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山形県はほのぼのと温かい「日本の顔」。(キャイ~ン・ウド鈴木さん)
山形県のコメ農家に生まれたウド鈴木さん。県内の高校を卒業後、上京して芸能活動を開始。天野ひろゆきさんとのお笑いコンビ「キャイ~ン」として、多くのテレビ番組等に出演してこられました。
そんなウド鈴木さんが、大好きな山形県の魅力を綴ります!
(月刊『潮』2024年1月号より転載)
「この地域に生まれて本当に幸せなんですよ」
僕は庄内平野の米どころ、山形県東田川郡藤島町(現・鶴岡市 )で米農家の長男として生まれ育ちました。小学生時代、校長先生が朝礼でこんな話をしてくれたことを今でも印象深く覚えています。
「皆さんは山形県のこの地域に生まれて本当に幸せなんですよ。四季がはっきりしているから春夏秋冬それぞれの季節を楽しめて、季節ごとに美味しいものを食べられる。日本海も出羽三山(羽黒山、月山、湯殿山)も鳥海山(通称「庄内富士」)もあり、庄内平野も最上川も広がっています。海と山と川と平野が揃った恵まれた地形によって、米どころとして栄えてきました。こういう環境で生きられるのは、本当に幸せなことなんですよ」
子どもの頃は自分の住んでいる地域のことをそんなに意識してなかったんですが、大人になってから「ああ、あのとき校長先生が言ったとおりだ」と故郷の素晴らしさをしみじみと実感するようになりました。
春はポカポカと暖かくて、夏はグワーッと灼熱の暑さになるんですね。特に山形市は岐阜県多治見市や埼玉県熊谷市、高知県四万十市に最高気温の記録を抜かれるまで、日本一暑いことで有名だったんです。
暑い夏が終われば、旬の恵みをいただける秋の収穫期です。木々が美しく紅葉したあと、静けさの中でしんしんと雪が降り積もる冬が始まります。山に雪がたくさん降るおかげで、再び春になってから澄んだ雪解け水が流れ出し、庄内平野の田畑を潤してくれるわけです。
僕は仕事やプライベートで日本全国を訪れました。もちろん、それぞれの地域に良さがありますが、やっぱり山形ほど四季がはっきりしていて、ほのぼのと人を包みこんでくれる穏やかな地域はないんじゃないかなと思います。
僕は18歳で上京してしまったので、それまではほぼ自転車で行けるところまでしか行ったことがなかったんですね。たまに部活の県大会で山形市に出るくらいです。なので、今改めて故郷の良さを教えていただいたり、感じることが多いです。
芸能界にもビートきよし師匠や亡くなられたあき竹城さんをはじめ、山形県出身の方はたくさんいますが、皆さんそれぞれ生まれ育ったところをすごく大事にされていると思います。
山形県出身の方は芸能人もそうですが、皆さんほのぼのとしたユーモアのあるキャラクターの方が多い印象です。人と触れ合うのが大好きなのだと思うんです。控えめで人見知りなところもあるかもしれないですが、話せばすぐに打ち解けて触れ合いを楽しむ県民性があると思います。
山形には美味しいものがもりだくさん
自然に恵まれていることもあって、山形の人は美味しいものを食べるのも、お酒を飲むのも好きです。
山形には芋煮会という伝統行事があります。ルーツは諸説あるようですが、僕の感覚だと秋に作物の収穫を終えたあとに「今年も豊作で良かったね」と感謝し、お互いをねぎらい合いながら河原に集まり、みんなでお酒を飲みながら芋煮を味わっていたんじゃないかなと思うんです。
おもしろいことに、山形県民の間ではよく「芋煮論争」がなされます。僕が生まれ育った日本海側の庄内地方では、芋煮といえば豚肉を使った味噌味です。山形市など内陸地方の芋煮は、牛肉を使って醤油で味つけします。「庄内の芋煮のほうが好きだ」とか「内陸の芋煮のほうがうまい」と論争しながら、山形県民は芋煮を愛してきました。里芋やニンジン、ゴボウ、こんにゃくの旨味が混ざり合う芋煮を、皆さんも食べ比べてみてください。もちろん、どっちも美味しいです。(笑)
鶴岡では「だだちゃ豆」というブランド枝豆も作られています。「だだちゃ豆」の語源には諸説ありまして、江戸時代に献上された枝豆を食べた殿様が「これはうまい。どこのだだちゃが作ったものだ」と言ったのだとか。「だだちゃ」とは「お父さん」という意味の方言です。「こんなに美味しい豆は、まず家長(だだちゃ)に食べてもらおう」というのが語源だという説もあります。ほかの枝豆よりも風味が豊かな「だだちゃ豆」は、夏の山形の名産品です。
山形県はフルーツ王国でもあります。さくらんぼ、ラ・フランス、ブドウ、ナシ、リンゴ、桃、夏に採れるメロンも美味しいです。米どころだけに、美味しい日本酒を造る酒蔵もたくさんあります。
山形は漬物文化もすごいです。一口にナス漬けといっても、丸ナスもあれば長い形のナスもあり、「ナスの漬物だけでこんなに種類があるのか」とびっくりします。唐辛子の辛味が気持ちいい「ぺそら漬け」も有名です。山形県民は地元の作物を漬物にして保存し、冬におかずとして食べたり、お酒のおつまみにして楽しんできました。
庄内平野の西側には日本海が広がっているため、日本海から入ってくる海の幸の流通もすごいです。カキが旬の時期もあれば、鶴岡では紅えび(甘えび)もたくさん取れます。寒ダラをぶつ切りにして、ネギをいっぱい入れて味噌で煮込んで食べる、「どんがら汁」は冬の風物詩です。これがまたものすごく美味しい。寒ダラのお腹に入っている白子の旨味はたまりません。
