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山形県はほのぼのと温かい「日本の顔」。(キャイ~ン・ウド鈴木さん)

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お笑い芸人という夢を応援してくれた皆さんへの感謝


僕は長男で農業高校も卒業したので、父は僕が家業を継ぐことをとても期待していたはずです。でも僕はお笑い芸人になる夢を捨てきれなかったんですね。父の意に反して高校卒業後に東京へ出ました。


「お前みたいな者が芸能界に入っても、万に一つの可能性もない。希望者が星の数ほどいるなかで、お前がなれるわけがない」。父はそう言って大反対しました。


母は反対に「お前がやりたいことだったら、何でもいいから一生懸命頑張りなさい。体だけは大事にするようにね」と背中を押してくれましたね。父と母は結構対照的で、父はどちらかというと厳格だったんですが、母はいつも「お前はやればできるんだから」といって励ましてくれていました。


とはいえ上京してすぐに芸能事務所の門を叩いたわけではありません。山形県平田町(現・酒田市)に、平田牧場という会社の本社があるのですが、そこの社長(新田嘉一現会長)が高校のOBだったこともあり、平田牧場の芝浦営業所に就職して社会人生活がスタートしました。


当時から僕がお笑いの世界に入りたいという夢を持っていることを、平田牧場の皆さんや取引先の飲食店の方々も優しく受けとめてくださり、大変可愛がっていただきましたこと、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。


当時暮らしていたのは都内の社員寮です。平田町から単身赴任で上京していた50代の寮長が、食事から何から寮のことを取りしきって面倒を見てくれました。


上京してから1年経った頃、僕は強烈なホームシックにかかってしまいます。「一度山形に帰ろう。父ちゃんに車を買ってもらって家の仕事でも手伝って、2年ぐらい経ったらもう1回東京に戻って芸能界に挑戦すればいいや」なんて、甘いことを考えていたのですが、そんな気持ちを打ち明けると、寮長がこう言うのです。


「任紀(ひでき/僕の本名です)、お前は芸人になりたくて東京に出てきたんだろう。だったら1回は挑戦したほうがいい。でないと30、40、50、60、70と年を重ねていきながら、死ぬまで『ああ、あのとき芸人に挑戦すれば良かった』と後悔し続けるぞ。とにかく1回挑戦してごらん。挑戦して駄目だったら、そのとき山形に帰ればいいじゃないか」


寮長の話を聴きながら、ハッと目が覚めた思いでした。もしあの時、寮長が私のことを思って、優しく説いてくださらなければ、私は山形に帰って両親に甘え、東京には2度と戻ってこなかったでしょう。今ここに自分がいるのは、夢を応援してくれた寮長はじめ、皆さんのおかげですね。本当に感謝しています。


全て天野くんのおかげですね


平田牧場さんで働きながら、1年間寮生活をしてお金を貯めた後、都内で1人暮らしを始めました。じゃあどこに住もうかというとき、五反田がいいなと思ったんです。


山手線の駅を最寄りにしたいとは元々思っていたんですが、よく知っていたのは新宿駅と東京駅で、その中間付近にある五反田駅がきっと山手線で一番盛り上がっているところなんじゃないかなと。(笑)


アパートを探そうと思って五反田の駅を降りて出たとき、偶然、今所属している浅井企画の看板が目に留まりました。(現在の浅井企画は、外に看板を出しておりません)


実はこの時、「芸能界に入る時は、まず一番最初に浅井企画を訪ねよう!」と思ったのです!


僕が子どもの頃、いつも見ていたオーディション番組「スター誕生!」の司会を欽ちゃん(萩本欽一さん)が務めていて、番組には当時の浅井企画の専務がスカウトマンとして映っていました。それもあって、浅井企画が萩本欽一さん、坂上二郎さん、関根勤さん、小堺一機さんといった錚々たる憧れのコメディアンの方々が所属する事務所だと、頭の中に記憶していたんです!


1人暮らしを始めた半年後に、平田牧場さんを退職させていただいて、アポイントなしの飛びこみで浅井企画の門を叩きました!


そして、山形の幼馴染の岡部くんとコンビを組みました! 残念ながら私がだらしないせいで、コンビを1年で解散することになり、その後、相方となる天野ひろゆきくんと出会って、91年に「キャイ~ン」を結成。おかげさまで2021年には結成30年を迎えることができました。


それも全て天野くんのおかげですね。山形県のような懐の深さが天野くんにはあると思います。


山形県は上から見ると左を向いている人の顔みたいな形なので、皆さんぜひ山形県を「日本の顔」というイメージで捉えてもらえたら嬉しいです! 勝手な見解で、申し訳ございません。


派手さはありませんが、山形には日本の良さがつまっています。山形県が名実ともに「日本の顔」になれるよう、食べ物や自然、歴史、人も含めて山形の色々な顔を見てもらいたいです。そして、もし良かったらぜひ山形を訪れていただけたら幸せだなと思います。


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