心でもてなす富山の豊かさ
柴田 富山の人たちの県民性って何かあると思いますか。
坂東 女性がとても働き者ですよね。特に私たちの世代の男性は家のことはほとんどしないけれど、職場では真面目に働いている。男女ともに真面目で努力家なのかもしれない。
柴田 男女ともに仕事に夢中になってるイメージはあります。思えば、私も家では寝転がってテレビを見たりする時間はほとんどないですね。いつも台所で何かやったりしています。テレビを見るときは、見たいものを見るという感じで、ダラダラはしない。
坂東 家にいるときのほうが忙しかったりしますよね。(笑)
柴田 分かります。やっぱり私たちも、もう東京が長いけれど、しっかり富山の女性なんですね。
坂東 持ち家率は全国でも上位なんですよね。普段の生活は慎ましいんだけど、大事なものはしっかりと買う。とても豊かな暮らしだと思います。
柴田 子どもを育てるなら絶対に富山がいいと思う。自然環境だけじゃなくて、地域の人々の交流がいまも盛んですもんね。朝に外へ出ると、ご近所の人が大根や白菜を玄関先に置いておいてくれたり、高齢者のゴミを代わりに出してくれたり、雪かきしてくれたり。
坂東 心が豊かですよね。都会だと、自分のことで精一杯になって周囲まで手が回らない。
柴田 富山を観光した人たちが「現地の人たちが優しくて温かくて、心でもてなしてくれたのがよかった」と言ってくださるのが嬉しいんです。
ニューヨーク・タイムズで取り上げられたので、これからは海外からの観光客も増えると思います。それ自体はいいことなんですが、一つ心配していることがあるんです。これまで通り、普通の富山の暮らしがなくなってしまわないかと。どうか、チェーン店ばかりの観光地にはなってほしくない。
坂東 一見のお客さまに喜んでもらうことも大切ですけど、やっぱり一番はリピーターを増やすことですよね。
柴田 観光地としてではなくて、街としてより豊かになってほしいですよね。そうすれば自然と、観光で来てくださる人々の心も豊かになると思うんです。
宝物は自分たちの内側にある
坂東 東京に出たばかりの若い頃は自由であることが嬉しかったんですけど、ある程度歳を重ねると、郷土って変わらない豊かさがあるって身に沁みて感じます。
柴田 本当にそう思います。私が最初に富山の豊かさに気づいたのは食でした。地元で食べるお寿司はイカが透き通っていてワサビの色が見えるんですが、東京でそんなイカには滅多に出合えない。あと、東京ではあんまり昆布を食べないんですよね。
坂東 食べ物みたいな暮らしの基礎になる部分のよさって若い頃にはなかなか気づかないんですよね。柴田さんは北海道・羅臼町の昆布大使をなさってるんですよね。
柴田 はい。大使になってから知ったんですが、羅臼町には富山からの入植者が多かったみたいなんです。北前船に乗って季節ごとに富山と羅臼を行き来していた人もいたと聞きました。
坂東 私の親戚は、十勝地方の中なか札内村にいたんです。確か、曾祖母の弟が移住したみたいで。秋になると小豆を送ってくれるんです。ちなみに私はさす(カジキマグロ)の昆布締めが身がしまって大好きなんです。
柴田 美味しいですよね。さすはもちろん、魚の昆布締めはぜひ観光客の皆さんにも食べてもらいたいです。あと、魚と言えばお酒も美味しい。いろんな銘柄がありますが、全部いい酒ですよ。
坂東 地元の人たちはよく「富山には何もない」っておっしゃいますが、そんなことはない。食にしても、人にしても、自然にしても、とても豊かでキラキラ輝いています。私は自分のルーツが富山で本当によかったと思っています。
柴田 きっと富山の人たちは、自分たちの豊かさが当たり前なんでしょうね。だから「何もない」って思っている。でも、県外の人たちからすれば、富山には豊かなものがたくさんある。だから自信を失うことはありません。宝物は自分たちの内側にしっかりとあるわけですから。