栃錦のお尻と出羽錦の塩まき
嵐山 世の女性の話題は栃錦のお尻でしたね。稽古のせいでお尻がザラザラで、「世の中で一番汚いものは栃錦のお尻だ」なんて言われてましたから。子どもが悪さをすると「栃錦のお尻をくっつけるぞ」なんて脅されて。(笑)
内館 でも、絆創膏を花びらの形にしてお尻に貼ってました。だから気を使っていたんですよ。
南 子ども向けの雑誌にも栃錦のお尻がアップで載ってましたね。人気のお尻でしたよ。(笑)
内館 でも、栃若の相撲はやっぱりファンの血がたぎりました。
嵐山 ああいうライバルがいる時代は面白いですよ。
内館 最近だと、大の里と伯桜鵬が強くなってくれると、いまのスー女(相撲ファンの女性)たちが私くらいの年齢になったときに、懐かしい話として盛り上がれるでしょう。元祖スー女の私としては、力士と大相撲の魅力が生活の中に入ってほしいんです。
南 盛り上がると思いますよ。誰でも、子ども時代や若い時代の思い出は懐かしいじゃないですか。特に、子どものころに知ったことはしっかり覚えてますから。じつは下っぱの頃、栃錦が出羽錦と組んで初っ切り(相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する見世物)やってたらしいです。初っ切りをやった相撲取りは大成しないって言われてたらしいんですけど、出羽錦は関脇になったし、栃錦は横綱になった。例外中の例外ですね。
内館 出羽錦は私が書いたNHKの連続テレビ小説「ひらり」に出演してくれたんです。とぼけたアドリブには噴き出しました。
南 大量の塩を、ブワーッとまく若秩父に対して、出羽錦は指先でつまんだ塩をかくし味にするみたいにチリチリとやるんですよ。
内館 若秩父はもっと偉くなると思いましたけどね。若秩父と熱海富士って似てないですか。
南 ああ、笑うと可愛いとことかね。
内館 熱海富士には最近のスー女がしっかりついてますから。
個性豊かな力士たち
内館 こうやって話してみると、昔のお相撲さんにはそれぞれに強烈な個性がありましたね。嵐山さんのご本(『大放談! 大相撲打ちあけ話』、北の富士勝昭氏との共著)にも書かれてましたけど、昔の力士には愛称があるんですよね。
南 「大相撲カルタ」っての持ってたんですけど、さっきの吉葉山は「錦絵見るよな吉葉山」。たいがいは得意技からつく。
内館 そうです! 吊り出しが得意の「人間起重機・明武谷」とか、相手の懐に低い姿勢で潜って出てこない「潜航艇・岩風」とか。
嵐山 「褐色の弾丸・房錦」もいた。褐色の肌と速攻で。房錦は関脇までいった?
内館 いきました。お父さんは若松部屋の行司の9代・式守与太夫でしたよね。
南 すごいナ、それは知らなかった。
内館 いまは愛称がつかなくなっている。最後は千代の富士の「ウルフ」でしょうか。
南 益荒雄が「白いウルフ」とも言われてましたね。
内館 そうでした。色白の狼。愛称がつくというのは、取り口に個性があったということですよね。白鵬のエルボーは誰も愛称にしない。プロレス技ですから。
嵐山 相撲には柔術的な要素の技もある。ただ、それを横綱は使っちゃいけないんだ。
内館 使うことは恥です。まして、繰り返していた。
嵐山 横綱はあくまで正統な技で戦う。昔はそれぞれの力士に技のパターンがあって、だから愛称もつくし、メンコのキャラクターにもなったんですよ。