合いのなかで継続的にお話をうかがうことを心がけています。そうすると、一度つながった方々が、困りごとを抱えた方を連れてきてくださったりするんです。そうしたネットワークを着実に広げていくことが〝小さな声を聴く力〟になっているのだと思います。そこで聞いた声をもとに、国会議員と地方議員が連携しながら、それぞれの役割を果たす形で、課題解決に向けて着実に取り組みを続けています。
末冨 ちょうど先日、保育園の施設長をやっている私のゼミの卒業生に、公明党の地方議員を紹介したところです。自治体の議会の全会派をまわる前に公明党の議員に会って全体の状況を見渡しておいたほうがよい、とアドバイスをしました。公明党であれば、党派性によらず中立的に丁寧に話を聞いてともに考え、他政党とも対話をできる。だから、私は社会的課題を抱えた人にはまず公明党議員を紹介するようにしているんです。
困っている人を放ってはおけない
山本 末冨先生のような研究者の方々やNPO法人などの民間団体、企業の方々だけでなく、公明党の場合は党員の皆さまからもさまざまな声が寄せられてきます。地域で困っている人がいる、そうした人を放ってはおけないという党員の方が、議員につなげてくださるケースはたくさんあります。
末冨 公明党の議員には「政治は自分たちだけで行うものではない」といった感覚がおありなのだと思います。だからこそ、どんな場面であれ、相手が誰であれ、対話を大切にし、子どもや高齢者、障がい者、疾患がある方などにとってより良い社会を作るために、いつも懸命に働いてくださっているのだと感じています。
山本 公明党に脈打つ精神としてイデオロギーではなく、現実を前にして、常識的な合意形成を図るというのはあると思います。
末冨 政策実現能力にも長けていますよね。他党にもそうした点がないわけではありませんが、公明党の水準まで合意形成能力と政策実現能力を高めてもらえたら、日本の政治はもっと良くなるのにと正直思います。
山本 公明党は結党以来〝中道政治〟を掲げてきました。中道というのは、右と左を単純に足して2で割るといったものではなく、どんなときにも実態に即して、かつ国民の皆さま方の理解が得られるような結論を導き出す。それが中道であり、日本政治における公明党の役割だと考えています。いささか地味ではありますが、与党時代だけでなく野党時代もこの姿勢を貫いてきた自負があります。
末冨 そうした地道な役割が一番大切なんだと思います。コロナ禍のなかで公明党は、0歳から高校3年生まで一人一律10万円を支給する「未来応援給付」を提案したものの、所得制限を設けないことについて他党やメディアから大きな批判を浴びました。しかし、いまとなっては、他党の子ども政策も所得制限なしの給付が当たり前のように提案されています。幼児教育の無償化のときも、所得制限なく無償化することへの批判がありましたが、いまではそれが当たり前になっている。きっと、今後も公明党が挑戦していく政策は、一時的には叩かれるものの、中長期的に見れば当たり前になっていくのだと思います。なぜなら、公明党の政策には、人々の生活実感が伴っているからです。
公明党の議員の皆さんが尽力しているからこそ、ここまで社会で現実を変えることができたのだと思います
創造的な解決策を提起していく
山本 「子育てを社会全体で支える」ということがどういうことなのか、社会全体でコンセンサス(合意)が得られるよう、もっと議論を深めていかなければならないと痛感しています。
末冨 未来応援給付を批判していた維新も最近、手のひらを返したように所得制限の撤廃を謳っていますが、それを一貫して主張し続け、地道に歩みを進めてきてくださったのは公明党です。維新の変化も前向きに受け止めていますが、理念的整合性が見えてこないため、結局は集票のために所得制限をなくそうとしているのではという批判もされています。局面が変わればまた所得制限なのか、揺らがない姿勢が問われています。
所得制限なくすべての子どもを応援するのは、子どもの人権の観点からも安心して子どもを産み育てられる社会を目指す意味でも理想的な仕組みです。まだ残されている高校と大学の無償化も、着実に合意形成を図って進めていくことこそが重要です。それができるのは、やはり公明党だと思います。公明党がこれまで綿密な論理のもと、時の政権とその都度しっかり合意形成をしてきたからこそ、時代状況や党派性に振り回されず、日本の子ども政策を大きく進めることができたのだと思います。
