突如の解散表明で、1月27日公示・2月8日投開票となった衆議院選挙。投票日は解散から16日後で戦後最短となる。強行された衆院解散と、新党「中道改革連合」の誕生は日本政治に如何なる影響を与えるのか。東京大学先端科学技術研究センター教授の牧原出氏に話を伺った。
(潮2026年3月号に掲載予定の記事を先行配信します)
突如の衆議院解散と中道改革連合の誕生
1月19日、高市早苗首相が衆議院を解散する意向を表明した。通常国会冒頭の1月23日に解散が宣言され、1月27日公示、2月8日投開票のスケジュールで選挙が実施される。
昨年10月に総理大臣に就任して以降、高市政権は高い支持率を維持し続けている。しかし、このタイミングで総選挙を強行すれば、年度内の予算成立は困難になり、当面の暫定予算で乗り切るほかなくなる。国民生活そっちのけで選挙に興じるやり方は、物価高に悩む有権者の顰蹙を買う。それでも総選挙は強行された。「高支持率が続くなかで勝ち抜いてしまおう」と勝利を急いだのだろう。
ここでウルトラCの巻き返しがなされた。つい先日まで敵と味方の立場だった公明党と立憲民主党が手を組み、1月16日に新党「中道改革連合」(略称「中道」)が設立されたのだ。このウルトラCには驚いた。高市首相は当然として、公明党支持者も立憲民主党支持者も予想だにせぬ展開だったのではないか。
極右のいない包括政党の誕生
1月19日、中道改革連合は綱領を発表した。一部を抜粋する。
〈私たちの掲げる理念は、「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」である〉
〈国家やイデオロギーのために国民を従わせる政治ではなく、人間の尊厳を守り抜く政治を、我が国の中心に据え直すという、揺るぎない決意である〉
この文言に異を唱える人はいないだろう。「中道」「人間主義」「人間の尊厳」は、公明党が結党以来一貫して重視してきたキーワードだ。「中道」「人間主義」「人間の尊厳」は公明党創立者である池田大作・創価学会第三代会長の思想を体現しており、日本国憲法の思想を体現している。国家安全保障に偏る現在の高市自民党からは、ついぞ出てこないキーワードだ。
〈対立を煽り、分断を深める政治ではなく、対立点を見極め、合意形成を積み重ね、生活者ファーストの政策を着実に前へと進める中道政治の力が求められている〉
〈国民の利益と幸福に奉仕する国民政党として、国民が求める改革を主導する基軸となることを目指す〉という綱領の文言は、それ自体まっとうであり「大衆とともに」という公明党永遠の立党精神も反映している。
中道改革連合は、公明党と立憲民主党以外に門戸が閉ざされているわけではない。斉藤鉄夫共同代表は、自民党の議員であっても迎え入れると表明している。
かつての自民党には、左のリベラルから右の保守まで、幅広いウイングの政治家を包摂する度量があった。高市自民党は穏健保守とは性格を異にする。極右の政治家を重視し、高市首相は自分一人だけの判断で「右方向の霧の彼方」へ走り去っていってしまった。
高市自民党が中道左派や穏健保守派の層を取りこめないでいるのとは対照的に、中道改革連合には幅広い思想の持ち主を糾合できる求心力がある。さまざまな考え方の議員と支持者を包摂する政党のことを英語でキャッチ・オール・パーティー(catch-all party=包括政党)と呼ぶ。極右に偏らない包括政党が日本に誕生しつつある。