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拙速な「議員定数削減」は多様な民意を失わせる

議員定数削減は、「身を切る改革」として語られることがあるが、果たしてそうなのか。現在、自民党・日本維新の会の連立政権が目指す衆議院の議員定数削減について、その問題点を駒澤大学名誉教授の大山礼子氏に伺った。(月刊『潮』2026年9月号より転載)

 

日本の国会議員数は多いのか

自民党と日本維新の会は連立政権合意にて、衆議院議員定数を1割削減する法案の成立を目標に掲げました。議員定数削減は、維新が「身を切る改革」の象徴として掲げる政策です。

 

国会議員の数を減らすことに対しては世論も好意的ですが、これによって本当に「身を切られる」のは誰なのか。国民はよく考える必要があります。

 

議員定数削減が支持される背景には、日本の国会議員は多すぎるとの認識があるのだと思います。しかしそれは事実に反します。日本の国会議員数は国際的に見て、決して多くはありません。人口100万人当たりの議員定数をOECD諸国と比較すると、むしろ少ないほうなのです。

 

よくアメリカの国会議員は、上下両院で53人しかいないなどと言われます。でもアメリカでは福祉や教育など多くの行政サービスを州政府が担っており、日本とは事情が異なります。日本と政治制度が近いイギリス、ドイツ、フランスなどは、日本より人口が少ないにもかかわらず、国会議員の数は日本より多いのが現状です。

 

議員定数削減には「経費削減」の目的もあるとされていますが、実はその効果もさほど大きくありません。日本の国会議員の待遇は、欧米主要国と同水準です。秘書の雇用などに使われる諸手当は、アメリカやドイツより低額です。仮に定数を1割削減したところで、経費削減効果は年間30数億円程度にとどまるのです。

 

経費削減が定数削減の目的ならば、政党交付金などの助成金を減らしたほうがよほど効果的です。2025年度の日本の政党交付金総額は315億円と、世界でトップクラスです。総額を1割下げるだけで、議員定数1割削減と同じ節約効果が現れるのです。

選挙制度は民主主義の根幹

ちなみに議員の歳費を引き下げることには弊害があります。議員は常に、落選によって職を失うリスクと隣り合わせの職業です。したがって歳費を下げると、経済的に安定している資産家や世襲政治家しか立候補できなくなり、資産は少ないが志と能力をもった若い世代が、政治の世界に挑戦しにくくなるのです。

 

今回の与党の議員定数削減案で、とりわけ理解しがたいのが「1割削減」という数字に明確な根拠が見当たらないことです。おそらく「選挙で訴えやすい数字だから」という理由にすぎないでしょう。

 

日本では「議員定数を減らすことが正義だ」との世論の圧力が根強くありますが、本来、議員定数を減らすことは手段であって、目的ではありません。本当に必要なのは、新しい選挙制度はどのような考え方で設計するのかといった根源的な議論のはずです。

 

選挙制度は民主主義の根幹であり、その見直しは極めて慎重に行うべきです。本来なら与野党が時間をかけて丁寧に議論を重ね、第三者機関の専門的な知見や国民の意見も幅広く反映させながら、議論を進めていく必要があります。

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