日米首脳会談に至るプロセスの大問題
日本は今回のイラン攻撃に対してどのような対応をとっているのかというと、まず法的評価について高市早苗首相は「差し控える」とお茶を濁しつづけています。
3月中旬、トランプはイランが封鎖をつづけるホルムズ海峡の安全を確保するため、艦船の派遣を、日本を含む数カ国に呼びかけました。もし派遣すればイランによって自国民が攻撃される危険があります。皆、アメリカに遠慮してはっきり言えないだけで、今回の米・イスラエルの先制攻撃は明らかに国際法違反であり、それに協力することは法的な観点でもさまざまな問題がある。しかし、直接トランプから派遣を求められた場合の対応について、国会で質問された高市首相は「まだ一切決めていない」「どのような対応が可能か、法的観点も含めて総合的に検討を行っている最中だ」と答えるに留めました。(3月16日)
その後、3月20日に高市首相は日米首脳会談を行いました。会談でトランプが艦船派遣を強く迫ることはなく、首相は日本が法的に「できること、できないこと」を説明したとされます。結果として、日本が戦争に巻き込まれるような合意を避けることができました。
最悪の事態こそ免れた会談ですが、高市首相はいまだに①イラン攻撃に対する日本政府としての法的評価と、②ホルムズ海峡への艦船派遣に対する日本政府の法的立場と方針を説明していません。
このことは禍根を残すかもしれません。日米首脳会談後、トランプは早速ホルムズ海峡の問題について再び言及し、「日本は憲法上の制約があるが、米国が要請すればやってくれるだろう」と、圧力を交えた日本への「期待」を語っています。首脳会談ではこの問題をめぐって日米が不一致を露呈することは避けられましたが、問題は単に先送りされたに過ぎない可能性があります。
高市首相は、改憲に意欲を見せてきましたが、トランプの艦船派遣の要請を拒否する際、憲法九条に言及したと伝えられています。もし現時点で既に、改憲によって平和憲法が骨抜きになってしまっていたら、憲法を盾にトランプの非合理的な要請を拒絶することはできなかったかもしれません。
トランプのことなので、今後「アメリカの要請なのだから、憲法上の問題くらい何とかしろ」と言ってくるかもしれません。日本もいつまでも米・イスラエルの先制攻撃について「法的評価は差し控える」という態度でよいのでしょうか。
ヨーロッパの同盟国は、対米関係への影響を懸念しつつも、米・イスラエルの軍事行動について国際法上の問題を指摘し、距離を取り始めています。日本でも、米・イスラエルの軍事行動への不支持は約8割に上っています。「アメリカを怒らせたくないから、その軍事行動については評価、ましてや批判などしない」で本当にいいのでしょうか。重要な同盟国であるアメリカがますますむき出しの力を行使し、他国に不合理な被害を与え、同盟国に不合理な要請を突きつける国になっているからこそ、憲法や国際法の重要性を再確認すべきではないでしょうか。
選択肢を狭めたのはあの台湾有事の答弁
最後に、なぜ日本の外交は、ここまでアメリカを刺激しないように腐心しているのかを考えなくてはなりません。
それは、昨年11月の台湾有事をめぐる高市首相の発言以来、日中関係が機能不全に陥っているからです。日本の外交戦略から、中国との対話や交渉、協調という選択肢が消えてしまった。だから、日米関係の不安定化だけは何とか避けたいと考え、アメリカの要請に際限なく応えなければ、ということになってしまっているのです。
もし中国と日本の関係が良好であれば、イラン戦争に端を発するエネルギー危機においても、中国と歩調を合わせながらホルムズ海峡の航行に向けてイランと対話する道筋もあったはずです。
国際秩序の大変動期にあって、何が「現実主義」なのか、日本は改めて固定観念を捨てて見定めなければなりません。(3月22日現在)