心に残る父の答え
高校生の頃、とにかく真面目に働く父に対して、私は一つの質問を投げかけました。その時の父の答えが、今も忘れられません。
高校時代の私は、父の会社でアルバイトをすることがありました。その頃には、すでに会社の経営は軌道に乗っていたので、大変だから手伝っていたというわけではありません。1日働くと、5000円のアルバイト代をもらえたのです。
私がよくやったのは、建造物の基礎工事と呼ばれる作業です。職人さんが組んだ型枠に、生コンクリートを流し込みつつ、それが型枠の隅々まで行き渡るように、延々とバイブレータで振動を与え続けるのです。文字通りの現場仕事です。
先述の通り、子どもの頃から新聞を読むのが好きだった私は、いろいろなことに問題意識を持つようになります。世界や社会のこと以外にも、自分自身のことについても、考えるようになったのです。これからの人生を、いかに過ごしていくべきなのか。将来的に、自分はどんな仕事を成し遂げるべきなのか。そんなことも考えました。ある意味で頭でっかちな子どもだったのです。
もちろん、そんな問いに、そう簡単に答えが出るはずがありません。それでも、自分なりに切実に考えをめぐらせていた私は、ある時、父にこんなふうに尋ねました。
「おやじは、何のために毎日働いているの?」と。
すると父からは、間髪を入れず、こんな言葉が返ってきたのです。
「そんなの決まってるじゃないか。家族を養うためだよ」
頭でっかちになっていた私にとって、目が覚めるような答えでした。ためらいなく「家族のため」と言った父が、とても大きな存在に思えたのです。
大人になってから、若い人たちと懇談をしていると、例えば、こんな質問を受けることがあります。
「岡本さんにとって、人生の目的はなんですか?」
「自己実現のためには、何が必要だと思いますか?」
その度に、私は40年前に感じた、父の大きさを思い出すのです。人生の目的や、自己実現について考えるのは、とても大切なことです。しかし、それと同じくらい「食べていくために働く」「家族を養うために働く」というのは立派な働く理由だと思うのです。
※当記事は『逆転の創造力』から抜粋をしたものです。
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