山本 公明党は綱領の第一に「〈生命・生活・生存〉の人間主義」を掲げています。揺るがない思想・哲学は堅持する一方で、具体的な政策に関しては実態に即した柔軟性が重要だと思っています。〝こうあるべき〟といった固定観念を押し付けるのではなく、日々刻々と変わる状況を見極めながら社会の在り方を考え、創造的な解決策を提起していく――この繰り返しなのだと思います。
末冨 現実を踏まえた政策というのはよく分かりますが、私から見て山本さんをはじめ、公明党の議員と接していていつも感心するのは、子どもや若者、そして女性に対する深い思いをお持ちである点です。あるいは現状に対する危機感、さらには政治家としてのリーダーシップです。
公明党の議員の皆さんが強い思いの下、毎日尽力しているからこそ、ここまで社会の現実を変えることができたのだと思います。このことはもっと多くの方に知って頂きたいです。
話を聞くだけでなく〝子どもや若者とともに〟
山本 先に社会全体で子育てを支えることについて触れましたが、大阪・堺市東区の登美丘(とみおか)地区防犯委員会は、20年以上前から月に一回程度、大規模合同パトロールを実施しています。大規模と言うだけあって、多いときには400人もの人々が街を練り歩くそうです。
末冨 まるでハロウィンのイベントのようですね。
山本 そうなんです。先日、私も参加させて頂いたんですが、その地域は道が狭いので、100人以上が練り歩くと車や自転車が通れない(笑)。合同パトロールを開始してから、ひったくりなど街頭犯罪は大幅に減少したそうです。
末冨 確かに、仮に何か事件が起きようものなら、地域の人々がすぐに駆け付けてくれそうですね。
山本 このパトロールには若いメンバーもヤングサポート隊として参加しています。大人から若者まで幅広い世代が一緒になって「この町から犯罪をなくそう」と思いを一つにして行動し続けることによって犯罪そのものの発生をなくす。こうした地域や世代をつなぐ取り組みによって、防犯だけではなく、孤立をなくし、地域力を強くしていくことが大切だと痛感しています。
末冨 そうですね。重要なキーワードは「こどもとともに」です。私がアドバイザーを務めている山口県宇部市では、子どもが学校運営協議会に加わったり、地域の大人も授業に参画しようといった先駆的な取り組みが行われています。子どもやその親世代と関われば、子育てをめぐる実態がよく分かり、子育ては社会で支えるものという合意形成につながる気がします。だからこそ「こどもとともに」が大切なんです。
山本 現在、こども基本法に基づく「こども大綱」の策定に向けた議論が進んでいます。案には、子どもの声を聞き、ともに考えていくといったことが書かれているのですが、それに加え、公明党として「社会参画」という視点が入るように強く主張したところです。単に話を聞くだけではなく、子どもや若者と一緒に行動するという姿勢が重要なのだと思います。
末冨 こども基本法ができたことで、子どもと接する職業に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」の議論が日本でもやっと始まりました。こどもまんなか社会をさらに加速させていくためにも、山本さんをはじめ、公明党にはこれからも大いに期待しています。
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教育学者・日本大学教授
末冨 芳(すえとみ・かおり)
1974年山口県生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・神戸大学大学院)。専門は教育行政学、教育財政学。文部科学省中央教育審議会委員等を歴任。著書に『教育費の政治経済学』など。
公明党参議院議員
山本香苗(やまもと・かなえ)
1971年広島県生まれ。京都大学文学部卒業後、外務省に入省。2001年7月、参議院議員選挙に初当選(比例区、現在4期目)。厚生労働副大臣などを歴任。
公明党衆議院大阪第16選挙区(堺市堺区・東区・北区)総支部代表。