拙速すぎる与党の「定数削減」法案
6月24日に自民党と日本維新の会が国会に提出した衆院議員定数削減法案では、法施行後1年以内に協議で結論が出なかった場合、比例代表の定数を45削減する「自動削減条項」が盛り込まれていました。
定数削減を含む選挙制度改革について、これまで衆院各会派で構成する選挙制度協議会で協議を重ねてきている中での突然の動きであり、さすがにこの法案には、野党が大反対しました。結果的に、7月の国会での成立は見送られることとなりました。
高市政権は衆議院で圧倒的多数の議席を得ているわけですから、時間をかけて議論したうえで改革しようと思えばできるはずです。それなのになぜ、数の力だけでことを進めようとするのでしょうか。連立に参加した維新に対する高市総理の「政治的配慮」としか思えません。
そもそも現在の小選挙区比例代表並立制は、小選挙区制による政権選択機能と、比例代表制による中小政党の多様な民意の反映を両立させる考えから導入されました。この制度において、一方的に比例代表だけを削減すると、選挙制度の性格が根本から変わってしまいます。選挙制度の目的に照らしあわせて、本当に必要な改革なのかどうかを、時間をかけて議論する必要があるはずです。
仮に与党案のように比例代表だけが削減された場合、どんな影響が予想されるでしょうか。真っ先に影響を受けるのが小政党です。現在の選挙制度が目指してきた多様な民意の反映という役割が弱められ、少数者の声やこれまで十分に政治へ届かなかった意見が国会から失われてしまいます。
一般的に議員定数を減らせば、現職議員が有利になります。現職議員には知名度も組織もあるため、少ない議席を争うことになれば、新人は圧倒的に不利です。新人が出馬しても勝てず、政治の新陳代謝が起きにくくなります。
日本の国会は現在、世襲議員が25~30%を占めていますが、これは民主主義国家としては異例な状態です。比例代表のみを削減すると、その割合がさらに進む可能性があるのです。
多様な人が政治へ参加できる制度を
現在の国会では、小さな政党から当選した若い議員も活躍しています。そうした新しい政治勢力が議席を得られるのは、比例代表という仕組みがあるからこそです。若い人たちが「自分たちの世代にもっと政治に参加してほしい」と願うなら、目指すのは議席を減らすことではありません。多様な人が政治へ参加できる制度を維持し、充実させることです。
とりわけ日本では女性議員の比率を増やすことも重要です。皇室典範改正の問題や夫婦別姓の問題も、現状より女性議員の数が多ければ、まったく別の結論が出ていた可能性もあります。しかし議員定数削減を行うと、さらに女性議員が減少するとの試算が出ているのです。
女性議員を増やすために議席の一定数を割り当てる「クオータ制」については、議席を機械的に男女半々に割り当てるイメージが先行し、反対意見もあります。しかし政党交付金の配分方法を工夫し、女性議員の比率が高い政党に一定のインセンティブ(特別手当)を与える仕組みも考えられます。
たとえば政党交付金のうち「議員数割」に基づく配分の一部を、男女別に算定する方式を私は提案しています。議員数割の原資を二分し、それぞれを男性議員数と女性議員数に応じて配分すれば、女性議員の割合が多い政党、特に規模の小さな政党には相対的なメリットが生じます。
一方で男性議員が多い政党に対しても、配分の半分は従来どおり議員数に応じて確保されるため、極端な不利益は生じません。今後、男女比が50対50に近づけば、配分結果も現在と大きく変わらず、制度としての公平性は担保されます。ちなみに韓国では、女性候補者の擁立に対して補助金を交付する制度が導入されており、一定の成果を上げています。
現在、地方議会においても、なり手不足を理由に議員定数削減が進められています。その結果、多様な人材が立候補しにくくなり、なり手不足も改善されていません。この問題の解決策としては、地方議員を辞めずに国会に立候補できる仕組みを導入することも一つの方法です。日本以外の国では、それが一般的です。
